これからすぐに予選が始まります。 逃した機会 四日と半日。 第二試験通過者が続々と集まってくる中、私は犬塚さんたちと一緒に第三試験開始までの日々を過ごしました。 そして、第二試験最終日、第七班のナルトさんたちが合流したころ、ようやくタイムアップを知らせる試験官が姿を現わした。 連れられた先に見えたのは、私が初めて目にするこの里の長。 そこには、火影さんを始めとした里の忍びたちが立ち並んでいました。 ……不知火先生…は、いないんだ。 ミュウツーさんが、ふん、と鼻を鳴らしていた。 「皆さんには第三の試験の前に、ゴホッゴホッ…やってもらいたいことがあります」 一同に集められた場所は広い石造りの部屋。 班ごとに並べられた受験者たちは、今し方目の前に現れた「月光ハヤテ」という試験官の言葉に眉根を寄せていた。 そして、彼の次の発言により、この場には騒然としたざわめきが起こった。 「えーそれは、本戦の出場を掛けた第三の試験、予選です」 「どういうことだと」上げられる各所からの声。 春野さんが的確な質問をしていた。 その質問に月光さんが淡々と答えと説明を告げていく。 私はそれを茫然と聞きながら、眼前に立ち並ぶ忍びたちを見つめていた。 なぜなら、先ほどからこちらにニコニコとした視線を送ってくる人がいたから。 あれは、たしか…不知火先生が「近づくな」と教えてくれた、はたけさん?だったと思う。 私は不知火先生の教え通り、ちらと視線を横に外した。 瞬間、沸き起こった静寂。 後続して朗らかな声がその場に届けられた。 「あのー僕はやめときます」 どうやら受験者のうち一人が辞退を表明したようだった。 ナルトさんが驚いたように声を上げている。 「(………)」 「え」 その喧騒に紛れて、ミュウツーさんがテレパシーを伝えてきた。 私は弾かれたようにミュウツーさんが佇む方に顔を向ける。 けれど、ミュウツーさんにやんわりと顔の方向転換を制されて、声だけを聴くように、といなされてしまった。申し訳ない、です。 「(…)」 「ん」 「ここにはいたくない。気持ち悪過ぎる」そう言うミュウツーさんの言葉の端々には、機嫌の悪さが滲み出ている。 ミュウツーさんの言いたいことはわかっていた。 気持ちの悪さはこの塔に入る前から感じていたことだったから。 私はミュウツーさんの「外の空気を吸ってくる」という言葉を耳にすると、入れ替わるように私の横に姿を現わしたミュウさんに「ごめんね」と伝えた。 ミュウさんは首を傾げながら、私の周りをふよふよと舞っている。 久しぶりのお出かけに気持ちが浮き上がっている様子のミュウさん。 現状の理解ができていないのか、姿は消しているものの、私にちょっかいを出していた。 …くす、くすぐったい。 「では、掲示板に示された者。前へ」 そうして、じゃれつくミュウさんの擽り攻撃に我慢をしていれば、いつの間にか試験についての話がまとまっていたのか、この場にいる全員の息を呑む声が聞こえてきた。 私は、ミュウさんに頬を突かれながらつと顔を上げると、月光さんの指し示す場所に視線を向けた。 「対戦者二名を除く皆さんは、えー…ゴホッ、上の方へ移動してください」 そこに立っていた二人は、うちはさんと黒装束に包まれた大きな身体をした忍び。 私はその二人を視界に捉えると、月光さんの指示に従って移動していく受験者に倣って自分も足を動かそうとした。 刹那、ふとこちらを向いたうちはさん。 真黒な双眼と目が合ってしまった。 「…ルカ」 「…」 どうしよう、何か用かな。 私は向けられた視線を茫然と返しながら、何か言いたげな様子のうちはさんに首を傾げた。 けれどいくら待ってもじっと見つめるだけのうちはさん。 どうやら用はないみたい。 私は「まいいか」と彼を気にせずに足を動かそうとした。 そのとき、不意に彼の背後に現れたはたけさん。 うちはさんの後ろからにこりと笑ってはこちらに手を振っていた。 「…?」 けれど、はたけさんはその面持ちを突如真剣なものにすり替えるとうちはさんに何かを伝え始めた。 うちはさんの眉間に皺が寄る。 私はそんな二人の様子を見止めると、先ほど聞こえたうちはさんの小さな呟きを流すように止めていた足を進めた。 特に用がないなら、呼んだり手を振ったりしないでほしい、そう思いながら。 ナルトさんたちの上っていった階段とは反対方向の階段を上っていったのだった。 (これから呪印を封印する) (待ってくれ) (二度もわがままは聞いてやんない。さぁ、来い) (なら一つでいい。頼みを聞いてくれ) (―――ルカを呼んでくれ)