遂に来てしまった、この日が。 玄関で背中を押してくれる二人に、私はヘラりと笑いました。 関門の園 目の前に佇む中忍試験会場なる建物。 私はたったひとり道端でその建物を見上げると、茫然としながら足を進めました。 「…」 なぜか幻術が掛けられていたり、不思議な二人の少年に出会ったり。 試験会場に辿り着くまで、いくつもの関門が設けられていました。 それに、昨日不知火先生から頂いたアドバイス通り、ワンマンで受ける異例な私には他の受験者よりも多くの関門が布かれていた。 そのためか、会場入り口に到着するのが、おそらく一番最後になってしまった。 この世界に来てから、元々人と関わることが多くない生活をしてきた私にとって、正直、試験前にこんなにも多くの人との接触が、こんなにも疲れるものとは思ってもいなかった。 私は、無心の表情でぽつぽつとようやくたどり着いた最上階の廊下を突き進んでいった。 すると、突き当りに両開きの扉が見えて来る。 ようやくかな、と思いその扉に近づいていく。 そして「もうそろそろだ」と思った次の瞬間、私は突如轟いた大きな声に、俯かせていた顔を上げてしまった。 「とーらァァアアア!!俺の名はうずまきナルトだァ!!テメエらには負けねーぞ!!わかったかァアアア!!!」 「……」 聞こえた声の元凶はここにはいない。 それはとても大きな声だった。 けれど今はそんなことを気にしている場合ではない。 そう。 …ぱちり。 目が合ったのだ。 「えーと、受験生?」 「……」 いきなり耳に届いた声にハッとして、試験会場扉に凭れかかっている男性を目に入れる。 気配は感じていたからいいものの、私は、その男性の風貌に不埒な視線を向けてしまった。 …あやしい。 「…えーと聞こえてる?」 「…(こくん)」 「あ、そう。で、君受験生なわけ?」 「…(こくん)」 問いかけられる質問に頷くことしかできない。 なぜだろう…。 私はその男性も関門の一つだろうか、と内心勘ぐってしまった。 けれど、どうやらそれは見込み違いだったらしい。 「受験票は?」と次には訊ねられ、素直それに応対すれば、その人は「どーぞ」と道を譲ってくれた。 「そう。それじゃ、いってらっしゃい」 「?」 「あ、でも今入ってかない方がいいかも」 「…??」 返された受験票を手に会場へと続く扉に手を掛ける。 けれど、不意に置かれた肩上の手に、なぜか静止を掛けられた。 私はその男性を見つめる。 「うーん。そんなに見つめられると照れるんだけど」 「……」 「あらら、反応ナシね」 「……」 何か用なんだろうか? 私はただその場で掴まれた肩をチラリと見遣りながら、その人が用件なり手を放してくれるなり、次の行動をとってくれるのを待った。 「あ、ほらね」 「?」 すると、幾分かその状態で互いに静止していると、扉の反対側から聞こえて来た何やら争っているような音。 私は、扉の向こうを(レントラーさんよろしく)透視して状況を把握した。 「……争っ、て…る?」 「そーゆこと。というより君喋れたんだ」 「……」 「ま、いいけど。そろそろ行った方がいいんじゃない?今度は間に合わなくなるよ?」 「……」 パッと放された肩上の手。 私はその衝撃に少しよろめきそうになったけれど、いつの間に出て来ていたのか、姿を隠したスイクンさんに身体を支えてもらった。 「…あ、りが、とう」 「ん?なにが?」 「…あ…ちがい、ます」 私は、思わずスイクンさんに伝えた言葉を口に出してしまっていた。 …不覚だ。 でも、スイクンさんの姿・気配は完全にこの世界の人たちに捉えることはできないから。 私は、小さく男性に向かって頭を下げると、最早に扉向こうに姿を消していった。 「静かにしやがれェ!このド腐れ野郎どもがァ!!」 そして、扉を開いて中に入った瞬間。 目の前に飛び込んできたのは、アカデミー時代の皆さんの背中。 その更に向こうには、もくもくと立ち上る真っ白な煙とその中から現れた試験官たちがいた。 私は眼前の光景に瞼を瞬かせるのも束の間、トントンと突かれた肩にゆっくりと視線を向けました。 「久しぶりじゃねーか」 「……奈良さん」 「相変わらずかよ…」 私に気づいてくださったのは、どうやら、お久しぶりの奈良さんだけでした。 (あの子がワンマンの子ね) (…あ、犬塚さんもいる)