――私は『杭は出る前に叩く』タイプです!
あの中でこちらが防御や避ける事は想定していても、このタイミングで反撃に出る事は考えていなかったらしい。
「全部一ヶ所……挨拶代わりってわけか」
「まだお互い、探り合いじゃないですか」
真堂先輩の言葉に、笑って答える。
ちなみに、ボールは投げられた誰かのボールを適当に転移させたものだから、自分のボールは使用していない。
「確かに、そっちは俺たちの"個性"がわからねえだろうけど」
そう言ったのは、同じ傑物学園の人だ。その手に持っている石のように固めたボールを……
「任せた」
「任された」
てっきり投げて攻撃でもしてくるのかと思ったら、ロン毛の人に渡した。
「これ、うっかり僕から一抜けすることになるかもだけど、そこは敵が減るってことで大目に見てもらえるとありがたいかな」
ロン毛の人は見た目と裏腹に、キメキメなポーズでボールを投げてきた!
「ボールが地中に!!」
「だからボールを硬化させて……」
「皆下がって!ウチやる!」
耳郎ちゃんが前に出て、耳のフラグを手の甲のアンプに挿す。耳郎ちゃんの新しいサポートアイテムだ。
それを地面に押し付けた瞬間、耳郎ちゃんを中心に亀裂が走る!
「耳郎ちゃんのハートビートファズ!威力上がったね!」
「まあね!」
「おォォ!抉りやがった」
足場が崩れて、何人かが巻き込まれた。
「オイラに来てるう!!」
「粘度、溶解度MAX!アシッドベール!」
それでも止まらず、峰田くんに向かうボールは、すかさず三奈ちゃんの酸が盾になった。
「助かった!イイ技だな!」
「ドロッドロにして、壁を張る防御ワザだよ――」
「隙が生じた。深淵闇躯!」
「言いやすくかっこよくなってる」
「常闇くん!技名良い感じ!」
三奈ちゃんの「アシッドベール」とか、なんで皆そんなかっこいい技名思い付くの!?
「――隙ができたのはそっちもね!」
「!」
亀裂が入った瓦礫の隙間から水が流れて来たと思えば、それは人の形になり、伸ばされた手にはボールが掴まれている。(体が水になる"個性"!?でも……!)
「私のブーツ、踵に電流が流れるコイルが仕込んであるの……!」
「ギャア!」
I・アイランドで発目さんが持ってきてくれた試作品の改良ver。
ボールを持つ手を払うように蹴り上げると、同時に電気が流れた。電圧自体はそんなに高くないけど、水の体で感電した彼女は気絶する。
三ヶ所のターゲットにボールを当てて、これで一人目を倒した事になった。
「反応速度上がったんじゃないか、結月さん!」
「尾白くんっ。今の技名エレキックってどうかな!?」
「うんっ、分かりやすくていいねじゃなくてどんどん来てるぞ!」
数名、崖から飛び降りてくる。迎え撃つように尾白くんは飛び上がり、宙で体を捻って尻尾で撃退した。
「うお!!」
「ぐっ!」
「そこもらった――!」
すぐさま、宙でまともに動けない尾白くんを複数のボールが狙う。当たる前に尾白くんに触れて、一緒にその場を離れた。
「助かったよ、結月さん」
「先に助けられたのは私だから、お互いさまってことで」
前方は耳郎ちゃんの攻撃で手薄になったけど、標的になった雄英は相変わらず四面楚歌の状態。
一瞬の隙を狙われる状況は、チームでカバーするのがベストだ。
『えー現在まだどこも膠着状態……通過0人です……』
元気のない声のアナウンスが演習会場に響き渡る。
『あ、情報が入り次第、私がこちらの放送席から、逐一アナウンスさせられます』
(……。させられるんだ……)
「理世ちゃん、あと一人だし、一番乗りするんじゃない!?」
「本気出せばこのぐらいちょちょいのちょいだよ〜」
透ちゃんの言葉に笑って答えた。そんな透ちゃんは、体に付けたターゲットが主張して、せっかくの透明の"個性"なのに、ちょっと不利になっている。
「初っぱなからターゲット当ててたもんな!」
「いつあいつらに当てたのか、俺も分からなかったぞ」
「俺、結月だけは敵に回したくねえわ」
「フ……言えてるな。厄介なことこの上なし」
「それそれ」
「味方なんだからいいでしょ〜」
砂藤くんと障子くんはともかく。瀬呂くんと常闇くん、頼もしいの間違いじゃない?
