「先程ハーマイオニーが説明してくれたように、相手の怖いと思うものに変身する。だから、中の暗がりに座り込んでいるボガードは、まだなんの姿にもなっていない。箪笥の外に居るのは誰か知らないから、何を怖がるか判らないからね。ボガートが一人ぼっちの時にどんな姿をしているのかは、誰も知らない。しかし、私が外に出していると、たちまちそれが一番怖いと思っているモノに姿を変える筈です。」
ネビルが怖くてしどろもどろしているのを、見ないフリをしながらリーマスは更に言葉を続ける。
「という事は、始めっから私達の方が有利な立場に居る訳だ…ハリー、それが何故だか判るかな?」
ハリーは手を上げているハーマイオニーを横目で申し訳なさそうに見てから口を開く。
「えっと…僕達、人数が沢山居るので、どんな姿に変身すれば良いか…判らない…?」
「その通り。ボガート退治をする時は、誰かと一緒にするのが一番良い。向こうが混乱するからね。首の無い死体に変身すべきか、人肉を食らうナメクジになるべきか?…私はボガートがまさにその過ちを犯したのを一度見た事があるんだ。一度に2人を脅かそうとして、半身ナメクジに変身したんだ。お世辞にも恐ろしいとは言えなかった。」
リーマスがそう言えば何人かの生徒が想像をしたのだろう、クスクスと笑い声を上げ、リーマスはニッコリと笑った。
「さて、ボガートを退治するのに大切なのは…そう、笑いなんだ。その呪文もとても簡単だ。だけどね、精神力が必要だ。キミ達は、ボガートに”滑稽だ”と思える姿をとらせる必要がある」
リーマスは「それでは、杖なしで呪文の練習をしてみよう。リディクラス、ばかばかしい」とリーマスが言えば、生徒達全員、リーマスがしたようにその呪文を口にする。
「そう、とても上手だね。でも此処までは簡単なんだけどね、それだけでは十分じゃない。そこで、ネビル。君の登場だ」
箪笥が揺れるのに負けないくらいにネビルは震えながら、一歩また一歩とリーマスの方へと進み出た。