「ぇえ〜?!コナン君あのホテルに行ったんですか!」 「すごーい!!歩美も行ってみたかったなぁ〜」 「ずりーなァ、コナンばっかりよぉ」 「……はは、悪ィな。突然だったからよ」 「次は必ず誘ってくださいね」 「うん、絶対!」 「約束破ったらうな重おごってもらうからな!」 「…はは……」 毎度のことながら、ぎゃいぎゃいと騒がしい小学校。 いつの間に昨日のことが漏れていたのか、教室に入った瞬間、元太、光彦、歩美の三人が俺の元に駆け寄ってきた。 おいおい、どこで仕入れて来たんだよ、その情報。 俺が日帝にいくなんて、博士と灰原以外に言ってねーぞ…。 「あら、私じゃないわよ?」 「灰原…」 「あぁ、でもあの子たち昨日、博士と一緒に釣りに行ったみたいね」 登校してからまだランドセルも降ろしていない状態。 「朝から疲れる」と半目になっていれば、後ろから掛けられた声。 どうやら灰原もちょうど登校してきたようだ。 でもちょっと待て。 その口ぶりからすると犯人は…………博士かよ。 俺は乾いた笑いを携えると、頭の隅でこいつらに詰め寄られる博士の姿を思い浮かべた。 「あー!!そう言えば見ましたか?新聞!!」 「新聞?光彦そんなん読むのかよー」 「歩美見たよ!キッドの記事だよね!!」 「そうなんですよ、歩美ちゃん!」 博士の口の軽さというか、押しの弱さには呆れてものが言えねーな。 「はは」とその場で苦笑を漏らすと、すでにランドセルを降ろした灰原が俺に流し目を送っていた。 どうやら心中を察してくれたようだ。 「あなたたちでも新聞読むのね」 「灰原さん!歩美だって新聞読むんだから」 「そうですよ、灰原さん。我々少年探偵団で新聞を読まないのは元太君くらいです!」 「そんなことねーぞっ、光彦!」 「あら、それなら小島君は今日の新聞内容言えるのかしら?」 「う、それはだなぁ……」 俺はランドセルから教科書を取り出すと、灰原たちに顔を向ける。 どうやら、日帝の話はすでに別の話題へと切り替わったみてーだ。 光彦が自分のランドセルから取り出した新聞を元太に突きつけていた。 あー…あのコソ泥の話か……。 「確か今回のビックジュエルは、園子さんのところの宝石だったんですよね」 「そーそー!歩美びっくりしちゃった!」 「園子ねーちゃんのことか?」 「そうなんですよ!しかもそれだけじゃないんです!!これを見てください。驚いたことに、なんとコナン君が新聞に載ってるんですよ!!」 「なにっ!!どれだよ、おい光彦!?見せろよ!!」 「うわっ、押さないでくださいよ元太君」 バタバタと元太が勢いよく光彦に突っ込んでいく。 その衝撃で、光彦が腰掛けていた机がひっくり返ったが、どうやら元太の腹で衝撃は免れたようだ。 歩美が光彦に声を掛けていた。 「光彦君大丈夫?」 「え、えぇ、ありがとうございます」 「もー元太くんったら…」 「ほんとだ!!おいコナン!!これどー言うことだよ!!」 だが光彦を押し倒した張本人は、二人にお構いなしのようだ。 新聞を皺くちゃにしながら、俺の方へと歩み寄ってきた。 隣にいた灰原がさりげなく俺の後ろに避難する。 おいおい……、ちゃっかりしてんな。 「コナン!説明しろよ!!」 「説明って言われてもな…」 「ていうか、光彦と歩美はなんでこの新聞のことに驚かないんだよ!ホテルの話よりこっちの方がスゲー話じゃんか!」 確かに…。 俺は、元太の珍しく的を射た疑問に内心頷くと、背後の灰原とともに光彦たちを見遣った。 「何言ってるんですか、元太君。コナン君ならそれくらいのことを遣って退けて当然です」 「そうだよ、元太君。だってコナン君はいつもどんなに難しい問題でも解いちゃうじゃない」 「そうです、だから僕はコナン君が新聞に載っていたとしても驚きませんよ」 「歩美も」 「……そ、そりゃそうかもしんねーけどよ……」 「それに、コナン君がキッド関連で新聞に載るのは二度目ですよ!」 「うぐっ」と言葉を詰まらせる元太。 その前で、歩美と光彦の二人が俺とキッドの記事の内容を力説していた。 いや…おめーら、そこまで力説するほどのモンでもねーだろ。 というより、やめてくれ……。 「ふふ、あの子たちはホントにアナタのイイお友達ね」 「…灰原……オメエまで」 「あら、でも別にいいんじゃない?あの二人はそれだけあなたの名推理に信頼を寄せているってことでしょう?」 「……」 ……そんなもんか? 俺は、灰原の言葉を図るように見つめると、灰原はにこりと含みのある笑顔を返した。 「でもコナンは昨日ホテルに行ったんだろ?じゃぁこの新聞はいつのことのなんだよ…」 「土曜のことに決まってるじゃないですか」 「え」 「その新聞は日曜に刊行されたものですよ、日付を見てください」 「あ、ほんとだ」 光彦たちの力説は終わったのか、ようやくいつものペースに戻ってきた元太が歩美たちに質問をしている。 どこか腑に落ちないような表情を浮かべてはいたが、どうやら俺が追及されることはもうないようだ。 ……助かった。 「はーいあなたたち、おしゃべりの時間はもう終わりよ。席に着きなさーい」 「「「っ!は―――い!!」」」 そして、奏功している内に担任が教室へとやってきた。 その声に弾かれたように新聞から顔を上げた三人。 話したりなさそうな様子だったが、「仕方ないですね」という光彦の言葉を最後に、素直に担任の言葉に従った。 やーっと、授業開始か……。 なんか知んねーけど、今日は長い一日になりそうだな。 俺はため息を吐くと、自分も席に着こうと椅子に手を掛けた。 「それじゃ工藤君、今日も一日貴方の名推理を楽しみにしてるわね」 「……」 だが、そんな俺の心境を知ってか知らずか、灰原はいつもの笑みを見せながら俺の肩を軽く弾いた。 ……はは、おいおい。 そんなに毎日事件があったらたまったモンじゃねーっての。 「はーいそこ、江戸川君早く席に座りましょーね」 「…っ、はーい」 「わはは!コナンだせー」 「……」 ったく、誰のせいだ、だれの。 俺はクラス中から送られる視線を流しながら、ようやっと席に着いた。 そして、顔を背けるように窓の外に視線を投げると、小さくため息を漏らしたのだった。 「江戸川くーん、ホームルームでは前を向きましょう」 「「「あははははは!!」」」 「……」 あー……早く元の身体に戻りて―。 5月26日。 ガキのフリも疲れるな。 非日常の中の日常