それは本当に気づかぬうち、でした。 The Glimpse of Smile 砂饅頭をお目当てに風の国を目指してから二日。 風の国に到着したと思ったら、それは風の国でも隠れ里の銘菓だということが判明。 私は茫然とガーラさんを見つめました。 けれど、そんな茫然もあっと言う間。 ぱちくりと瞼を瞬かせた次の瞬間。 わたしは、黄土色の砂塵に巻かれるどこかわからない場所に立っておりました。 身体に何かがまとわりついているような感触を残して。 「なにをしている。買いに行くのだろう」 「…え、はい」 呼ばれたからと、足を動かします。 が、何が起きたのやらさっぱりなんですが…。 「ここが砂隠れの里だ」 「あ、あの。もしかしてガーラさんは風の国の方なんですか?」 「…ああ」 もしかして、と思ったことを口にしてみる。 するとサラリとした返事が返ってきました。 私は、ふとガーラさんの姿に目を細めます。 いえ、そのなんといいますか、今気づいたのですが… 「…忍びの方…とか?」 「…あぁ」 「!」 衝撃事実でした。 「そ、そうだったんですね」 「……忍びは嫌いか」 「いいえ、その。あまり関わったことがないので」 「…そうか」 言ったことに対して、ガーラさんは気にした風もない。 あ。そういえばと今更に思い出したこと。 私は一応「木の葉の里」というところに住んでいるのだけれど、勝手に別の里へとお邪魔してしまってもいいのだろうか。 というより、ガーラさんに連れてきてもらった?のだけど… 手段不明。 入ってしまったものはしょうがないのかな。 「ここがその饅頭を売っているところだろう」 「え。鍛冶屋?」 「…」 「ここだ」と連れてきてもらった砂隠れの里の一角にあるお店。 先を歩いていたガーラさんの足が止まるのに合わせてお店を見上げれば、なんとそこには鍛冶屋。 私はぽかんとガーラさんを見つめてしまいました。 「…ここだ」 「お饅頭…。すみませんガーラさん。私の見間違いでなければ、ここは鍛冶屋さんのように見えるのですが…」 「…ここだ」 「…」 真っ直ぐな瞳でこちらを見遣るガーラさん。 私は首を傾げながらも、取り敢えずガーラさんを信じて鍛冶屋の暖簾をくぐりました。 「…どうだった」 「…ガーラさん」 そして、数分後。 くぐった暖簾を再びくぐって外へと出てきた私に声を掛けてくださったガーラさん。 私は、小脇に抱えた箱の一つをガーラさんに突き出しました。 「お饅頭。おいしかったです!」 「…」 結論から言いますと、砂饅頭おいしかったです。 はい、鍛冶屋に饅頭、ございました。 それも美味なものが。 「驚きましたが、鍛冶屋にお饅頭がありました」 「あぁ。だから言っただろう、隠れ里の銘菓だと」 「はい。ガーラさん、ありがとうございます」 「…」 すでに食べていると思ったけれど、私はガーラさん用に買った砂饅頭をガーラさんの手にそっと置いた。 もちろんこれだけでお礼を済ませるつもりはないけれど、今感じた感動をガーラさんにも、と思ってしまったので。 といいつつ、主にお礼が大半ですけど…。 「……」 「いろいろありがとうございます」 「あぁ」 ガーラさんは全く表情を動かさない人。 それは道中ですごく感じたこと。 けれど、気のせいか、今ほんの少しだけ頬が動いた気がしました。 (風の国の門まで送る) (あ、ありがとうございす) (忍びをつけるからそこで待っていろ) (え。いえ!そんな大丈夫です) (……) (お……お願いします)