「誰が無理矢理に動かされているのか、誰が自らの意志で動いているのか、それを見分けるのが魔法省にとって一仕事だった…だが、服従の呪文と戦う事は出来る。これからそのやり方を教えていこう。しかしコレには個人のもつ真の力が必要で誰にも出来る訳ではない。出来れば呪文をかけられぬようにする方が良い。」
油断大敵!!と大きな声に皆飛び上がった。
ムーディは蜘蛛を瓶の中に戻せば話を続ける。
「他の呪文を知っている者はいるか?」
ハーマイオニーの手が再び高く上がった。
…そしてネビルの手も…。
コレには皆が驚いた様だ。
ネビルがいつも自分から進んで答えるのは、ネビルにとって他の科目よりダントツに得意な薬草学の授業だけだったからだ。
「何かね?」
ムーディは魔法の目をぐるりと回してネビルを見据える。
「1つだけ…”磔の呪文”」
ネビルは小さい声ではあったが、はっきりと聞こえる声で答えた。
「お前はロングボトムという名だな?」
今度は両方の目でじっとネビルを見据えながら言うムーディにネビルは頷いてみせる。
だが、ムーディはそれ以上何も追及しようとしなかった…。
「磔の呪文…それがどんなものか解るように少し大きくする必要がある。」
ムーディは杖を蜘蛛に向け「エンゴージオ!肥大せよ!」そう唱えると、蜘蛛が膨れ上がり、タランチュラよりも大きくなる。
レンは自分を抱き締めるようにぎゅっと自分の腕を握りそれに力を込める。
「クルーシオ!苦しめ!」
忽ち蜘蛛は脚を胴体に引き寄せるように内側に折り曲げてひっくり返り、七転八倒しワナワナと痙攣し始めた。
何の音も聞こえなかったが、蜘蛛は悲痛の叫びを上げているだろう…。
この痛みは身を持って体験済みだった…そう…幼少時に…伯父からのお仕置きとして。
あの時はどれだけ泣き叫んだか判らなかった。
全てが無駄に思える様な…この世界には闇しかないと全てを諦めて楽になってしまいたい、そう思わされる様な痛みだった。