坩堝


――ドサッ。

突然動きを止め、鈍く地面に叩きつけられた“それ”の周囲は紅くてらつく液体で溢れていた。

「即死、つまんね」

街の中でも人気の無い路地裏で、毎夜人間を殺める。
特に深い理由があるわけでは無い、殺したいから殺す。純粋にその行為を楽しんでいるだけである。
人間であればこのようなことを続けているとすぐに捕まってしまうだろう、最近の警察の技術は侮れない。
しかし彼にその力が及ぶことは無い、彼は人間では無く、死神なのだ。

「もう少し遊べる人間を探そう、そうだ、次は若い女がいいな」

そして死神であってもひとりの男であることに変わりは無い。
人間よりも純粋な男性としての欲に従い、次の獲物を探すために移動を開始しようとしたその時。
先程殺害した人間がいるであろう方向からぴちゃり、と水滴を踏むような音が聞こえた。
異変を感知し、急いで振り向くとそこには、ひとりの少女がふらりと立っている。
どこから現れたのか、この現場を見て何を思ったのか、ツーサイドアップに結われた灰桜色の髪をはらりと揺らしながら琥珀色の眼をした少女はゆっくりと口を開いた。

「お兄さん、人を殺したの?」
「ああ」

少女から突然投げつけられた質問に、条件反射的に答えを返す。
一瞬失敗した、とも思ったがどうせこの少女も殺してしまうのだから問題無いだろう、目撃者を生かしておく必要は無い。
良く見るとその少女は、女性と呼ぶにはまだ未熟さが残ってはいるものの全体的に発育が良い。
死神が求めている獲物の条件にぴったり当てはまる、存分に楽しむことができそうだ。
短い沈黙の中で思考を巡らせていると再び少女が口を開く。

「それじゃあ、私のことも殺してほしいな」

死神は自分の耳を疑った。
思考のために逸らしていた眼をもう一度少女に向けてみると、先程のあどけない顔立ちからは想像もできないほどに艶かしく、潤んだ瞳でこちらを見つめている。

「興味、持ってくれた?」

興味を持った、どころの話では無い。
願っても無いこの状況に死神は歓喜した。

「面白い、殺してやるよ、但し条件がある」
「なあに?」

死神はさらに自分が望む方向へと話が進むように条件を付けることにした。
失敗したらこの場で殺してしまえば良い、思い切ったものにしよう。

「お前のその身体で俺を悦ばせろ」
「そんなこと?良いよ、いっぱい気持ちよくシてあげる。でも、それならもっと雰囲気のあるところでしたいな」

想像していたよりもあっさりと条件は承諾された、多少彼女からも条件が付けられたがそのくらいは構わない。

「場所は用意してやろう、交渉成立でいいな?」
「うん、あ、これから死んじゃうんだから、その前に私にもイイことたくさんしてね?」
「お前の望むイイことかは知らないが、その身体で気が済むまで遊ばせて貰おう、ついてこい」
「ふふ、ありがとう」

こうしてこの少女と死神の間には“性”と“死”を交換する歪で奇妙な契約が結ばれることになった。

死神は街から遠く離れた場所にある自宅へと少女を連れ込んだ。

「お邪魔しまあす」

自分を殺させるために自らの身体を弄ばれるような条件を飲んだ少女は
そんなことを微塵も感じさせないほどに能天気な声で挨拶をした。

「シャワーくらいは浴びるんだろう?先に浴びて来い、場所はそこだ。着替えはそこに掛かってるシャツでも使え」
「お兄さん優しいね、うん、使わせてもらう」

少女は死神の言葉に従いシャワーを浴びると、あまり時間をかけずに戻ってきた。

「うーん、このシャツおおきいよお」

大柄とまではいかないが、しっかりとした体系の死神が着ていたワイシャツは、いくら発育の良い彼女でも少し大きすぎるようだ。
下半身はその大きさ故に隠されているが胸元付近はいまにもはだけて中が見えてしまいそうになっている。
すぐにでも襲い掛かってしまいたいところだが、流石に血の付いた状態で始めるのは興が冷める。
大きなシャツを着てきゃっきゃとはしゃいでいる少女を横目に死神も続いてシャワーを浴びることにした。