それはそうと。開始から数分、探り合いもそこそこにそろそろ……
「――割る!!」
割る――?そんな真堂先輩の声が響いたと思ったら、地鳴りと共に足場が大きく突き上げられた。
「……ッ!!」
安全な場所に飛ぶより先に、飛んでくる瓦礫の対処に迫られる。
最大威力、そう遠くで聞こえた気がした。
その言葉通り、確かに震度が測定できない程の揺れだった。
(真堂先輩の"個性"は地震……揺らす……?)
雄英だけでなく、傑物以外の人たちもどうやら巻き込まれたらしい。
(自分が助かるだけで精一杯だった……)
たった数秒で周囲は崩壊し、皆と分断されただけでなく、人の姿も見えない。
地面が崩れて落ちたのかも……と、崖のような割れ目を覗いてみても、土埃で何も見えない。
試験も大事だけど、皆の安否が心配だ。
とりあえず探しに――「味方の心配より、まずは自分の心配じゃない?」
――!
反射的にテレポートして、今しがた私がいた場所を見る。そこに立っているのは、口元に笑みを浮かべている、
「ケミィ先輩……?」
……気配に全く気づかなかった。後ろから耳元で囁かれて、ぞくりとした背筋に、鳥肌が立っている。
……前にトガヒミコにされたのを思い出すから止めてほしい。
「結月理世ちゃん……。そんなに皆のことが心配?」
「そりゃあ……」
答えつつも感じる違和感に、今度は私が彼女に質問する。
「ケミィ先輩、前に会った時と雰囲気が変わりましたね……?」
雰囲気どころじゃなくて、180度全くの別人レベルだ。
初めて会った時は、テンション高めのギャルだったのに、目の前にいるケミィ先輩はミステリアスで、口調も全然違う。
「……困ったな。もっとお喋りしたかったのに、知り合いだったんだ……」
「……??」
「バイバイ」
「あっ……!」
消えちゃった――。正確には消えたと思うほどに、素早くケミィ先輩はどこかへ行ってしまった。
(なんだったの……)
気になるけど、今は大事な試験中。
私はやるべきことをしなくちゃ!
(……さて)
数人の気配に、そちらに顔を向ける。
「一人でずいぶん余裕そうね」
「よォ、テレポートガールちゃん。あんたの"個性"の弱点は知ってるぜ?」
「"個性"は相性ですからね。僕の"個性"はあなたの"個性"と相性最高ですよ。もちろん、あなたにとっては最悪で……って」
――いない!!?
(……皆が見つからない。混戦してるし、潜めているか、もうこの場から離れたのか)
心配はあるけど、共に訓練してきて実力も分かっている。通過も一気にし始めたみたいだし、私もそろそろ……
あ!
「天哉くん!」
隠れながらサッサッと、まるで忍者のように移動している天哉くんを見つけ、すぐさまそちらにテレポートした。
「!結月くん!良かった、君も無事だったか!」
「君もってことは、他のみんなも無事なの?天哉くん一人みたいだけど…………え、クラスの補助をしてる?この中を探し回って?」
「ウム」
驚きに同じことを繰り返すと、天哉くんは当然のように頷く。バラバラになったA組を、ずっと捜索していたらしい。
「耳郎くん、障子くん、蛙吹くん、八百万くんは無事を確認済みだ。そちらは八百万くんにまかせてある」
四人の無事を知って安心したけど、それはそうと……
「もし、クラスの誰かが一人で孤立しているなら、僕は力になりたい」
――クラス委員長としても当然の勤めさ。
そう天哉くんは迷いなく言った。天哉くんがどこまでも委員長なのは、よく知っている。
「天哉くん……」
フルアーマーで、その表情は見えない。
「先着順で合格数も増えてきてる。焦ってきたところを狙おうとしている人もいるだろうし、終盤になるほど、一気に残席数が減ると思う」
見えなくても、まっすぐと目を合わせているつもりで続けて話す。
