第44話
大鍋はグツグツと煮え立ち、四方八方にダイヤモンドのような閃光を放っている。
蘇ってしまう…ヴォルデモートが…
そう思うとレンの心は酷い恐怖心で満たされる。
まるで怒り狂った伯父を目の前にしているような…
去年の試験でみたボガートが化けた母親が目の前に居るような…
なんとも言い表せない恐怖心が心を満たしていく。
突然大鍋から出ていた火花が消えると、濛々たる白い蒸気がうねりを上げながら立ち昇り濃い蒸気がレンの目の前の全てのものを隠し、そして…その蒸気がだんだんに薄れていくと同時に1人の細い男が立っているのがレンにははっきりと見えた。
「ローブを着せろ。」
大鍋の中から立ち上がった骸骨のように痩せ細った背の高い男がそう言うと、ワームテールは啜り泣き呻き手首の無くなった腕を庇いながらも、慌てて地面に置いてあった黒いローブを拾い、片手でそれを男に着せる。
痩せた男はハリーをじっと見ながら大鍋を跨いだ。
その男の骸骨よりも白い顔、怒りに満ちた時の自分と同じ真っ赤で不気味な細長い目、蛇のように平らな鼻、切れ込みを入れたような鼻の穴…そんな顔をした男…ヴォルデモートからレンも視線を逸らす事が出来なかった。
ヴォルデモートはハリーから視線を逸らすと、その手で自分を触り体を調べる。
まるで愛おしむ様に撫で上げ、月に自分の手を透かすかの様に両手を上げると、指を折り曲げるその彼の顔はうっとりと勝ち誇っていた。
ポケットに手を突っ込み自分の杖を取り出せば、それを優しく撫でてから一振りし、ワームテールを宙に浮かせてハリーの足元に叩きつけ、ワームテールがくしゃくしゃになって泣き喚きながら転がる様を見て無慈悲な高笑いを上げる。
「ご主人様…貴方はお約束になった…確かにお約束なさいました。」
「腕を伸ばせ。」
ワームテールの言葉にヴォルデモートは物憂げに言う。
こんな彼でもワームテールは信じているのだろう、お礼を言いながら血の滴る腕を突き出せば、ヴォルデモートはまたしても笑った。
「ワームテールよ、別な方の腕だ。」
「ご主人様。どうか…それだけは…」
ヴォルデモートは屈み込んでワームテールの左手を引っ張り、その袖をグイッと肘の上まで捲り上げれば、その腕には生々しい赤い死喰い人のマークが掘り込まれていた。
ヴォルデモートはそれを丁寧に調べると長く青白い人差し指をワームテールの印に押し当てる。