第36話
スネイプが指を鳴らせばリーマスを縛っていた縄目の端がスネイプの手元に飛び、そして一度杖を振ればレンの喉を覆っていた不快なものが取り除かれ、これで声が出るとレンは思った。
ハリーは飛び出してドアの前に立ちふさがれば、スネイプは憎たらしそうにハリーを睨む。
「退け、ポッター。我輩がここに来てお前の命を救っていなかったら…。」
「レンの言う通りだった。レンやルーピン先生が僕を殺す機会は、この1年に何百回もあったはずだ。僕は先生と2人っきりで何度も吸魂鬼防衛術の訓練を受けた…もし先生がブラックの手先だったら、そういう時に僕を殺してしまわなかったのは何故なんだ?」
「人狼がどんな考え方をするか、我輩に推し量れとでも言うのか。」
「恥を知れ!学生の時に揶揄われたからというだけで、話しも聞かないなんて!」
ハリーがそう叫べば、自分にそんな口の聞き方は許さないとスネイプはますます狂気じみて叫んだ。
「蛙の子は蛙だな、ポッター!我輩は今お前のその首を助けてやったのだ。ひれ伏して感謝するが良い!コイツに殺されれば自業自得だったろうに。お前の父親と同じ様な死に方をしただろうに…ブラックの事で親も子も自分が判断を誤ったとは認めない高慢さよ。」
「なら、私が何をしようと貴方は文句が言えない筈だわ。所詮親が親なら子は子…それが判っていたのにヴォルデモートの娘に警戒しなかった貴方が悪いのだから…。」
レンは冷たく感情のこもらぬ声でそう告げるとリーマスの杖先をスネイプに向け、その瞳からも感情というものが読み取れない。
それにスネイプばかりかシリウスも顔色が変わる。
「シリウスやリーマスと喧嘩するのはどうぞご自由に。…けれど喧嘩の範囲を超えてその人達を殺そうとしたり吸魂鬼のキスをさせると言うのならば私は手段を選ばない。例え退学になろうと、犯罪者になろうとも。護りたい者を護る為に私はいつだってこの穢れて安っぽい命を懸けるし、犯罪を犯す事だって厭わない。」
そう皮肉を込めて言えば、スネイプは真っ直ぐにレンを見つめていた。
「待て、レン。そんな事をしてはいけない!」
シリウスはレンを止めようとそう声をかけるが、レンは小さく首を横に振る。
「ごめんなさい、スネイプ先生」レンは切なそうな表情をし杖を振り上げ、不思議な事にスネイプは抵抗する素振りをひとつもみせなかった。