「A組がどれだけ残ってるかも分からない。天哉くんのそういう所は尊敬してるけど、状況から考えて、その行動は非合理的過ぎるよ。それで、君が落ちたら本末転倒でしょう」
時間制限ならまだしも。先着順という不確定要素で、その行動を取るにはリスクが高過ぎる。
この試験にチームアップが鍵だけど、それは通過する為の手段であって、それぞれが意思を持って試験を挑んでいる。
最後は、自分の力で取りにいくしかない。
『さて立て続けに3名通過。現在82名となり、残席はあと18名ー!』
そうこう話しているうちに、アナウンスが状況を告げ、その感覚もだんだん短くなっている。
「みんなの実力を信じて、そろそろ本気で取りにいくべきだと私は思うよ」
こっちがターゲットを取られて、脱落しないという補償もない。真堂先輩のような実力者は他にもいるはず。
「……確かに、結月くんが言っていることは試験において正しいな」
天哉くんもまた、まっすぐと私を見つめて話してくれていると分かった。
「だが、僕の正しさは、自分がありたいヒーローの姿にあるんだ。兄さんならそうすると思うし、僕自身もそうするべきだと思う」
「…………そっか」
「結月くんは心配してくれてるのだな。大丈夫さ!捜索を続けながら、取りにいく。僕だって仮免を取りたいからな」
胸を張るように天哉くんは言った。
「結月くんは気にせず先に通過してくれ。君ならすぐに条件達成できるだろう」
では!――そう言って、天哉くんは走り去った。その後ろ姿を眺める。
実直を通り越して愚直。
これで本当に落ちたら、どうするんだろう。
(それでも、天哉くんは悔いはないんだろうなぁ……)
世の中、真面目な人ほど損をするという。
「――……なんだっ!?急に地面がツルツル滑るぞ……!」
「俺は物質の性質を変える"個性"なんだ。雄英生が一人で行動してたら格好の獲物だよ」
「くっ……今度は足が沈む……!」
……でも。
「雄英生なら、ここにもう一人いますよ!」
「っ結月くん!」
私は、真面目で実直な天哉くんみたいな人ほど報われるべきだと思う。
パッとその場に現れて、沈みかけている天哉くんの肩に触れて、はい回収。
そのまま一緒に、宙にテレポートする。
「私も付き合うよ、委員長」
「結月くん……」
「天哉くんに落ちてほしくないからね。私がいれば、その確率はぐんと下がるしょ?」
「……っっ」
さすがに絶対に落とさせない――とは言い切れないけど。状況と通過人数を見極めて、ぎりぎりまで天哉くんの「すべきこと」を手伝う。
私の理想手帳の、最初のページにも書いてある。
"すべきことをすべき"、だ。
「でも、もう私が無理だと判断したら、すぐにターゲットを取りにいってもらうからね」
「ああ……っ!結月くん、ありがとう……!いや、この言葉だけでは足りないな。だが、この感動を言葉にするには〜〜!」
「天哉くんッ腕振り回さないで!」
コントロールが鈍って落ちる……!すまないとすぐに謝る天哉くんに、自然と笑ってしまった。
――天哉くんと共に、そのまま上空から皆を探す。
でも、下は乱戦模様でよく分からない。
「天哉くん、下に降りて探そう。皆は隠れて好機を窺っているかも知れないし」
「うん、そうだな」
テレポートしようと思った矢先、鋭い風が横切った。
髪が数本切れて舞ったのが目に映る。
かまいたちのような――これは攻撃。放った人物は、常闇くんとはまた違う鳥人間のような人だった。
「空中戦は苦手なんだろ?」
翼をはためかせ、宙に止まったまま、その人はにやりと笑った。……本っ当、皆よく観察しているよね。
(……あ、でも。これ良い機会かも)
「ごめん、天哉くん。私、この人と勝負したい。苦手なものはなるべく克服したいから」
宙を落ちながら天哉くんに話す。なかなか空中戦をする機会はないから、経験を積める良いチャンスだ。
「結月くん……。ああ、もちろんだ!お互い、必ず一次試験を通過しよう!」
