第5話
「大丈夫かい?」
「公衆の面前をずっと肩の上で通ってきたのよ…もう、口から心臓が出るかと思ったわ」
ハリーはレンを皆から少し離れた所へ連れて行けば、「シリウスから連絡あった?」と声を落として聞き、レンはニッコリと微笑む。
「えぇ、1度か2度お手紙を貰ったわ。南の方で元気にしている様ね。ハリーの事気にかけていたわ。」
そう言えばハリーはなんだか嬉しそうだった。
「ハリーもお手紙貰った?」
「うん。窓から入るのがやっとなくらいの大きな鳥が運んできたよ。」
「そうなのよ。あの鳥が近付いてきた時は驚いたわ。」
うんうん。とハリーは終始笑顔で話をしてくれる。
「あ、そうだ…あの…僕、レンに相談があるんだ。」
ハリーは更に声のトーンを落とし、周りの誰にも聞こえない様に気を付けながらそう言えば、レンは首を傾げる。
「あの…この前傷痕が痛んだんだ。大した事はないと思うんだけど気になって。」
「その時ハリーは何をしていたの?」
「夢を見てた。」
その内容が何なのかは言わなかったが、それにレンが少し考えていれば「怖いとかそう言うんじゃないんだ。」と慌てて付け加える。
きっと弱気になっていると思われたくないのかもしれない。
「火星が明るいと争い事とか不吉な事が起きるだろうって言われているの。」
ハリーはいったい何の話だ?というような表情をしている。
「このところね、その火星が明るいのよ。傷が痛むのはただアイツが側にいるからとかだけじゃないと思うし、何か起きるかもしれないって知らせているのかも…詳しくは判らないけれど、見ていた夢の内容も何か警告の手掛かりになるかもしれない…少し気を付けておいた方が良いかもしれないわ。」
何か気付いた事があれば直ぐに教えるわねとレンが言えば、ハリーはなんだか満足そうだった。
無駄に心配されたり笑われたりせず、真剣に考えてくれたのが嬉しかったのだろう。
それから少しすれば皆は食事を始め、少食のレンは直ぐに食べ終わり周りの様子を眺めていれば、魔法省の役人が気ぜわしく行き交った。
クレスメント当主としてレンを知っている者は、レンの顔を見れば軽く頭を下げていく。
卵とソーセージの皿が半分以上からになった時、アーサーは急に立ち上がって、ニコニコと手を振った。