久しぶりの夕ご飯。 フ―ディンさんが形だけでも楽しいから、と準備してくれました。 かたち 不知火さんという上忍の先生がつくことがわかった日の午後。 明日の演習で最終試験とやらが施行されることが伝えられた。 不知火さんは私に必要事項を伝えると、忙しいのか「仕事だから」とすぐその場を後にしていった。 私は、しばらくの間、残されたその場でぼうっと立ち尽くしていた。 けれど、不意に頬を掠めた風に背を押されたことに気がついて、私は家路に足を向けた。 「…ミュウツーさん?フ―ディンさん?」 そして、テレポートで帰ってきた家の中、シンとしていた部屋に声を掛ける。 いつもなら帰ってきた瞬間に目の前にいるミュウツーさんがどこにも見当たらない。 私は疑問に思いながら、もう一度声を掛けた。 「ミュウツーさん?」 「(…)」 「あ、ただいま」 すると、不意に目の前に降り立ったミュウツーさん。 私は彼の顔をそろりと見上げた。 「(……)」 「え?」 瞬間、どこから取り出したのか。 私の眼前に真っ白な物体が晒された。 じっとそれを見つめてみる。 「…けーき?」 「(…)」 ぼんやりと視界の中に浮かび上がってきたもの。 それは、なんとホールケーキだった。 プレートに可愛くフ―ディンさんの顔が描かれており、ミュウツーさんが言外に「お祝いだ」と伝えてくれる。 「もしかして、卒業祝い?」 「(……)」 「え、フ―ディンさんが作ってくれたの?」 「(…)」 「あ、りがと。え…明日の応援?」 「(……)」 持っていたケーキを横隣のテーブルに置くミュウツーさん。 ぽすんと私の頭に手を載せると、ミュウツーさんは、無表情だけれど優しい双眼を私に向けてくれた。 食欲はない私たちだけれど、形だけでもとわざわざ準備してくれたらしい。 「人間の習慣を忘れるな」だって。 厳しいけれど、やさしいミュウツーさん。 私は、部屋脇に並べられたボールから皆を呼んで、久しぶりに皆とほのぼのとした夜を過ごした。 (え?このケーキも形だけ?) (「…」) (あ、サンプルだ)