「それくらいの怪我で済んで良かったわね。直ぐ治るわ。」
「食べられちゃわないで良かったよ。」
セドリックはハハッと笑って見せれば、レンがその言葉に真っ青になった所為で冗談だと慌てて言う。
「他にはどんなドラゴンがいるの?」
会場の方から歓声やざわめきが何度か聞こえながら、セドリックに聞けば、セドリックもそちらが気になるのだろう…会場の方に視線を向けながらどの選手がどのドラゴンを出し抜くか教えてくれた。
「ウェールズ・グリーン種がフラー、クラムが中国火の玉種、そしてハリーが…ハンガリー・ホーンテールだ。」
ハンガリー・ホーンテール…黒く眼光が鋭いドラゴンで、顔と性格同様、その尻尾もかなり危険で、ブロンズ色の長い棘が尻尾全体に数cmおきに飛び出しており、それだけでもかなりの凶器になる、とても凶暴なドラゴンだ。
レンはセドリックの言葉に一気に血の気が引いていくのを感じた。軽く眩暈を感じる。
「ハリーなら大丈夫だ。きっと上手くやる。」
レンを元気付けようとセドリックはそう優しく声をかけてくれ、レンは曖昧に微笑んでみせる。
ハリーが上手く出し抜けないと思っている訳じゃない。
ただ、少なくとも怪我は免れないのではないだろうかと…どの選手よりも若いハリーが、どの選手よりも凶暴なドラゴンを相手にしなければいけない不運を、今ハリーはどんな気持ちで過ごし待っているのだろうかと思うとやるせない気持ちでいっぱいだった。
「レンは、ハリーが好きなんだな。」
「…名付け親が同じだし、大切に思っているわ…友達で兄弟みたいなものだもの。」
当たり前でしょう?と言ってみせれば、セドリックは笑い、レンは小さく首を傾げる。
「友達としての好き…という意味で言ったんじゃないよ?」
「恋愛感情なんて、私には1番よく解らないものだわ。」
レンがそう眉を顰めて言うと、セドリックは可笑しそうに笑い声を上げ「それじゃ、今度僕とデートでもしてみるかい?」という冗談がレンの顔を真っ赤に染め上げた。
「私が本気にしたらどうするの?困るのは貴方でしょう。」
「困らないよ。」
「…私、デートなんてした事ないもの。どうしたら良いか判らないわ。」
そう言い慌てるレンにセドリックは「経験しなければいつまでも判らないままだよ?」と言い、黙ってしまったレンを笑った。