「おいナルト、サクラ。ルカを見なかったか?」 「カカシ先生?」 「ルカ?そう言えば、どこにも見当たらないわ」 迸る無期 他人の戦いを見るのは久しぶりだった。 ミュウツーさんたちとこの世界で暮らし始めてから、幾度となく忍びの戦いに巻き込まれてきていたけれど、こんなにも明るい室内で、改めたように戦いを見ることなんて本当にないことだった。 それよか、こんなこと前の世界でなら警察に一斉検挙されて一生檻の中暮らしを強いられてしまう。 私は、茫然と目下の戦いを視界に入れながら、ただそんなことを考えていた。 「……アナタは観ないのね」 「?…」 突として落とされた声。 私は、体育座りの膝頭に埋めていた頭を上げると、掛けられた声の先を見遣った。 …シラナイ…人。 生臭い。 「フフ、アナタはサスケ君の試合観ないのかしら?この場の全員が注目してるっていうのに、まったく興味がなさそうね」 見遣った先にいた人は音忍の額当てをしていた。 全身真黒の忍び姿だ。 私は口を噤んだまま、その人を視界に収めた。 「アタシを見るんじゃなくて下の試合のことよ。アナタも後で出るんでしょ?」 「…(こくん)」 「なら、観ておいた方がいいんじゃない?フフ、ほら。サスケ君が動いた」 その人の言葉に、私は試合会場に目を向ける。 すると、そこには試合相手を空中に蹴り上げ、その背後を取ったうちはさんの姿があった。 そのうちはさんの姿に、どうやら声を掛けて来た横の人は興奮しているらしい。 私は、うちはさんから横の人に目を向けると、徐にミュウさんを腕に抱えた。 この人は…たしか、…そう、ミュウツーさんが外に行った理由の人。 私は確かめるようにその人の顔をじっと見つめると、感じた衝動にハッと口を一文字に結んだ。 だめ、だ。 私は、急いでその人から目を逸らすと、その場に立ち上がる。 お腹の中が刺激されたのだ。 ずくり、と衝動がこみ上がってきそうになってしまった。 「フフ、素晴らしい……やっぱり欲しいわ」 「……」 「アラ、移動するの?」 「(こくん)」 「あの子、サスケ君は本当にすごいわね」 「…」 「フフ」と笑みを漏らすその人。 その瞳は私を捉えてはいなかったけれど、その笑みはしっかりと私に向けられていた。 私はその人にぺこりと頭を下げると、そろりとその場を後にした。 その際に音忍の受験者三名に不審そうに見られたけれど、私は気にせずに移動した。 「…」 そろりと抜け出した試合会場。 テレポートは使っていないから、普通に扉から出て来たのを見られたのだろう。 追いかけて来たらしい試験官が私を呼び止めた。 「君、受験者だろう?どうして試験会場を抜け出たんだ。今から戻りなさい。試合が終わり次第ランダムで対戦者が発表されるんだぞ」 「……」 「それとも逃げ出すつもりかい?」 目の前に現れた試験官は、やれやれと言った表情で私を見つめている。 私は腕に抱いていたミュウさんを放すと、くるくると私の周りを飛び出したミュウさんにパチリと瞬き一つを送った。 そう、だね、もともとこの世界の人間じゃないんだから。 考える必要もないんだった。 「…はい。やめ、ます」 「っ!…なに?!」 私の漏らした言葉に吃驚した表情を向けるその試験官。 言葉を理解したと同時に、私に近づいては、これまでの試験の難しさを説き伏せてきた。 …関係ないだろうに。 私は、コクリと頷きながらその人の話を取り敢えず全部聞いた。 そして、話に区切りが見えたところで、先ほどと全く同じセリフを伝えたのだった。 (なにを、しておるんじゃ。そんなところで) (火影さま!この受験者が、試験を降りると申しまして…) (…ほう、そこの者。それはなぜか訊いてもよいかのう) (受験…者、奇数だったの、で) (それはまた、面白いことを言うのう)