「悪いがピーター…私は、無実の者が12年も鼠に身をやつして過ごしたいと思ったのかは理解に苦しむよ。」
「あの人のスパイだったブラックが怖かったんだ!」
「私が、ヴォルデモートのスパイ?私がいつ、自分より強く力のある人達にヘコヘコした?だがしかし私はお前がスパイだったという事を見抜けなかった。迂闊だった…お前はいつも自分の面倒を見てくれる親分にくっ付いているのが好きだった。…それなのに私はお前を守人にと薦めてしまった。私はお前の様な弱虫の能無しを利用しようとは思わないだろうという完璧な計画だと思った…ヴォルデモートにポッター一家を売った時はさぞかしお前の惨めな生涯の最高の瞬間だっただろう。」
シリウスの言葉にピーターはなにやらブツブツと呟いていたが、レンと視線が合えば小さな悲鳴を漏らす。
ヴォルデモートの瞳が怖いのか…それとも自分自身と何か関わりがあるのか…。
「ルーピン先生。あの…聞いても良いですか?」
ハーマイオニーがおずおずと口を開けば、リーマスは丁寧にどうぞと答えてくれる。
それにハーマイオニーは、「どうしてこの人があの人の手先ならハリーを今まで傷付けなかったんですか?」と聞けばピーターは自分に味方が出来たのだと思い大いに喜んでいる様子だ。
「その理由を教えてやろう。コイツは自分の為に得になる事がなければ誰の為にも何もしなかった。半死半生と言われている奴の為に、アルバス・ダンブルドアと目の鼻の先で危険は犯せない。だが、ヴォルデモートが一番強いと確かめてからなら幾らでもそうしただろう。魔法省の人間の所へ潜り込んだのは、いつでもその情報が判るようにする為だ。」
「あの…ブラックさん…シリウス?」
ハーマイオニーは説明してくれたシリウスに声をかければ、シリウスは瞳を丸くして驚いた様子を見せる。
もう何年もそんなに丁寧に呼ばれた事はないと言うような様子だ。
「お聞きしてもよろしいでしょうか…どうやってアズカバンから脱獄したのでしょう?もし闇の魔術を使っていないのなら…。」
ピーターがその問いに同意しようとすれば、リーマスがひと睨みし黙らせる。
「どうやったのかは自分でも判らない。ただ私が正気を失わなかった理由は自分が無実だと知っていた事、そしてレンとその母、アクアに対しての償いと後悔の気持ち…これは幸福な気持ちでは無かったから、吸魂鬼はその思いを吸い取る事が出来なかった。そして…幼い頃のレンが一度だけアズカバンに来た事があった。」
「私が?」
レンはその言葉に覚えてないわ…と小さく漏らすと、シリウスは優しい笑みを向けた。