全身の至るところに付着した血液をシャワーで洗い流し、薄着で部屋へ戻ると少女は既にベッドに座っていた。
ぺたんとした幼い座り方とは裏腹に、少女が纏うその雰囲気はまさに妖艶と呼ぶに相応しいものである。

「お帰りなさい、ねえ、はやくシよ?もう待てないよ」

とろみがあり、耳に入るだけで脳髄が侵されてしまいそうなほどに甘い声で少女は囁く。
それに加え、上気した顔、故意か偶然かはだけているワイシャツ。
不思議と、その姿は今まで見たどの女性よりも魅力的で、死神は当初の殺害するという目的を忘れてしまいそうなほどに魅了されていた。

「ああ、そうだな」

高鳴る鼓動を抑えつつベッドに近づくと、少女はゆっくりと死神を自分のいる方向へと引き込んだ。

「すごくどきどきしてるね、きっと初めてじゃないのに」

流れに身を任せ倒れこんだ死神の耳元に甘い吐息と共に言葉が吹き込まれる。
たったそれだけのことで全身を走る快感、密着した少女の身体がそれをさらに加速させる。

「どうしたの?お兄さんがシてほしいって言ったのに」
「どうもしていない、続けろ」
「ほんとう?じゃあ続ける」

死神はその奇妙な感覚に戸惑いつつも少女の行為を受け入れることにした。
快楽を得られるのであれば細かいことなどどうでも良い、そう自分に言い聞かせて。

「ん、はむっ……」

耳元にあった少女の頭はいつのまにか、首筋へと移動していた。
首筋を唇で愛おしそうにつつき、時に舌を這わせる、死神の全てを快感に浸してしまうかのように。

「くっ……」

思わず声を上げてしまいそうになる死神を見て、少女はクスリと笑う。

「私の唇、気持ちいい?」
「ああ、今までのどの女のものよりもな」
「良かった、だけど私のことも良くシてほしいな?」

少女は着ているワイシャツのボタンに手を伸ばすと、それをひとつ、またひとつと外して行く。
すると、しっとりと湿り気を帯び、ほんのり桜色に染まった白い柔肌が露になった。

「そうだな、それじゃあ俺もお前の身体を楽しませてもらおう」

既に我慢の利かなくなっている死神は早速その胸に手を伸ばそうとした。
すると、少女はその手を優しく掴み、自らの細く、柔らかい首へと誘導する。

「なんのつもりだ?」
「私ね、痛くて苦しいのが好きなの、お兄さんもするのは好きだよね?」

ひどく優しい微笑みを浮かべながら、甘ったるい声で少女は続ける。

「好きなように、壊していいよ」
「っ!」

少女の行為により、既に理性が失われかけていた死神にその言葉はあまりにも鋭利であった。
狂気にも似たその言葉により、欲望の枷は外され一斉に吐き出される。
暴力という行為によって得られる、圧倒的な快楽を求め。

「ふっ、はは、そうか、そりゃいいなぁ!」

誘導されていた死神の手には力が籠もり、ミシミシと少女の首を締め上げる。

「ひぁっ、ぁっ……」

その瞬間、嬌声にも似た声が少女の口から漏れ出す。

「安心しろ、気を失わせたりはしない、これからもっと楽しいことをするんだからな」

骨を圧し折ってしまいそうな程の力で締め上げられている少女の眼は焦点を失い、今にも飛び出してしまいそうなほど目まぐるしく回転している。
やがてその眼の動きも弱まり、全身が痙攣を始めたところですっと首に掛けられていた手を離す。

