「予選は無事終わり本選に入るようです」 「それにしても長閑。いや、本当に平和ボケした国になったわ」 「カブト、お前。私を止めたいなら今、サスケ君を殺すしかないわよ」 小休止 第三の試験予備試合会場から里に戻ってきて一番に出会った不知火先生。 先生は驚いたように私を見遣った後、呆れたように笑った。 ミュウツーさん…家に帰らないんですか。 「で、お前は試験を止めてきたってわけか。まぁ元々ワンマンだったしな。頑張ったんじゃねーの」 「……」 ぽすん、と頭に乗せられた不知火先生の手。 わしゃわしゃと人の頭を撫でる不知火先生は、どこか気だるげに「お疲れさん」と言ってくれた。 どうやら、辞退したことにどうこう言われることはないようだ。 よかった。 「お前に付き合ってやりたいが、悪ィな、俺今仕事中なんだ。中忍選抜の本選に駆り出されるらしくてな。今からその準備だと」 「…じゅんび…ですか」 「あぁ。そういえばお前どこもケガしてねェみたいだが一応病院行ってこい。今日は一日中仕事だから付き合ってはやれねーが、明日からまた任務なり何なり見てやるから」 「……」 「わかったな」と言いながら腕に大量に抱えている書類を抱え直す不知火先生。 口に咥えている枝(千本って教えてくれた)も咥え直すと、不知火先生は「またな」と片手を上げて去っていった。 火影さんの建物に向かって行くらしい。 私は不知火先生の後ろ姿を見送ると、先生に言われた通りの場所に足先を向けた。 「あー!!お前はむっつりスケベ!!」 「失敬な」 「なななななっ!なんで、なんでこんな奴が俺の修行の先生なんだってばよ!」 木の葉病院と書かれた建物を潜り、受付場所まで辿り着けば、何やら騒がしい声が耳に届いてくる。 私は、声の中心に見覚えのある姿を二つほど見つけた。 暗歩でここまで歩いてきていたので、そのままお三方の隣をするっと通り抜ける。 そして、受付を済ませると静かに待合室の席に着いた。 「それじゃ、恵比寿先生。お願いします」 「はいはい」 病院内でわいわいと声を上げるお三方だったけれど、話に折り合いがついたらしい。 内一人が病院内に消えていった。 けれど、そう思ったのも束の間、ナルトさんがいきなり大声を上げて外へと飛び出していった。 その後を、黒装束のサングラス忍者さんがニヤリと口角を上げて追いかけていく。 私はお三方が消えた直後に呼ばれた自分の名前に腰を上げると、看護師さんの案内する診察室へとゆくりとなく着いて行った。 ミュウツーさんが呆れたように鼻を鳴らすのを聞きながら。 わかります、病院は静かにするところですもんね。 「どこも異常はないようですね。ですが睡眠不足のためか体力低下が著しいですね。神経系に疲れが出ています。抗酸化ビタミンの点滴を200くらいでいいので打っていってください」 「…はい。…あり、がとう…ございます」 「では、お大事に。そこの廊下を出て突き当りの角を曲がった部屋でお待ちください」 医療忍にぺこりと頭を下げて診察室の扉から出て行く。 かたかたと音を鳴らして開いた扉の先には、先ほど通ってきた廊下が続いていた。 「…?」 「(……)」 ミュウツーさんが言外に何かを伝えてくる。 先ほどから自分も感じてはいたけれど、どうやらこの病院には忍者が幾人も入院しているらしい。 至る所からさまざまなチャクラが感じ取れた。 だからかはわからないけど、ミュウツーさんの機嫌がだんだんと崩れていくのが犇々と伝ってくる。 私はそんなミュウツーさんをちらりと一瞥すると、そろりと指示された部屋へと入っていった。 「…ルカ?」 「…?」 目を瞑ってベッドに横になっていれば、不意にカーテン向こうから届いてきた声。 私は腕に繋がった点滴のチューブに気をつけながらそっと腕を動かすと、寝たままの姿勢でカーテンをゆっくりと開けた。 すると、そこにいたのは… 「や。こんなとこでなにしてんの?って野暮な質問だったかな」 「…は、たけ…さん?」 先ほど受付先で声の中心にいた人物の一人、はたけさんだった。 ニコニコとしながら片手を上げては、カーテンで仕切られたこちらへと入って来る。 私はゆるりと身体を起こしながら、ベッド脇の椅子に腰かけるはたけさんに視線を遣った。 「動かなくていーよ」 「…」 「てか君もここにいたのね。奇遇だねー実はサスケもここに居るのよ」 「…」 ヘラりと笑っては、はたけさんは勝手に話を進めていく。 何か用だろうか。 というより、カーテンで仕切られてたのに何でわかったんだろう。 そう思っていれば私の考えていることがわかったのか、はたけさんは隻眼の目をさらに細めてこちらを見ていた。 「いや。ちょっと特別な眼でね」 「…そう、ですか」 「予選は終わったよ。そういえば、途中から姿が見えなかったけど、ずっとここに居たの?」 「…いえ」 「そ。ならどこにいたの?」 「……」 目を細めてこちらを見るはたけさんは至極不思議そうに首を傾げている。 予選が終わったのであれば、上忍である彼は私が辞退したことはすでに知っているはずだ。 私ははたけさんがそれを知らないことはないだろうに、と何も言わずに彼を見遣った。 「冗談はさておいておいて。ルカが途中辞退したことは火影様から試験官全員に伝えられたから知ってるよ。別にそれをどうこう言うつもりはないから」 「……」 「実はね、ちょーっとルカを探してたんだよね。俺個人で呼びたいところだけど…って冗談だから」 ニコリと笑うはたけさんを茫然と見る。 両膝に両腕を休ませながら腰かけるはたけさんは、ベッド脇近くで「冗談だから」と眉尻を下げていた。 「…さが、して…たんですか?」 「そ。俺というよりサスケの奴なんだけどね」 「…うち、は……さん?」 「何の用かは知らないケド。もしよかったらこの後にでもサスケのとこに顔出してやってくれる?面会謝絶になってるけど俺の方から話は通しておくからさ」 「…」 「気が向いたらでいいよ」と笑うはたけさん。 その顔はどこか疲れているように見えたのは気のせいだろうか。 私は、取り敢ずはたけさんの言葉にコクリと頷くと、伝えられた部屋番号を頭の隅に置いた。 「そゆことだから。ま、よろしく頼むよ」 その一言を最後に席を立ったはたけさん。 私は向けられた背に、ただぼうっとした視線を投げかけた。 そして、何も言わずにはたけさんを見送ると、去り際に渡された一つのリンゴを握り締めた。 (…ミュウツーさん、リンゴ食べる?) (「……」) (ショリショリするモノ苦手なんだ…)