演習日和です。 不知火さんが凛々しく佇んでいました。 演習の試 昨日伝えられた指定の場所に立ち尽くす。 草原となっているその場所には、未だ自分以外の誰一人も来ていなかった。 不知火さんは…あと少しかな。 私は、遠くから近づいてくる気配を辿ると、後三分ほどで不知火さんが到着することを確認した。 「よ。待たせたか」 「…おはようございます」 「なんだ驚かねーんだな」 「……」 シュッと私の目の前に突如姿を現わした不知火さん。 彼は昨日と変わらずの若草色の忍者服姿で、葉っぱ?を咥えながら私を視界に捉えていた。 ぺこりと頭を下げて挨拶をする。 「ま、いいか。早速試験といきたいところなんだが」 「?」 「常なら『チームワーク』ってのを試すんだよな。でもお前はワンマン。チームもなにもねーな」 「…」 「だから、お前は別のもんで試させてもらうぞ」 かったるそうにため息を吐いた不知火さん。 首後ろを掻きながら他方を向いていた。 …なんだか少し奈良さんみたい。 「じゃ、早速いくぞ」 「?」 そうして、いくらか奈良さんの姿を思い出していれば、突如不知火さんの空気が変わった。 スッと手前に出される一枚の紙。 彼は、私にその紙を手渡すと、それを死守しろとの一言だけ伝えてきた。 あ、不知火さんが消えた。 「俺はいまからその紙を盗る。守るだけ守ってみろ」 「…」 ざーっと吹き荒んだ突風。 足元の芝がざわざわと騒ぎ出した。 瞬間、どこからともなく飛ばされてきた殺気。 下忍向けに調整されたそれは、試験の開始を告げるものだった。 場所を特定させないためか、殺気が辺りに散布させられている。 姿の見えない不知火さんの声が辺り一面から響き渡った。 「…本当は逆なんだがな。ま、他班と同じようには測れねーから。俺はお前に今から仕掛けていく、できるだけ防いでみな」 「…はい」 そして始まった演習という名の試験。 端的に言ってしまえば、紙切れ一枚を死守するなんて造作もないことだった。 けれど、ここまで生活してきたものをいまさら壊すわけにもいかない。 私は、適度に気を抜きながら、不知火さんの真意を汲むことに努めた。 置かれた状況は、アカデミー卒業したての下忍には辛辣なもの。 私は取り敢えず、紙を守ることを優先し、下忍らしく怪我をしないように迫りくる攻撃を避けた。 しばらくすると、下忍にとって容易ではない戦況が訪れる。 不知火さんに四方八方を塞がれ、逃げ場を失くした状態。 これでは普通命を落としてもおかしくない。 千本を一気に投げられ、一瞬の隙間さえも見当たらない。 下忍なら逃げ道は完全に皆無の状況だった。 私は、持っていた紙を一瞬で燃やし(怪我をするとミュウツーさんにこってり怒られるので)、かすり傷すらしたくない一心で自身の身を守ることに徹した。 「…ルカ、終わりだ」 「え?」 「試験はこれで終わりだ」 「…」 「技術としてはまあまあだが、そーだな。合格でいいんじゃねーか」 「…ごうかく、ですか?」 不意に肩に添えられた手。 私は、不知火さんの差し出してくれた手を掴みながらその場に立ち上がった。 じっと彼の顔を見つめる。 「お前さんは秘密文書を守ることに徹した。それは忍びとして、任務で絶対的なものだ。情報は時として里をも滅ぼす。漏れることが最悪の事態なんだ。お前は自身の身が危険にさらされたとき、その情報を守り抜いた」 「…」 「だが、ここで最も大切なのは、命を捨てなかったってことだ」 グッと、私の肩を掴んでいた不知火さんの手に力が籠められる。 彼はニヤリと口角を上げて笑った。 「自分の命を守れないような奴に他人なんざ守れねーからな。お前はお前の命を粗末にしなかった。それが合格の決め手だ。良かったな」 「…あり、がとうございます」 「…ほんとにそう思ってんのかよ」 「…」 「ま、取り敢えずこれで試験終了だ」 「お疲れさん」と不知火さんはふたたび私に笑い掛けてくれた。 その顔は気のせいか、嬉々としているようにも見えた。 けれど、その後すぐに「明日から任務だ」と伝えられ、その顔は昨日から変わらない不愛想なものへと戻っていた。 「取り敢えず明日からまたよろしくな」 「はい」 (あとな、笑え) (…)