「気分はどうだよ?」

ひぅっ、こひゅー、ひぅっ、こひゅー、と酸素を求める身体へ空気を巡らせるための呼吸が、少女の意思とは関係無く何度も何度も不気味に繰り返される。

「自分で言っておいてその程度か?」

死神はついさっき言われた言葉を思い出し、それをそのまま少女へと返す。
その言葉が聞こえたのか聞こえてないのか、少しずつ呼吸が整い始めた少女の唇が動いた。

「ぁ……は、きもちぃ、よお」

血の気が引き、紫がかった唇から零れる気が触れているとしか思えない嬌声混じりの言葉。
何人も何十人も殺してきたがこんなことを言った人間は誰一人としていなかった。
通常であれば流石の死神も気味悪がっていたであろう、しかし、今は既に欲望が剥き出しの状態。
その気味の悪さすら、たまらなく愉快だ。

「そうかよ!」

乱暴に少女の腕を掴み上げ、ベッドへと荒々しく叩きつける、その瞬間ゴリュッと響く鈍い音。
ベッドが壊れたのではない、叩きつけられた腕はあらぬ方向へと大きく折られていた。
折れた骨が飛び出している部分の肉はひどく裂かれ、断面からはどくどくと紅い液体を複雑に吐き出している。

「にゃぁっ、ぁっ、んきゅっ!」

そして、未だに上げられる溶けるかような喘ぎ声、その顔は首を絞められる前の上気した肌色を取り戻している。
未成熟なその四肢は快楽のためか激痛のためかもわからぬ痙攣を続ける、その姿は視覚からも聴覚からも死神を侵し正気を破壊して行った。

「苦しめ!苦しめってんだよ!!」

続けて絶叫ともとれる罵声と共に振り上げられた腕は、少女の腹を目掛け勢い良く叩きつけられた。
ドチュッと、肉が、内臓が潰される生々しい音が響き渡る。

「きゃぅぁ!?」

ひとつ、今までの喘ぎと変わらぬトーンで悲鳴のような声をあげつつ、少女の身体はビクンッと大きく跳ねる。

「はぁ、はぁ、ぎ……ぁっは!あっはははは!!」

それを見た死神は、狂気と暴力から得られる快楽によって侵され尽くした脳で笑っていた。
少女は命を落とした、絶命していなければおかしい、見てみろ。
叩きつけられた左腕は拉げ、紅い血肉と、そこから覗く白い骨は剥き出しになっている。
そのうえ腹は叩き潰され、ドス黒く変色している、内部の臓器が潰れているのだろう、血液により止め処なく大きな脈を打っている。

――脈を、打っている?

正気を失っていても、それがおかしいことにはすぐに気づくことができた。
何故死んだ人間が規則的な脈を打っている?心臓が動いている?まさか、生きているとでも言うのか。

「イかされちゃった……」

にゃぅ、という声の直後に言葉が続く。
不安は的中した、少女は生きていた、そして何事も無かったかのように喋りだしている。
破壊された身体を他所に恍惚に満たされたその表情は、死神から快楽を取り除き、恐怖に陥れた。

「お前、何故生きて!?」
「ふふふ、なんででしょお、そんなことより、お兄さんのイイこと気持ち良かったよ」

破壊されることが気持ち良い、そしてこれだけ破壊されても生きている、この少女は何かがおかしい。

「今おかしいとか思った?失礼だなあ、私にとってこれは普通。これが日常であって平常であって通常だよ?」

はぁはぁと吐息が漏れ、発情しているような喋り方をいつまでも続ける。
ベッドに横たえ、腕と胴からとろとろと血を流し続ける少女はひょいっと足だけを器用に使い飛び起きた。

「んぅっ、はぁ、気持ち良すぎておかしくなっちゃいそう」

胴体が潰されているため真っ直ぐに立つことができていないが、そんなことは気にも留めていないようだ。
再び襲ってくる気味の悪さと、食堂を逆流してくる吐き気を堪えることに必死な死神をそのまま見下ろす。

