この監禁生活で、ひとつの収穫があったとすれば、同じ箱の住民、ムーディと少しは仲良くなれた事だろう。
無言呪文を練習中、レンは自分で放てるとは思っていなかった魔法がが見事に発動。
そして壁に跳ね返り「わっ」と驚き、後ろにずり下がるようにして転んで避ければ、見下ろすムーディと変な体勢のまま視線が合ってしまった。
その時初めてムーディがフッと笑ってくれたのだ。
レンはそれが嬉しくて「へへっ」と何処か照れくさそうに笑ってしまっていた。
それからムーディは彼の気が向いた時、色々と話しては教えてくれた。
レンはその全てを吸収しようと、真剣に聞いていれば、ムーディもそれに好印象だったのだろう、この暗闇でも希望が持てるくらいには気が紛れる、と言ってくれていた。
「クレスメントは様々な力を持っている者が居ると聞く…お前はどうなんだ?」
「例えば人避け、盗聴、盗視防止などの様々な効果のある結界を張ったり、傷を癒したりは普通に出来ます。後は人を探したりとか…そんなに強くない魔法なら打ち消したり…」
ならば今すぐに結界を張れ。そう言ってる様な気がし、レンは簡易的な物かもしれないが出来るだけの結界を張った。
「よし、それで良い。話が終われば解け。…杖なしでも魔力の感知は出来るか?」
「はい。杖を携帯していない状態では試した事が無いので判りませんが、本来血で使う物…そう教わっているので恐らくは…」
「ならば、お前はこれからは外の魔力感知に全神経を注げ。無言魔法もある程度は出来ている。まずは此処から脱出する事を考えるのだ。」
「でも、この箱は随分と深い…姿現しもホグワーツの中では出来ませんし…」
「そのピアスはダンブルドアが贈った物だろう?大丈夫だ。それにホグワーツは完全に姿くらましを出来ないという訳ではない。ほんの僅かな距離ならば、それは可能だ。目と鼻の先ぐらいだが。」
レンは何を根拠に…と思ったが今はムーディを信じるしかないと思えば小さく頷いた。
それからレンは外に魔力を感じる時は無言魔法の練習をし、頻繁に魔力を感知し続けた。
そしてある日、チャンスは来た。近くに魔力らしいものを感じない。
「ムーディ先生、今です。」
「行け!ダンブルドアに知らせるのだ。」
「貴方を置いては…」