ぐっと親指を立てる天哉くんに「ありがとう」と告げて「健闘を祈るぞ!」天哉くんだけを地面にテレポートさせた。
「どこの誰か存じませんが、正解です。空中戦、ご教授願いますか?」
「……いいだろう。痛い授業料になるがな」
経験だけでなく、三つのターゲットも私がもらう。
「ありがとうございます。でも私、痛い目みるつもりはこれっぽちもないすです――!」
***
『ハイ、え――ここで一気に8名通過来ました――!残席は11名です』
「A組は……」
「あと10人……これ……全員はもうムリかなぁ……」
「理世ちゃん、飯田くん……みんな……」
「(結月さん……。まさか、あのとき怪我でも……。いや、結月さんならきっと何か理由が……――)」
***
「……体育祭の時とは能力が大幅に上がっているな。甘く見てたよ」
「先輩も。私のこの"個性"で、ターゲットが一つでも取られるとは思っていませんでしたから」
自身の光っているターゲットを見ながら。
「でも、すごく勉強になりました。立ち回りとか動きとか、少し分かった気がします。その鷹の目、便利ですね」
「……もう時間がないぞ。さあ、とどめを刺せ」
笑ってそんな冗談を言う先輩に、私も笑みをこぼす。
――空中の熱戦の末、最後はビルの壁に張り付けさせてもらった。
壁に沿うようにテレポートさせると同時に、コスチュームの衣服をタガーでダーツのように刺し止めて。
空間転移と座標移動の同時発動も出来るようになってきた気がする。
最後のターゲットにボールを当てれば、これで一次通過――
「……!」
その時、視界に映ったのは……。
(天哉くん。私も、すべきことをしようと思う)
「すみません、先輩。まだ、私に出来ることがあるかも知れないので、仲間の所へ行ってきます!」
「あっ、おい……!」
――えっ。俺、ずっとこのまま?
キラキラと眩しい光の柱を目指して飛ぶ。
あれは、青山くんのネビルレーザーだ。
少なくともまだ、青山くんは残っているということ。
……青山くんだけじゃなかった。
「ハトォ!?」
「何だ!?」
「その場で旋回を続けるのです!!」
――口田くん。
「深淵闇躯……黒き腕の暗々裏!」
――常闇くん。(その技名もかっこいい……!)
「なに!?なんだコレ……」
「!?」
「取れる奴から取ってけえ!!!」
「他に取られる前に!!」
「ここが正念場だぞ!!」
――峰田くん、尾白くん、砂藤くん。
「皆ァ!!!!」
天哉くんの姿もそこにあった。
「集光屈折ハイチーズ!」
「った、まぶしっ……」
透ちゃんはすごい新技を披露だ。
「お先ねー!!」
「俺も!」
『2名通過!!残りは9名!!』
尾白くんと透ちゃんが通過して、残り9名……ぎりぎりいける!
「お……俺たちも便乗するぞ!」
「おう!今のうちに……」
「はーい、横取りは禁止〜」
「って!?」
横から奪おうとした人たちをタッチして、ひっくり返すようにテレポートさせた。
「結月くん!?」
「結月さんまで……」
驚く天哉くんと青山くんの元に飛ぶ。
「天哉くんの考えてた通りだったね。みんながいた」
「いや、それより君もどうして……」
「勝負には勝ったよ?でも、青山くんのレーザーが見えたから来ちゃった」
「そんな軽いノリなのか!?」
「――そうそう!」
その明るい声は、派手に手から酸を出す三奈ちゃんだ。
「みーんな焦って大雑把んなってきて、敵も味方もぐっちゃぐちゃで周り見えなかったんだよ――!」
そして、青山くんに向かってグッと親指を立てる。
「青山のおへそレーザー見えたから!また集まれたねえ!」
無防備な状態で、自分が狙われる可能性の方が遥かに高いのに。青山くんがその行動を取った理由は、きっと――。
『7』
「ほら、二人もちゃちゃっと今のうちに通過しちゃおう!」
先程ひっくり返した一人にボールをタッチさせ、これで一次試験通過!
