「止めて…お願いだから、もう止めて…っ」
ハリーがあんなに痛めつけられている姿をこれ以上見たくない…そう思っては無意識にそう吐き出してしまったが、その声はハリーの悲鳴にかき消されるほど小さな声だった。
このままでは駄目だ…もう泣き喚いたりするものか…あの時の様にただ泣き喚くだけで何も出来ないのはもうごめんだ…ハリーを守らなければ…。
レンはそう強く思うと、ルシウスに気付かれぬ様、杖なしで呼び寄せ呪文を唱えれば、それは弱々しくレンの手に収まり、レンはこっそりとそれをスカートに挟んで隠す。
「ほんの一休みだ…ハリー。痛かっただろう?もう二度として欲しくないだろう?」
ハリーは何も言わなかった。
「もう一度して欲しいかどうか聞いているのだが?…答えるのだ!インペリオ!」
ヴォルデモートはハリーに服従の呪文をかければ、ハリーの瞳には意思が消えた様に、何処かを見つめていたのもつかの間、強い意志をその瞳に宿し「僕は言わないぞ!」と大きな声が響き渡る。
ハリーは戦っているのだ…恐怖と…ヴォルデモートと。
レンは自由になっている片手を強く握り締めハリーを見守る。
「言わないだと?ハリー、従順さは徳だと死ぬ前に教える必要があるな。」
呪いをかけようと杖を振るえば、ハリーは横にとびヴォルデモートの父親の墓石の裏に隠れ、ハリーを捉え損ねた呪文が墓石をバリッと割る音が聞こえた。
「ハリー隠れんぼじゃないぞ…。俺様から隠れられるものか。もう決闘は飽きたのか?…さぁ、出てきて遊ぼうではないか。あっという間だ…」
そう近付いていくヴォルデモートにレンはポケットから割れた髪留めを取り出すと、一言「ルシウス、ごめんなさい」と言い、彼の手を刺す。
痛みにその手を放した隙に、レンはハリーとヴォルデモートの間に立ち盾となり、血のついた髪留めをポケットにしまうのと同時にセドリックの杖を構えた。
…貴方を守る事が出来なかった私が、こんな事を願うのは許されない事かもしれないけれど…お願い、ハリーを助けたいの。力を貸して…
心の中で強く祈る様に何度も呟きながら、その瞳は強く真っ直ぐにヴォルデモートを捉える。