「気持ちよかったけどお兄さん、私汚いのは嫌いなの、こんな壊し方したらぐちゃぐちゃになっちゃうよ?せっかく気持ちよくしてくれるなら、もっと綺麗にシて欲しかったなあ、たとえば……」

こんな、ふうにっ!と、どこからともなく右手に現れた大きなナイフによって、乱雑に切り裂かれた左腕を、根元から綺麗に切断する。

「はあぁっ……」

深く漏れる甘い吐息、美しく、骨ごと真っ直ぐ切断された断面から規則的に吐き出される紅い液体。

「自分で、腕を……」

目の前で一方的に続けられる少女の行為。
それを目の当たりにさせられている死神は、動くことすらできなくなっていた。

「よし、このほうが綺麗綺麗、私今とってもかわいい!」
「かわいいだと?」
「うん、かわいいでしょ、紅くて綺麗な色水みたいな鮮血」
「狂って、やがる」
「狂って無いって言ってるよね?」

突然、ヒュンッ!という空気を切り裂く音と共に死神の目の前を何かが横切った。

「ふぁぅっ、流石にお腹壊されてたらバランス崩しちゃうや、えへへ」

そう笑う少女の瞳は両目とも瞳孔が大きく開かれ、左眼のみ変色して真紅に染まっている。
一体何が起こったのか、死神が理解することができたのはすぐのことだ。

「て、めぇ!」

少女の手にはシンプルで無機質な大鎌が握られていた。
死神の両腕は関節から先が床の上へと転がり落ち、噴水のように血液が吐き出されている。

「ごめんね?腕だけ切ろうとしてたんだけど、お腹潰されちゃってるせいでバランス崩して少しずれちゃった、お腹だけちょっぴり治そーっと」

そう、斬られているのは腕だけではなかった。死神の腹部は大きく切り開かれ、内部が重力に従い外部へとずり落ちている。
一方少女の腹部には黒い霧のようなものが掛かり、一瞬傷口を覆いつくすと、潰されていたはずの腹部はそれがまるで嘘だったかのように綺麗な白色を取り戻していた。
だが、左腕は依然として切断されたままである。

「ぁ、がぁ、お前も、お前も、死神、かよ」
「そうだよ?気づくのおそいね、あんなにいっぱい触りっこしたのに」

ふと思えば、最初に触れられた時のあの異常なまでの快楽、それは魔力によるものだったのだと理解することができた。
しかし、それに気付けるはずも無い、死神はその快楽を求めることに夢中だったのだから。

「ねえねえ、気持ち良い?内臓って外に出されて風に当たるととーってもゾクゾクしちゃうの。少し間違えちゃったけど、こんなに綺麗に斬ってあげたんだからありがたく思ってね」

ありがたく思ってね、その言葉は死神には癪であった。
契約では自分が優位であり、殺すのは、殺されるのは少女のほうだ。

「こ、ろ、してやる」

突然、死神が流した血液が形を変え、少女へと向かって鋭く突き刺さる。

「きゃっ、はっ!そんなこともできるんだあ!」

その血液は少女の残りの手足を貫き、壁へと貼り付けていた。

「く、はは、契約は守ってやる、死ねよ!」

さらに後を追うかのように形成された血液の槍は、動けなくなった少女の眼球目掛け飛んで行く。
その時だった、ぐちゃりと音を立てると同時に、貫かれていたはずの少女の腕が眼球に向けられた血液を押さえつけたのは。
少女の腕には、貫通した槍を無理矢理引きちぎった痕が残っている。
そこから流れ出る少女の血液は凝固した死神の血液と混ざり合い複雑な紅を彩っていた。

「私のお顔を傷つけてイイのは、私が懐いた人だけなんだよお?」

呂律の回っていない、無邪気な喋り方、大きく開かれ鋭く光る瞳はこちらを標的として捕らえている。

「あ、はは、化物かよ、てめえ」

ただでさえ腹を開かれ、両腕を切り落とされたまま最大限の魔力を行使した死神には、抵抗する余力など残っておらず、既に笑うしか無かった。
目の前に存在する全身をところどころ破壊された少女は、歪であり、異形であり、異質であり、そして、禍々しい。

