「えっと…パパが1つ話してくれたんですけど…たしか”服従の呪文"とかなんとか?」
「あぁその通りだ。」
自身無さげに言うロンの回答を褒めるように言った。
「お前の父親なら確かにソイツを知っている筈だ。一時期魔法省を手こずらせた事がある”服従の呪文”はな。」
ムーディは左右不揃いの脚でグイッと立ち上がり、机の引き出しを開け、ガラスの瓶を取り出した。
その中には黒い大蜘蛛が3匹中でガサゴソ這い回っていた…。
レンはそれを見て嫌な予感がする…。
確か魔法省が禁じている許されざる呪文は…全部で3つだ。
そして蜘蛛の数は…3匹…
見せるつもりなのだ…あの魔法を…今此処で…。
「インペリオ!服従せよ!」
ムーディーは蜘蛛を1匹掴み出し、手の平に乗せて皆に見える様にすればそう唱える。
蜘蛛は細い絹糸の様な糸を垂らしながら、ムーディの手の平から飛び降り、空中ブランコの様に前に後ろに揺れ始めた。
脚をぴんと伸ばし後ろへ宙返り…糸を切って机の上に着地したかと思えば、円を描きながらクルリクルリと横とんぼ返りを始め、ムーディが杖をグイッとあげると蜘蛛は2本の後ろ足で立ち上げてタップダンスをし始める…
教室中から笑いが漏れた…
だが、レンは笑う事が出来ない。
やりたくない事をやらされて…死ねと言われれば意思は関係なく死を選ぶ…例え世界最大級の幸福が明日に待っていても…。
「ミス・クレスメントは判っている様だ…。」
ムーディの低い声が教室中に響き渡り、「ワシがお前達に同じ事をすれば今の様に喜び笑えるのか?」その言葉に笑い声が一瞬で消えた。
「完全な支配だ…ワシはコイツを思いのままに出来る。空から飛び降りさせる事も、水に溺れさす事も…誰かの喉に飛び込ませる事も…何年も前になるが、多くの魔法使い達がこの服従の呪文に支配された。」
ムーディの言ってる事はヴォルデモートの全盛時代の事だと直ぐに判る。