少しでも変な行動を取ろうものなら直ぐに動ける様に…杖でも構え、クラウチの代わりに彼が来たのだろう。
レンは苦笑交じりにそれを見れば、その場にあった岩に腰をかけ、そのビー玉を月の光にあてて透かして見る。
「綺麗…。…ねぇ、貴方は私を何処へ連れて行くの?」
きっとこれはポートキーだろうと思い、レンは小さく呟いて苦笑を浮かべる。
「ワン!」
その鳴き声にレンは驚き其方を見れば、此方に駆けてくる真っ黒な犬が1頭。
「パッドフット…?」
驚き止まるレンをよそに、魔力を感じ「ダメ!」とレンが言えば、犬のその聴力で聞き取る事ができたのだろう、しようとしていた事をやめてはクンクンと匂いを嗅ぐ仕草をしてから、まるでやっと飼い主を見つけた迷い犬の様にレンの元へと駆け寄って来た。
その犬は駆け寄ってはレンの側に座り、何度も何度もその足に体を擦り付ける。
レンはその犬をひと撫でし、軽く犬を抱きしめ自分の口を死角にすれば、尚且つあまり口を動かさない様にしながら犬をなで続け言葉を紡ぐ。
「約束を破ってごめんなさい。貴方に無茶をさせてしまったわ。けど私は大丈夫。必ず生きて帰るから、心配しないで。…気を付けて…ゴブレットに名前を入れた人が見張ってる。」
レンはそう言うと犬から離れにっこりと微笑んでみせれば、パッドフットは何も言わずにただレンをじっと見つめている。
酷く心配していたのだろう…
言いたい事が叱りたい事が山ほどあるのだろう…
レンはそう思うと心が締め付けられた。
「そろそろ時間みたいね。」
レンがそう言えば、パッドフットは唸りレンの服を噛む。
行くなと、今此処で逃げれば、何とかなるとそう言いたいのかもしれない。
「ゴメンね、パッドフット。私は行かなければ駄目なの。此処で拒んだら大切な者達が傷つけられてしまうから…守りたい命が守れない。私はもう誰1人としてもう失いたくない…その為なら私なんだってやれるわ。大丈夫、必ず帰るから…だから…暫くの間、さようなら。」
手の中で震えるビー球を感じ取ると、そこから姿を消すのと同時に噛まれていた部分を切り落とした。
シリウスを危険な場所に連れて行く訳にはいかない。
もしあそこで逃げていたら…本物のムーディが始末されてしまうかもしれない。
自分に向けた呪文から庇ってシリウスが怪我をしたり、最悪死なせてしまうかもしれない…。
そんな想定しうる最悪の事態を全て避ける為には、素直に従うしかなかったのだ。