彼女の姿が完全に見えなくなったのを確認して、身を翻して生徒会室に戻った。

「……なになに、二人で密会?」

浮かれた男の声が聞こえて動きを止める。振り向くと、金髪の男がにへらと笑みを浮かべて壁に寄りかかっていた。

「…裕之」
「わざわざこんなとこに招いて…あの子なんかあるの?」

生徒会室に入ってこようとする彼を睨む。

「入ってくんじゃねぇよ」
「えぇ、あの子はいいのに俺はだめなの?」
「当たり前だろ」

ソファに座って、冷めた紅茶に口をつけた。くるなって言っているのに向かいのソファに腰をかけた裕之は、俺のことを舐めるような視線で見る。

「しかしこうしてみると、ほんと女にしか見えねぇなぁ。しかも俺好みの美人。その格好のお前なら抱ける」
「きしょいこと言ってんじゃねぇよ」
「その見た目でその声は違和感しかねぇな…。普段みたいに女の声出せよ」
「なんでお前の前で…」

はぁ、とため息を吐いて、ソファにもたれた。裕之はそんな俺を相変わらずニヤニヤと見ながら「それで」と言う。

「お前がわざわざ絡みに行くなんてなんかあるの?」
「……」
「なんか変だよね、あの子」
「……まあな。あの女が金バッジに選ばれるなんておかしい」
「紺野なんて家聞いたことないしね? 俺も調べたけどわかんなかった」
「支援金も明らかに稔の家の方が高い。なのになんで稔じゃなくてあの女が金バッジを持ってるんだ?」
「さあ? 稔に聞いてみないとわかんねぇな。でも、あの子可愛いからこのままでもいいじゃん? 紅一点って感じで」

呑気にそう言って笑う裕之を、馬鹿野郎と睨む。

「わけわかんねぇ女に近寄らせるわけに行かねぇだろ」
「えーいいじゃん。やっぱ男だけだとやってらんねーよ。翔も気に入ってるみたいだし」
「…翔が?」
「うん。なんか今日珍しく学校来て、女に会わせろーってうるさかったよ。涼介が可哀想だった」
「…やっかいなことになりそうだな」

目を細める俺に、裕之が「まぁね」と諦めたように笑った。
さっきまで話していた女の姿を思い出す。
特に変わったことはない。だけどあの雰囲気…、

『私達って似たもの同士だと思うの』

なんとなくそんなことを言っていた。
あの女は、俺みたいに何かを隠していると、そんな気がしてならなかった。





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