クラムはとても勇敢だった。
チームがこれ以上泥仕合を行うところを見たくなかったのかもしれない。
自分のその手で終らせたかったのだろう。
「まぁ、ヴぁれヴぁれは勇敢に戦った」
「えぇとても。特にクラムは素晴らしい選手のようですわね。」
レンはそう返事を返せば、ブルガリアの大臣は嬉しそうに笑みを浮かべてくれる。
「ちゃんと話せるんじゃないですか!それなのに一日中私にパントマイムをやらせて!」
「いやぁ、ヴぉんとに面白かったです。」
ブルガリア大臣は、怒ったファッジに肩を竦めてそう言った。
「勇猛果敢な敗者に絶対なる拍手を…ブルガリア!」
何千何万という拍手が彼らを賞賛する拍手を包み込み、彼らはボックス席の座席の間に1列に並び、バグマンが選手の名前を呼び上げると1人ずつ、ブルガリア大臣と握手をし、次にファッジと握手をした。
列の最後尾はクラムで、まさにボロボロだった。
顔は血塗れで、両目の周りに見事な黒いあざが広がりつつあったが、しっかりとスニッチだけは今でも握っている。
そんなクラムがファッジと握手をし終えると、なんとレンに視線を向けて握手を求めてきたのだ。
レンはそれに慌てて立ち上がると握手を交わす。
「結果は残念でしたが勇敢で、とても、素晴らしかったです。」
「有難う。」
そういうクラムに、レンは傷を癒してやりたかったが、後がつっかえているのだろう、慌てて自分のハンカチを握らせればクラムは驚いた様に目を丸くするが、レンがにっこりと微笑めば小さく頭を下げて去って行く。
次に同じ様にアイルランドの選手達が現れ大臣達と握手を交わすと優勝杯を受け取り、それを祝う声援が包み込み彼らは嬉しそうに笑顔を浮かべていた。
「クワイエタス」とバグマンは杖を、自分の喉に向けて唱えると「この試合はこれから何年も語り草だろうな」と嗄れた声で言った。
「実に予想外の展開だった…実に…いやもっと長い試合にならなかったのは残念だ…」
そう言うバグマンにフレッドとジョージが自分たちの座席の背を跨いでバグマンの前に立っていた。
笑顔で手を突き出して…。