馬車の扉には金色の杖が交差し、それぞれの杖から3個の星が飛んでいる紋章が描かれており、レンはこれがボーバトンの校章なのだろうと思った。
淡い水色のローブを着た少年が馬車から飛び降り、前屈みになって馬車の底をゴソゴソといじって踏み台を引っ張り出し、恭しく飛び退くと、馬車の中から、ピカピカで子供のソリ程もあろう大きなハイヒールが片方…続いて殆ど同時に現れた女性はとても大きな女性だった。
ハグリッドを始めてみた時は大きな人だと1度驚いた事があったが、この女性はそれよりも大きく見えたのだ。
女性は小麦色の滑らかな肌にキリッとした顔つき、大きな黒い潤んだ瞳、つんと尖った鼻。
髪は引っ張りつめて高い位置につやつやしたマゲを結っている。
頭から爪先まで黒繻子を纏い、何個もの見事なオパールが襟元と指で光を放っていた。
ダンブルドアが拍手をすると、それに釣られて生徒達が一斉に拍手をし始める。
生徒の中には、もっと見たくて背伸びをしたりしている生徒が沢山おり、女性は表情を和らげ優雅に微笑むと、ダンブルドアに近付き、煌く片手を差し出した。
ダンブルドアも背は高かったが、手に口付けをするのに殆ど体を曲げる必要がなかった。
「これはこれは、マダム・マクシーム。ようこそホグワーツへ」
「ダンブリー・ドール…おかわりーありませーんか?」
「お蔭様で上々じゃ」
「わたーしの生徒です。」
マダム・マクシームは巨大な片手を無造作に後ろに回してひらひらと振った。
いつの間にか、馬車から飛び出した17か18歳くらいの男女生徒がマダム・マクシームの背後に立っており、皆震えている様子だった。
彼らの身に付けているローブは全て薄物の絹のようで、マントを身に付けている生徒は1人も居ない。
何人かはスカーフを被ったりショールを巻いていたりしているのをレンは見て、無理もないと思った。
「カルカロフはまだきーませんか?」
「もう直ぐ来るじゃろう。」
ダンブルドアは、一緒に待つか、中で暖まるかと問うと、マダム・マクシームは中で暖まりたいと述べ、生徒達を連れて室内へ入って行った。
途中、自分達の乗ってきた馬の面倒をダンブルドアに頼み、ダンブルドアは今席を外しているハグリッドがそれに適任だと自信を持って言ったのだった。