「あの…すみません…猫が…」
レンはその扉を開けながらそう声を掛けたが、中の人物も…そしてそれを見たレンも動きを止めた。
中に居た人物は鋭い目つきでレンを睨みつけ体勢を整え、膝で甘えていたオレンジ色の猫はその人物の側でレンをジッと見つめている。
「シリウス・ブラック…」
そう、其処に居たのは、今現在指名手配されているシリウス・ブラックだった。
彼はくしゃくしゃで伸び放題の髪の毛、痩せて骨と皮だけの男の人だった。
「何しに来た?」
その声はとてもピリピリとしていた。
「その猫を追って来たんです…友達の猫にとても似ていたので…まさか此処に貴方が居るなんて…。」
レンはそう素直に答えたが、シリウスの警戒は解かれる事はなかった。
それは当たり前の事で、もしかしたら今すぐに通報されてアズカバンに逆戻りになるかもしれない瀬戸際なのだ。簡単に警戒を解くはずがない。
レンが部屋の中へ入れば、シリウスはじわりじわりとゆっくりと扉の方へ行き、レンが外に出る事が無い様に其処を陣取ったが、それ以上言葉を発する事もなくレン自身もどうしたら良いか判らなかった。
「あの…私、貴方を吸魂鬼に渡すつもりはありません。」
レンがそう言葉にしたが、信じられないといった表情だ。
それを見ると、レンは鞄の中にポケットに入っていた杖を入れ、その鞄を自分とシリウスの間に投げ両手を上に挙げ、攻撃する意志が無い事を示す。
それには流石のシリウスも驚いた様で、それをジッと見ていたが、レンを視線から逸らす事はしない様にしながら鞄を自分の手元に持ってきて、その中から杖を取り出しレンに向ける。