ブラベル 導入

夢(ドリーム)設定しおり一覧
当たり前のように傍にいたから、当たり前のようにその関係は壊れないものだと思っていた。
否、いつかは離れるときがくることは心のどこかで悟っていた。でも、別れはこんなに唐突にやってくるものだとは思わなくて。
俺は甘やかしてくれるあの子に甘え通しで、完全に慢心していたのだと、あの子が消えてその事実にようやく気づいたのだ。


「カナメは、玲さんのこと本当に大好きだったんだね」
「好きだよ、今も」

そっか、と微笑ったあの子はどんな気持ちだったのだろう。仮に知ったとしても、俺はきっと断言したのだから、今更考えたってどうにもできないことだけれど。
だって、それほどまでに『お姉さん』への想いは育っていたから。焦がれるなんて甘っちょろい表現じゃ足りないほど、俺は彼女のことしか考えられなかったから。だから。

「いいんじゃないかな。無理に好きって気持ちを断つ必要はないもの」
「……向こうは結婚したのに?」
「そうそう簡単に、飲み込めるような感情じゃないでしょう。だってカナメは、――とてつもなく玲さんを愛していたんだから」

ゆっくりでいいんだよ。そう本気で人を愛せるってことは、とても素敵なことなんだから。

そう言ってくれた彼女に救われたのは事実だった。
不毛だって、報われない恋だって、嘲笑われなかっただけでも本当に嬉しかったんだ。その裏で、あの子は涙を流していたのも知らずに。

「ねえカナメ、豪さんが作ってくれた私のプリン……食べた?」
「ああ、あれ。……美味しかったよ」
「何おーー?!」

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