君はだれ?

※異星人たちの会話のふざけたver


「僕はワリオではありませんよ」

 そのフョードルの言葉に、太宰はその場に立ち止まったまま問う。

「では、君は誰なんだい?」
「僕は――……」

 フョードルは一拍置いてから、答える。

「キノピオです」

 太宰のその端整な顔が、本日二度目の下手くそな絵のように歪んだ。

「君がキノピオだなんてキノピオに謝りたまえ。今すぐ謝りたまえ」
「謝りません」
「ちなみに太宰くんは誰なのかな?」
「え、なんでいるの君」
「おや、結局来たんですか。澁澤くん」
「やはり、私も会話に入りたいと思ってね。さあ、太宰くんも座りたまえ」
「はあ……」

 太宰は面倒臭そうにため息を吐きながら、再び椅子に腰掛けた。

「では、先程の質問を」

 フョードルがテーブルの上で手を組ながら太宰に聞く。

「私は誰なのかって?」

 ふむ……と、しばし思案してから、太宰は口を開く。

「私はゲッソーがいい」
「(あ、水の中で出会すと一番面倒な敵キャラ)」
「(微妙に太宰くんのキャラに合ってはいるが……)」

 ゲッソーとは、ただでさえ難易度が高い水のステージで、不規則な動きをしてプレイヤーに嫌がらせするお邪魔キャラである。

 フョードルと澁澤は妙に納得しつつも……

「太宰くん。彼はメインキャラクターではない」
「ええ、選択肢に含まれていません」
「じゃあ、ピーチ姫かな」
「そこで女性キャラを選ぶところも君らしいな」
「というか、あざといですね」

 そんな会話を繰り広げる彼ら三人組に、周囲の客たちは「レトロゲームの話をしているのか……?」と、首を傾げた。
 だが、それ以上に何故彼らは別々の席で、何故背中合わせに会話をしているのか、もの凄く気になった。

「では、日時は改めてお伝えします」
「今度こそ、決着をつけようではないか」
「我々三人の……」

 三人はそれぞれ席を立ち、それぞれお会計をし、それぞれカフェを後にする。


「「(なんだったんだ、あの三人組……)」」



 ――そして、その日はやってきた。
 決着、それは……


「「マリオカートでいざ勝負!!/です」」


 ヨッシー、キノピオ、ピーチ姫。それぞれがキャラクターを選択し、熱いレース――


「君がここでアイテムを使うことはお見通しなのだよ」
「君がお見通しなのも私は予測している。今のはわざとだ」
「二人とも、そんな加速では僕に追い付けませんよ」


 ……ではなく。史上最高に面倒くさいレースが始まろうとしていた。


- 103 -
*前次#