「誰が化物だってさあ!?」

少女を貫いていた血液はいつの間にか液体に戻り、少女への一切の拘束力を失っていた。
空けられた穴からは少女のものとも死神のものともつかぬ、黒く変色した血液が溢れ出している。
死神の顔面を、その黒い血液によって染められた少女の細い脚が蹴り付ける。

「がはっ、っ!」
「にゃは、ふ、あはは、かわいい、かわいいよ、きゃっは!」

甘い笑い声が狂ったように部屋を包む、蹴り付けられた衝撃により弾き飛ばされた死神はその場で浅い呼吸を繰り返している。

「はあ、はあ、きもちい?きもちいよね、それ、きもちいよね」

呼吸が整うよりも早く少女は体制を整え、再び倒れこんだままの死神に近付き蹴り付ける。
腕が繋がっていたであろう場所を、飛び出した臓物を、全身を、何度も、何度も、何度も、喘ぎにも似た笑い声を上げながら。

「んっ、ぁっ、はぁっ、にゅふ、ふふ、きゅふふっ」

殺さぬように、じわじわと、苦痛を与えるように、回数を。
傷を治療しないまま激しく動く少女の全身は、二種類の紅によって不規則に染め上げられる。

「こ、ろせ、は、や、く、ころし、て」

全身のあらゆる部位を複数回に渡り痛めつけられたその姿は、人型どころか生物であることすら認識できるか怪しいまでに潰されていた。
しかし、死神であるが故に死ぬことが出来ない。

「えー?なあにー?きこえにゃーよお?」

ぐりぐりと、額であろう部位をかかとで踏みつける。
こちらを見つめる大きく瞳孔の開かれた瞳は、冷たく光っている。

「ころせ、ころせ、ころして、くれ」

必死に“死”を懇願する死神。
死を纏い、死を生業とする死神が自らの死を望む、なんと滑稽な姿だろうか。

「しかたないなあ、じゃあ、死ね」

にゃっははっ、と笑い、ゴギュッとそのまま踵で額を踏み潰す。

「ぎっ……」

悲鳴と言うにはあまりにも弱い声が、最期に死神の口から漏れ出す。

「あーあ、おわっちゃったあ」

踵を返し、ぺたぺたと先程まで事に及ぼうとしていたベッドへと向かう。
ぴょんっと跳ね、ぺたんっとベッドの上に女の子座りで腰を下ろす。
そのまま、自らの脚を彩っている液体に指を這わせ掬い上げると、それをゆっくりと口に含んだ。

「んぅ、はあ……おいし……」

窓から入り込む月明かりに照らされながら行われるその行為は、不気味な美しさを演出する。
変色した左眼と、大きく開かれていた瞳孔は既に元の色と大きさに戻り、紅から覗く上気していた肌も透き通るような白を取り戻していた。

「自分でシちゃうよりは気持ちイイけど、やっぱり物足りないなあ」

自らの指に舌を這わせつつ、少女はつぶやく。

「でもいいや、任務完了だもん、褒めてもらえるかな、なでなでかな、ぎゅーかな、ふふふ」

任務完了、そう、少女が受けていた依頼は先程額を踏み潰し破壊した死神の抹殺。
規約違反者を殺すために今まで動いていたのだ。

「とりあえず帰ろう、あ、傷治してからじゃないと褒めてもらえる前に怒られちゃう」

全身が傷ついている少女を黒い霧が包み込む、すると再び、その身体は何事も無かったかのように元の姿を取り戻す。

「これでよしっと、いっぱい褒めてもらっちゃお、御褒美楽しみっ」

ルンルンとした雰囲気で、真紅に染まった死神の死体が残るその家から出ると、少女はふわり、と蒼く照らされる月夜へと同化して行った。

- 5 -

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