そのひょうたん重くないですか? Kindness is Free 盗賊に襲われているところを助けてもらってから、これまた早数時間。 夜の内に移動するのは危険と諭され、御車で一夜を明かした私たち。 旅のお供は二人から三人に増えました。 「ここが、風の国」 「……」 「じゃあ、あっしはここで」 「あ、御車さんはいらっしゃらないんですか?」 「へい、御車を見てますんで。御嬢さんはどうぞ楽しんできてください」 「わかりました。ではまた後ほど」 「へい」 サーっともの凄い砂塵が辺り一帯を占めています。 さすが風の国…。 私は、小さなポーチを片手にぽかんと眼前の光景に見惚れてしまった。 「…いくぞ」 「え、あ。ガーラさん?」 「…なんだ」 行く足を止めてこちらを見るガーラさん。 ひょうたんを背負っているせいか、わざわざ身体ごと向けてくれました。 すみません。 「えっと、国には無事到着できましたので。その、今はきちんとしたお礼ができませんが…」 「……」 「ガーラさんにもご予定があると思いますので、この辺りで大丈夫です。ありがとうございます」 そう、ガーラさんは盗賊を退治してからずっと一緒にいてくださっている。 けれど、よくよく考えれば、ガーラさんにも予定があると思うんです。 なので送ってくださるのはこの辺で大丈夫ですよ、と伝えたんですけど… 「行くぞと言っている」 「…え」 スタスタと先に歩かれてしまった。 えー。 どうやらまだ、送ってくださるようです。 「ガーラさん」 「…」 「…」 一晩と少し一緒にいて分かったことなんですが、ガーラさんは無口な方。 ここ最近、日野さんと一緒にいることが多かったので、耳元が少し寂しく感じるような気がします。 「おい」 「はい」 「…」 「?」 突として声を掛けてくれたガーラさん。 けれど、後続するはずの言葉が聞こえてきません。 「ガーラさん?」 「…お前は何のためにここへ来た」 「あ。砂の饅頭があるとお聞きしたので、それをぜひ試食してみたかったんです」 「…饅頭?」 「はい」 不意に立ち止まって、ことりと首を傾げるガーラさん。 赤い髪が黄土色の街の中できれいに映えていた。 「ご存知ですか?」 「……あぁ」 小さく頷きながら返答してくれたガーラさん。 なんだかガーラさんの口から「饅頭」という単語が出るのが少し不思議だ。 「友人に食べてきなさい、と勧められて来たんですが、実はそのお饅頭の名前だけしか知らなくて…」 「……」 「お恥ずかしいですが、場所と店の名前がさっぱりなんです」 「……よくここまで来れたな」 「…御車さんに頼ってました」 「まあ、いい。連れて行ってやる」 「!」 再び歩き出すガーラさんは、こちらに振り返っては「なにをしている」と言葉を漏らす。 え、なんだかそこまでしていただくのは本当に申し訳ない。 けれど、知らないのも事実なので、ここは素直に頭を下げました。 「よ、よろしくお願いします」 「…」 (風の国とは言ってもここではないぞ) (え) (それは隠れ里の銘菓だ)