痛みが止めば、レンは息絶え絶えになりながらも、その瞳から強い意志を消す事はなく真っ直ぐにヴォルデモートを睨む。
「私の親はヴォルデモートといういかれた男じゃないわ!空っぽの何もない私でも愛してくれる人達よ!私は貴方なんかに従わない!私は貴方みたいにならない!」
そう強く言って除ければ、ヴォルデモートはその瞳に少し怒りの色を見せ「お前が大事なものを失った時こそ、お前の本性が解き放たれる時。楽しみにそれを待っていよう」と嘲笑うように言い、杖を振った。
腕に焼ける様な痛みが走るのと共に、その瞳は暗闇に包まれていく。
「貴方が…私の父だっていうなら…どうして一度も抱き締めてくれないの?ずっと独りにして悪かったって…。クィレル先生に寄生してた貴方に会った時もそう、今回もそう…ううん、ハリーの家に行った時からそうよ!ちゃんと抱き締めてなんかくれなかった。まるで物の様に抱き抱えただけ…そんな人を親だと思えとか無理な話よ…。」
「…ルシウス、暫くこの娘の様子を見ておけ。」
「畏まりました、我が君。」
ヴォルデモートはレンの言葉に立ち止まって聞いた様な気配がしたが、それに何も言う事はなくルシウスにそう命令をすると、ルシウスは深々と頭を下げて見送る。
その後ルシウスは、呼吸を荒く横たわるレンの側にそっと膝をついた。
「姫君…ルシウスは残念に思いますぞ。恐れ多くも我が子の様に思ってきた姫君がこのような…」
ルシウスは側にヴォルデモートがいないのを確認してから呟く様にそう言葉を漏らせば、レンは自嘲的に笑った。
「貴方が愛してくれた私は…あの人の子供だから…利用価値があるから…でしょう?…私を私として愛してくれた人なんて、此処にはいないわ…ただのレンなんて何もない空っぽな存在だもの…私が死んだって…きっと誰も、心の底から泣いてくれたりしない…。」
「姫君…」
なんて声をかけて良いか判らないルシウスの声色にレンは口元だけで笑むと、初めて優しく愛しむ様に髪を撫でてくれたルシウスの温もりを感じ、レンは驚いたように瞳を丸くする。
「私はずっと…そう、そんな温もりを求めてたわ。…愛して欲しかった。親の愛情に飢えてたわ。いつしか、私に愛なんて贅沢なものだって…そう思う様になった。ヴォルデモートが…父が…多くの人から愛や大切な人を奪っているのだから…その報いを私が受けているんだって…。ルシウス…私ね?ドラコが羨ましかった。」
レンは思わず涙声になりながら呟き零すと、髪を撫でていたルシウスの手が優しく頬を撫で、そして涙を拭う様に指が動く。
この人からこんなに愛情や温もりを感じる日がくるなんて思いもしなかった…そんな事をふと思いながらそっと意識を手放した。