自分を落ち着かせようとシリウスは、校長の椅子に座れば半開きの引き出しがあった。
ダンブルドアがこのような事をやる筈がない…見せようと意図的にした事だろう。
そこを開けば、幼子が描いた絵があった。
中心に女の子のような者が1人、隣にやけに目玉の大きい…屋敷しもべであろう者が1人、そして白髪の大きな男と、黒髪のもじゃもじゃ頭の大きな男が1人…そして、黒い犬が1匹。
そしてそこには汚い字でこう書いてあった。
『じーじへ。昨日のお礼にじーじと、ハグリットとシャルとレンと夢に出てくるワンちゃんの絵を絵を描きました。シャルがそうしたら喜んでくれるって教えてくれたの。ワンちゃんは夢でよく背中に乗せてお散歩に連れて行ってくれるのよ。いつか本当にあんな大きなワンちゃんに会えると思う?』
覚えたてなのか所々字を間違えている部分があるが、これは間違いなく幼い頃のレンが書いた物なのだろう…。
自分がアズカバンに送られる前、レンをあやす時に何度か犬になり、その背に乗せて遊んでやった事があった。
再会した時はシリウスの事を覚えてはいなかったが、あの頃の記憶が確かにレンの中にはあったのだ…。
その記憶が無意識にあそこまで頑なにシリウスを信じさせる行動に走らせたのかもしれない…。
そう思えばシリウスは鼻の奥がツーンとし、熱いものがこみ上げてくる。
此処でこうして待つ事しか出来ない自分が父親だとは…と、強い無力感に襲われる。
だが、今は此処で待ち続けるしかないのだ…。
「無事で…生きて帰ってきてくれ…」
シリウスは外からの歓声でかき消されそうなほど小さく震える声でそう言えば、それをそっと引き出しの中に戻した。
一体どれだけの時間を其処で過ごしていたかは判らない。
シリウスにはもう何日も此処にいるのではないかと思えるくらい長く感じた。
それも外のガーゴイル像が動く音にシリウスははっとし、立ち上がれば扉を真直ぐに見つめる。