「ハリーを殺しに来た訳ではないのでしょう?」
レンは確かめるようにシリウスにそう聞けば、シリウスは険しい表情でそれは有り得ないと声を上げた。
「もし…捕まりそうになったら、逃げる場所の候補として私の家を考えて下さいませんか?」
レンは、ダンブルドアやリーマス、ドビーに上げたあの水晶と同じ物をローブのポケットから取り出し、それを見せるようにしてシリウスに差し出せば、シリウスは黙ってそれを見つめていた。
「それを作ったのか?…その年で…?」
「はい。…去年のクリスマス頃、何者かによって叔父夫婦や友達の屋敷しもべが殺されてしまったんです。母はシリウスが捕まって間もなく亡くなっていたから…当主になれるのが私しか居なかったんです。…それで魔法省の要求を呑んで当主となりました。だからこれも作れるようになったんです。もしリーマスが心配だというなら、私、一生懸命説得します…だから…」
レンがそう言えば、シリウスは「有難う」と言うと、その水晶を受け取ってくれた。
水晶がシリウスの手の中に納まれば、それは溶けるように無くなっていき、手の甲にうっすらと印を浮かび上がらせ、そして消えていく。
その一連の流れをシリウスは懐かしそうな眼差しで見つめ、それが終わると杖を鞄の中に戻しその鞄をレンに手渡してくれた。
「有難う、シリウス。…私、城に戻っても貴方の事、誰にも言わないから。」
レンはそれを受け取り、出入り口の方へゆっくりと歩いて行くとシリウスがポツリと言葉を漏らし、レンはそれに歩くのを止め、振り返ると、シリウスは悲しそうな表情を浮かべてレンを見つめていた。
「シリウス?」
「アクアは…俺を恨んでいたか?」
「いいえ。ずっと…ずっと、貴方を信じ訴え続けていました。犯人はシリウスじゃないって…最期の時までずっと。」
レンがそう伝えれば、シリウスはレンに背を向けて、遠くを見つめてしまったが、その肩は僅かに震えていた。
レンはその後姿に笑みを零し
「実際に会ったのは今日が初めてだけれど、私も貴方の事も信じています。今までもこれからも。…また来ますね。」
そう優しく声をかけてその場を後にした。