ボーバトンの生徒達が室内に入ってから少しの間、ダームストラング一行をその場で待ち続けていたのだが、皆寒さから少し震えて立ち、生徒の多くは期待を込めて空を見つめていた。
「何か聞えないか?」
突然ロンがそう言い、レンは小さく首を傾げ、耳を澄ましてみる。
すると闇の中からこちらへ向かって、大きな…いい様もない不気味な音が伝わってきた。
まるで巨大掃除機が川底を浚う様な、くぐもったゴロゴロという音に吸い込む音…。
「湖だ!湖を見ろよ!」
リーが指差して叫んだ。
そこは芝生の1番上で、校庭を見下ろすような位置だったので、湖の黒く滑らかな水面がはっきり見えた。
その水面が突然乱れ始め、中心の深い所で何かがざわめいている様な、ボコボコと大きな泡が表面に湧き出し、波が岸の泥を洗った。
そして湖の真々中が渦巻いた。まるで湖底の巨大な栓が抜かれたかの様に…。
「あれ、帆柱だ。」
ハリーは、湖の渦の中心からゆっくりとせり上がってきた黒い竿のような物を見てそう教えてくれる。
それはゆっくりと、堂々と月明かりを受けて水面に浮上をし、乗り物の全体が姿を現した。
その姿は、まるで引き上げられた難破船のような…どこか海賊船とも見えそうなそんな雰囲気のする船だ。
丸い船窓からチラチラ見えるほの暗い霞んだ灯りが幽霊の目のように見え、レンは少しだけ苦笑を浮かべた。
船は岸に向かって滑り、浅瀬に碇を投げ入れれば、タラップを降ろすドスッという音がした。
それから直ぐに船から下りてきた人物達を見て、レンは一瞬、沢山の熊が降りてきたのかと思ってしまった。
そう見えたのは、近付いてきてから理由がはっきりと判った。
そう、彼らはそう思わせる程にモコモコで分厚い茶色の毛皮を全員が着ていたのだ。
だが、城まで全員を引き連れてきた男だけは服装が違った。髪と同じく滑らかで銀色の毛皮だった。