モーニング・グローリー・フィズ

夢(ドリーム)設定しおり一覧
 目を覚ますと真っ先に五感が認識したのは、真白な部屋。嗅ぎ慣れた消毒液の匂い。それに安堵したような頼城たちの面持ち、声。どれもこれも馴染みのある光景だった。
 だが、ひとつだけ異質な存在が。ぽつんと。何かと縁の深い彼らに混じって、同じくほっとしたような表情で、俺の顔を覗き込んでいた。
「──あんたは、誰だ?」
 俺がそう口走ったときの彼女の表情といったら、それはもう酷いものだった。呼吸することも忘れた様子で、唇を戦慄かせて。さいき、くん、と。かすかな声で俺を呼んだ。
「……すまない。過去に、面識があったのだろうか。覚えが、」訝しく頭を捻れど彼女の名前らしきものは一向に浮かんでこない。眉を顰めて「……すまない、知り合いだっただろうか」と訊ねれば、寝台の傍らに佇んでいた柊が巡くん、まさか、覚えてないの?と瞠目しながら声にする。
 共通の、知り合いか。もしかしたら俺の海馬に深刻なバグが起こったのかもしれない。
- 8 -
小説TOP
ページ:
comment 0