貴様、こんな所でなにをしている それはもう突然だった。 なにがどうしたのかと理解する暇もなく、目の前に現れた彼はそう告げた。 Unexpected or Expected なんだかここ最近ずっと働き詰めのような気がする。 そんなことを思ったのが始まりだった。 「…え、いいんですか?」 「私が代わりに店番しててやるわよ」 「でも日野さんのお店…」 「うちはこんなシケタとこと違って老舗の大繁盛、人手たくさんの店なんだから」 「…そうなんですか」 「…貶されてるのわかってんの?」 「え」 「はぁ、まあいいわ。で?その饅頭食べてみたいんでしょ?」 「あ…はい」 「うちで作れないこともないけど、そう言うのは本場で食べるからこそなのよ」 そう言いながら腕を組んで、わたしの出したお茶をすする日野さん。 そして、すべてのお茶を飲み干すと、徐に立ち上がってわたしの腕を引っ張った。 「まあいいわ!考えるよりも行動よ!」 「??」 「思い立ったが吉日って言うでしょ!さっさと行ってくんのよ!」 「っうわ」 どんと押された背中。 そして、いつの間にというより何処から出したのか、私の荷物を詰め込んだらしいバックを投げつけられた。 「さーいってきなさい!戻ってくんじゃないわよ!」 「え」 「門の方行けっつってんのよ」 「お店は…」 「だーかーらー私がいるから!それと、門に行けばうちの御車遣わせてあるから!」 「それ乗んなさいよー」なんて言いながらわたしを足蹴に外へと追いやった。 「…え」 ええー。 漏れた言葉は衝撃の声だけ。 ポツンと立ち竦んだ店前はやけに閑散と感じられた。 ぎゅっと握ったバックに皺が寄る。 じっと見つめた自分の店の扉には、目に見えて日野さんの影がチラついていた。 「…ハア」 これは、どうしたものか。 わたしは諦めたように、里の門へと足を向けた。 そう言えば、里の外に出るの初めてだなー、なんて思いながら。 (ふふふふ、あの子ったら押しに弱いのよねー) (あ、御車の方ですか?) (へい、嬢さんの方から話は伺っております、どうぞ) (よ、よろしくおねがいします)