『5名!続々と!この最終盤で一丸となった雄英が!コンボを決めて通っていく!』
三奈ちゃん、常闇くん、峰田くん、口田くん。ここにいない皆は全員通過したと信じて――
『そして……』
天哉くんと青山くんは、同時にターゲットにボールを当てた。
『0名!』
アナウンスが告げるのは、試験終了の合図。
『100人!!今埋まり!!終了!です!ッハ――!!』
「やったね!結月!」
「一次通過だね、三奈ちゃん!」
「てか、結月がまだ残ってたのに驚きなんだけど!」
「あはは〜」
「僕のキラメキは止まらないってことだよね……☆」
「ああ!多分!わからんが!!」
『これより、残念ながら脱落してしまった皆さんの撤収に移ります』
ギリギリの橋だったけど、何はともあれ一次試験を突破した。
「途中、変な"個性"の人に会ってさ〜〜」
「なんだったんだろうな、あれ……」
「変な"個性"?」
「こう、眉毛をぶっとくされて……」
「??」
「こち亀みたいな……」
「えっナニソレ」
最後に残った全員と(謎の"個性"の話をしながら)晴れやかな顔で控室へ向かう。(付けてるターゲットから『早よ』と急かされる)
「おォオオ〜〜〜〜……」
控室に入ると、出迎えてくれたのは……
「っしゃああああ!!!」
「スゲェ!!こんなんスゲェよ!」
「雄英全員、一次通っちゃったあ!!!」
A組の皆が、全員が一次突破したと知り、私も一緒に喜んだ。
あの激戦で本当にすごい!
はしゃぐ輪の中で、でっくんと目が合い、その右頬に小さな切り傷ができているのに気づいた。
自分の右頬を指差すように合図すると、でっくんは眉を下げて笑う。(小さな傷でよかったけど)
「理世さん!遅いですから心配してましたわ!」
「そうそう、理世がいないとか何かあったとしか思えないからさ」
「天哉くんに会って、途中まで一緒に行動してたんだけど、ちょっと空中戦のご教授してもらって……」
「空中戦?」
不思議そうに二人は首を傾げた。(……あれ。そういえばあの鳥の先輩、無事回収されたかな……?)
「ターゲット外すキーなら奥にあるぜ。ボールバッグと一緒に返却棚に戻せってさ」
「あ、私自分で外しちゃった」
「理世ちゃんの"個性"の前じゃ、最新のハイテクも意味をなさないわね」
切島くんが教えてくれた返却棚に戻しに行くと、夜嵐くんたち士傑高校の人たちの姿が目に入った。
「肉倉先輩、落ちちゃったんスか!!!!」へえ!
大きな夜嵐くんの声に、ばっちり会話が聞こえる。
「先走って単独行動するからあの劇場型男!おまえらもだ!1年の夜嵐はともかく……ケミィ!ダメよ!」声デカイわ
「ハァイ」
興味なさそうにケミィ先輩が返事をした。
(ケミィ先輩……。さっきはなんだったんだろう……)
「結月くん。飲み物や軽食もあるみたいだぞ」
「あ、本当だ。嬉しいねっ。天哉くん、オレンジジュースもあるよ〜!」
「次の試験に備えて、しっかりと補給せねば」
よーし、私も脳へのエネルギーに、糖分補給をたっぷりするぞ!
「〜♪」
「え、結月……?ガムシロ何個入れんの!?」
「私、頭脳派だから、いっぱい糖分取ってるの」
驚愕している上鳴くんに、さも当然と答える。普段はここまで入れないけどね。
「爆豪くんの顔があかんことになっとる……!」
「人間が飲むモンじゃねえだろソレ……」
「爆豪くんには言われたくな〜い」
爆豪くんの激辛好きも大概だ。ガムシロたっぷりアイスティーをぐいっと飲んだ。
『えー100人の皆さん、これご覧ください』
しばしの休憩を取っていると……引き続き目良さんのアナウンスと共に、壁についてるモニターにパッと映像が映った。
「フィールドだ」
「なんだろね……」
「次の試験の内容?」
でっくんとお茶子ちゃんと並んで、モニターを眺める。映し出されたのは、先程のフィールドのビル街で…………
!?
ビルが次々と爆発し、あっという間に壊滅状態になった。
――何故!!
せっかくのフィールドを破壊して、目良さんの業務がまた増えるんじゃ……。
『次の試験でラストになります!皆さんにはこれからこの被災現場で、バイスタンダーとして、救助演習を行ってもらいます』
「救助……!」
試験内容にきっと組み込まれていると思っていた救助演習だ。
それにしても、この光景は……。
(神野区、みたい……)
まだ復旧作業が続いている街の光景と重なり、思いがけず胸がズキリと痛んだ。