だが、ムーディは机の上で自由にされ必死で逃げる蜘蛛に向かい「アバダ ケダブラ」と唱えた。
目も眩む様な緑の閃光…
まるで目に見えないものが宙に舞い上がっているようなグォーッという音がしたかと思うと、蜘蛛が仰向けにひっくり返った。
何の傷も無い…だが、確実に死んでいる…。
『ハリーを…この子を…』
幼き脳裏に刻み込まれた記憶…我が子を守ろうと懇願する女性の声…
その女性が今の自分の真隣で聞え、レンは声がした方を見る。
そこにはその女性はいなく、自分の所に滑ってきた蜘蛛の死骸を避けようと椅子から落ちそうになっているロンがいた。
いつまでも記憶に捕らわれていたら、ヴォルデモートと…闇の陣営達と戦うのは難しい…
レンはそう思い、考えが昔の記憶に捕らわれるのを、無理矢理ムーディの話す声に集中する事で切り替える。
「気分の良いものではない…しかも反対呪文は存在しない。防ぎようが無い…これを受けて生き残ったものはただ1人…その者はワシの目の前に座っておる。」
ムーディは両目でハリーを見据える。
ハリーも死の呪文を見て両親の死を思い出し感じているのだろう…
ハリーの目が何もか書かれていない黒板を見つめている。
「そしてこの呪いの裏には強力な魔力が必要だ…お前達がこぞって杖を取り出しワシに向けてこの呪文を唱えた所でワシに鼻血さえ出せる事が出来るものか。しかしそんな事はどうでもいい。ワシはお前たちにそのやり方を教えに来ている訳ではない。」
ムーディの両目が今度はレンを捉え、見据える。
「さて、反対呪文がないのなら、何故お前達に見せたりするのか?それはお前達が知っておかなければならないからだ。最悪の事態がどう言うものか、お前達は味わっておかねばならない。精々そんなものと向き合うような目に合わぬ様にするんだな。」
レンがしっかりとした眼差しでムーディを見返せば、ムーディはフッと笑って視線を逸らし話を続ける。
「さて、この3つの呪文だが…これらは許されざる呪文と呼ばれる。同類である人に対して、この内どれか1つの呪いをかけるだけでアズカバンで終身刑を受けるに値する。お前達が立ち向かうのはそういうものなのだ…ワシはお前達がそう言うものに対しての戦い方を教えなければならない。備えが必要だ。武装が必要だ。しかし何よりもまず、常に、絶えず、警戒する事の訓練が必要だ。羽ペンを出せ…これを書き取れ…。」
それからの授業は、許されざる呪文のそれぞれについてノートをとる事に終始し誰も何も話さなかった。