するとクラムはギリギリの所でかろうじてグイッと箒を引き上げ、クルクルと螺旋を描きながら飛び去ったが、リンチはドスッという鈍い音をスタジアム中に響かせて地面に衝突した。
「フェイントだったんだ。クラムはこうさせて、この間にゆっくりスニッチを探すつもりだ。」
ジョージはそう言うと、万眼鏡をレンに渡す。
見てみるようにと促され、それで覗けば、ジョージは万眼鏡の再生と一場面毎のボタンを押した。
クラムとリンチがダイブするところをスローモーションが流れている。
すると紫に輝く文字が「ウロンスキー・フェイント…シーカーを引っ掛ける危険技」とレンズを横断していく。
間一髪でダイブから上昇に転ずる時、全神経を集中させているクラムの様子が良く判った。
「クラムって自分の体の一部みたいに箒を操るのね。」
「凄さが判ってもらえて嬉しいよ。」
ジョージはニッコリと笑った。
「あんな風に箒に乗れたら気持ちが良いでしょうね。」
リンチの治療の為タイムになっている様子を万眼鏡を置いて見ていれば、ジョージは頷き色々と話して聞かせてくれる。
それから試合が再開され、15分後には130対10とアイルランドがリードして試合は次第に泥仕合になっていく。
ブルガリア側の反則に審判がホイッスルを鳴らせば、レプラコーンが素早く「ハッ!ハッ!ハッ!」と空中に文字を描き、それを見たヴィーラは怒りに髪を打ち振り、再び踊り始める。
男性群は耳栓をしたが、レンはジョージの腕を引っ張った。
「大丈夫、審判を見て。」
レンは少し笑ってそう言えば、審判は踊るヴィーラの真ん中に降り、腕の筋肉を見せたり、夢中で口髭を撫で付けていたりしているのだ。
ジョージもこれは可笑しかった様で声をあげて笑った。
「さーて、これは放ってはおけません。誰か審判を引っ叩いてくれ!」
バグマンも面白そうにそう言えば、ピッチの向こうから魔法いの1人が駆けつけ、自分では指でしっかり耳栓をしながら審判の脛を思いっきり蹴り上げた。
審判はハッと我に返って、ヴィーラを怒鳴りあげていたが、両チームのマスコットが騒動を起すとは誰も思ってはいなかっただろう…。