取り敢えず人がそのままでも食べられる簡単な食べ物…ハム等の肉類を中心に、フルーツ等の食べ物を沢山と水の入った入れ物を持てば、犬を驚かせぬ様にゆっくりと近寄った。
傍に座らせてくれたとはいえ、犬はとても警戒している様だったし、よく見るとその体にはいくつか傷もついている。
この森は純血至上主義の人間から虐待を受け逃げてくる魔法動物が時折現れ、その者に対して森は優しい。
まるで森が意思をもっているかの様に、この場に導いてくれる事があるのだ。
レンは体の傷を見てこの犬もきっとその類なのだろうと思った。
「何を食べるか判らないから、適当に持ってきたのだけれど…その前に手当てをさせてね?」
犬の目の前に食べ物を置き、怖がらせない様にゆっくりとその体に手を伸ばす。
そして淡い光を放てば犬の瞳は何処か優しそうな色に変わった。
傷を粗方癒し終える頃には、犬は大人しく食事をしてくれており、レンは脅かさぬ様、怖がらせぬ様、ゆっくりと立ち上がればソファへ腰掛けその姿を眺めた。
「貴方は何処から来たの?そんなに傷だらけで…随分大変な思いをしてきたのね。…ここなら誰も貴方を傷つけようとはしないから、安心してね」
レンは言葉が返ってくるわけでもないのに食事をしている犬をソファにうつ伏せに寝転がりながら眺め、そう優しく声をかけると、犬の耳だけがこちらを向き、レンはくすりと小さく笑った。