あの時のレンはシリウスが声をかけると、まるで父親の愛情を求める様にシリウスに小さな両手を伸ばして声を上げて泣き始めた。
子供らしくない子供だった故に、あんなに号泣したのは初めての事で、シリウスが抱きしめれば「何処にも行かないで。」そう言っているかの様にシリウスの服をキツく握りしめ、眠るまで泣き付けていたのだ。
その時の姿と、今の姿が重なって見えてしまえば、もうシリウスは何も言えなかった。
「よく生きて帰って来てくれた…お帰り、レン。もうこんな事してくれるな。判ったね?」
レンはその言葉に泣きながらも大きく頷いてくれた。
シリウスは落ち着かせる様に、その背を一定のリズムで叩く様に撫で続ければ、ゆっくりとレンは落ち着き始め、そして赤ん坊の時の様に、泣き疲れて眠り始め、シリウスはその身を抱き上げてやれば、ソファに座り横抱きにしたまま自分の膝の上に座らせ、その頭を優しく撫でてやった。
「レンが託してくれた記憶をダンブルドアが見たそうなんだ。…話を聞いたが酷い有様だった様だよ。塵の様に放っとかれ、目が覚めたら従えと傷付けられ、そして拒み、痛みに気を失う…それの繰り返しだった様だ。それでもその瞳からは光を消さずにい続けて、それが不快だったヴォルデモートが光を奪ったらしい。」
「そりゃそうだろうな。彼奴には愛情の欠片もない。誰であろうと、反抗するのなら迷わず傷付けるだろうさ。」
とても辛かったであろうレンを愛しそうに撫で続ければ、リーマスはそれを見遣りながら言葉を続ける。
「何も見えない中帰ってきて、自分が一番辛いだろうに、血を吐きながらも安心させようと笑い、一切泣いたりはしなかったらしい。…ヴォルデモートの側でも最後までお前は私の父親ではない、父親は血は繋がらないが愛してくれているあの人達だけだって、お前には従わないって言い続けてたって言っていたよ。」
「本当、コイツは…。」
シリウスの事を幼い頃の様にパパとは呼ばず、お父さんとも呼ばないレンを、まだ認めてもらえてはいないのだなと寂しく思う時もあったが、それは違ったのだと思い知らされる。