第3話
ある日の朝、レンは一度ウィーズリー家の出発時刻に間に合うよう、リーマスに夜中に起こされ眠そうな表情のまま支度と軽く朝食をすませると、それに合わせて届けてくれたホグワーツからの手紙をそのままリーマスに手渡した。
金庫の鍵は、随分と前からリーマスに預けっぱなしだ。
出来ることなら、あのトロッコに乗りたくないとレンが駄々をこねて預かってもらった記憶も新しい。
レンの金庫には、長生きしまくたとして、その一生をかけても1人では使いきれない程の金貨が山積みになっている。
元々お金のある一族だったが、親戚中の遺産が唯一の生き残りである彼女の元に渡ったのだ。
家にいる間は身の回りの物は全てそこから支払いをしてもらうようにしているが…リーマスは自分自身の事の為には使っていない様だった。
レンはいつもお財布代わりに使っている巾着の中身を、少し小さめの巾着に入れ替え、それもリーマスに手渡す。
なにが何でもトロッコに乗らないつもりなんだねと、リーマスは笑った。
「あの乱暴でスピード狂のトロッコから身を放りだされたら身の安全が保障されないわ。自分で運転してるならまだしも、他人が運転するもので安全が確保できないものは苦手なの。」
「あれは十分安全だと思うけどね。アクアはもっと乗っていたいと言う程トロッコ好きだったよ。」
「トロッコに関しては母と仲良く出来そうにはないわね。」
ヒールのあるブーツの靴紐を確認し、ソックスが下がったのを上げてから立ち上がると、その場でゆっくりと一回転し、リーマスにおかしな部分はないか確認してもらう。
リーマスのOKがもらえれば小さなバックに母の形見のマントを押し込み、その他に忘れ物がないかどうか確認し、杖を忍ばせる。
「リーマス、行ってきます。」
そう言うと、レンはリーマスに軽く抱き付き、背伸びをして頬に口付けをするとリーマスが少し驚いたように瞳を丸くした。
「あれ?シリウスが出かける前にはこうするんだって、教えてくれたんだけど…間違ってたかしら?」
「いや、間違ってないよ。」
リーマスはクスリと笑い、同じようにレンの頬に口付けをすると、レンはニッコリと微笑んだ。

こんな夜中に人の家に訪ねて良いのだろうか…。
レンはそう思いながらもパチンと大きな音を立て、隠れ穴の扉の前に姿現しをする。
扉をノックしようとすると中から「あの子達は姿現しでいくんですよ。だからあの子達はもう少しお寝坊出来るの」というモリーの声が聞こえ、自分ももう少し寝てればよかった…と密かに思ってしまった自分に苦笑する。
兄達がベッドにいる事を不機嫌そうにいうフレッドの声が聞こえ、レンはノックするタイミングを逃しどうしようかと思った時だった。