勢いよく開いた44の扉。 半径10キロの演習場に円を張れば、受験者全員が勢いよく飛び出したのがわかった。 食欲なくてよかった。 運を拾う きゅっと握った手元の巻物に視線を落とす。 開いた目の前の門をゆっくりと跨げば、ガチャンとそれは閉じられた。 私はぽつりとため息を漏らすと、門外に待機していた試験官の気配がなくなったことを感知した。 ……本当にこの演習場で五日間過ごさなければならないようだ。 「…ミュウツーさん」 「(……)」 私は、誰もいないことを確認すると、これまでずっと我慢していた声をようやく喉から押し出した。 すると、ふわっと姿を現わしたミュウツーさん。 ずっと横にいてくれてはいたけれど、やっぱり声に出して話したかった。 私はミュウツーさんを見上げると、不意に寄せられた腕の中にぽすりと収まった。 「…中心に塔があって、そこが目的地だって」 「(…)」 「巻物…あ、これ、地と反対の…天の書?、を奪うの」 「(……)」 「え、もう行ったの?…うん」 スッと持ち上げられた身体。 突然のミュウツーさんの行動に私はほんの少し驚いてしまったけれど、伝えられた言外の言葉に頷くと、ミュウツーさんに身体を預けた。 どうやら、先に目的地に連れて行ってくれるみたい。 というより、同意書を書いている間に、一度塔に行っていたらしい。 雨風をしのげるから、寝床にするならそこが一番いいと教えてくれた。 …頼りになります。 「…なんにも、ない」 「(……)」 塔に着いたその瞬間、姿を消してしまったミュウツーさん。 けれど、私はそれを気にせず、独り言宜しく言葉を漏らしていた。 しんとした石造りの塔内に自分の声が響く。 私は、姿は見えないが言外に伝えられるミュウツーさんの声を聞きながら、塔の中へと入っていった。 「……ひとは、いる……んだ」 「(……)」 「見られてる」 私は取り敢えず、この場所が寝床には最適だということだけを確認すると静かに踵を返す。 目的地だけに来ても仕方がない。 巻物を揃えなくては、まず試験は通過できないんだ。 私は、ぼんやりとしながら塔の外に出れば、瞬く間にテレポートで森の奥深くに飛んだ。 辿り着いた先で再びミュウツーさんと顔を合わせる。 けれど、私たちは顔を合わせた瞬間、二人でぽかんと互いを見つめ合ってしまった。 じっとその場に蹲るように腰を降ろすと、私は足元に見つけた "とある" 物体を持ち上げる。 そして、そろりとミュウツーさんに小首を傾げると、戸惑いながら声を発した。 「…ミュウツーさん、これ天の書…どうして落ちてるんだろう」 「(……)」 「罠もないし…人気も…」 そう。森の真っただ中にポツンとひとつ、天の書が落ちていたのだ。 まさかの遭遇に私はこれは一体どういうことだろうかと懐疑に思ってしまった。 でも、どうやら、罠でもなんでもない様子。 本当にただ落ちているだけのソレを懐に収めると、私はこれで完壁にすることがなくなってしまったと、茫然とミュウツーさんを見つめた。 だって。 まさか始まって間もない内に試験終了になるとは思いもしなかったから。 あと五日間どうしようなんて考えてしまった。 「(……)」 「ん」 そんな私の状態を見とめたミュウツーさんが不意に私を抱き上げる。 私はなされるがままにミュウツーさんの腕の中に収まると、「本当にどうしよう」と思いながらもゆっくりと目を閉じた。 そして、どこかへ引かれていくような感覚に身を委ねると、私たちはその場から姿を消したのだった。 「(……)」 「…寝ないよ」 (目を覚ました時には先の塔の中にいた) (あれ……ん?砂?) (目が…かすむ)