ビック3

 二学期入っての最初のヒーロー基礎学は、相澤先生が担当で、場所はUSJの倒壊エリアだった。

「今日の授業は仮免試験の復習をする。二次試験と同じような内容で、各々自分の減点ポイントを克服するつもりで行え」

(減点ポイントが特になかった私は、伸ばす方向でいいのかな?)

「まずヒーロー役とヴィラン役に分かれて、制限時間内にヒーローはこの要救助者人形を救出して救護所に届ける」
「「(人形、こわっ……!)」」

 もっとマシな人形はなかったの……。

ヴィラン役はヒーローの救助を邪魔をし、救護所の制圧が目的。なおヒーロー役とヴィラン役は交代して二回やる」

 まずはランダムに18人をヒーローとヴィランに分けるらしい。

 ……あれ、私は?

「ちょうど一人余るしな。満点を取った結月は、特別にヒーロー役かヴィラン役どっちがいいか決めていいよ」

 相澤先生からのサプライズ……?

 二回とも同じ役をしてもいいし、チームのメンバーを見てどっちに入るか決めてもいいという。

 だったら……

「両方ともヴィラン役で、ヒーローたちの邪魔を徹底的にしたいと思います」
「……。よし」
「「(うわぁ…………)」」

 そっちの方が楽しそう……というのもあるけど、ヴィランになったらまた違う視点から見られるかなって……。救助の穴とか。

「ということで、張り切ってヴィラン役をやりたいと思うんだ。頑張ろうね、百ちん!」
「そうですわね……(理世さん、うきうきが隠しきれてませんわ!)」


 ***


「今日のヒーロー基礎学、大変だったなー」
「でも、試験を踏まえてだからちょっと動きとか上手くできたような気がする!」
「やっぱ、協力って大事だよな!」
「(今日からヒーロー基礎学が始まったんだよな!?あああ、気になるあああ……!!)」

 すごい、でっくんの顔が阿鼻叫喚している。あと謹慎二日あるけど、大丈夫かな……。


 ***


「謹慎くん、爆豪くんだけになっちゃったね?」
「うっせ!明日には復帰すんから覚悟しろよてめェ!」

 なんの覚悟?

 二日経過して、爆豪くんより一足先に、でっくんが復帰した。

「ご迷惑おかけしました!!」
「デクくん、オツトメごくろうさま!!」

 オツトメ……!

「オツトメって……つか何、息巻いてんの?」
「張り切ってるんだよ〜」

 授業内容や、ヒーロー基礎学の話が耳に入る度にダメージ受けてたもんねぇ、でっくん。

「飯田くん!!ごめんね!!!失望させてしまって!!」
「うむ……反省してくれればいいが……しかし、どうした?」
「この三日間でついた差を取り戻すんだ!」
「あ、良いな。そういうの好き、俺!」

 予鈴に全員が席に着き、相澤先生が「おはよう」と、気だるげに入って来た。

 今朝のSHRが始まる。

「じゃ緑谷も戻ったところで、本格的にインターンの話をしていこう」

 気になっていたインターンの話だ!

「入っておいで」

 続いてそう言った相澤先生に、ドアへと注目が集まる。ゲストが……?

「職場体験とどういう違いがあるのか。直に経験している人間から話してもらう。多忙な中、都合を合わせてくれたんだ。心して聞くように」

 ドアが開いて、入って来た人たちに「あ」と、思わず声がもした。

「現雄英生の中でも君臨する3年生3名――……」

 天喰先輩……!だけでなく、あの不思議ちゃんの先輩と、ゴミ捨て場の……!!

「通称、ビッグ3の皆だ」

 ――雄英生のトップ……ビッグ3……!!

(噂では聞いてたけど……。あの三人、それぞれすごい人だったんだ)

 ……天喰先輩、そんなすごい人なのに、なんであんなに自信なさげなんだろう。

「あの人たちが……的な人がいるとは聞いてたけど……!」
「びっぐすり!」
「めっちゃキレーな人いるし、そんな感じには見えねー……な?」

 耳郎ちゃん、三奈ちゃん、上鳴くんの声から始まり、ビッグ3の登場に教室内がざわめく。

「じゃ、手短に自己紹介よろしいか?天喰から」
(天喰先輩……!自己紹介頑張って!)

 ギンッ

「(一瞥だけでこの迫力――!!おおおおお!!)」

 天喰先輩の眼孔が鋭くなり、皆がビクッとなったのが分かった。教室内に、張り詰めた空気が流れる。

「駄目だミリオ……波動さん……。ジャガイモだと思って臨んでも……頭部以外が人間のままで依然人間しか見えない」

 天喰先輩、震えてる……!

「どうしたらいい。言葉が……出てこない」
「!?」
「頭が真っ白だ。……辛いっ……!」

 先輩はくるりと回って、黒板とお見合いした。

「帰りたい……!」
「「(ええ……!?)」」
(あちゃ〜)
「雄英……ヒーロー科のトップ……ですよね……」

 前の席の尾白くんが呆然と言う。天喰先輩は深刻なネガティブだから、大勢の前で話すのは、ちょっとハードルが高かったようだ。

「……知らない人たちの前で話すなんて、俺には無理だ…………はっ!」


 ――いや、一人だけ知ってる人がいる!


(……いやいやいやいや、待って天喰先輩)


「(そうだ……このクラスには結月さんがいる!結月さんを見ていればいいんだ!!)」


 ギンッ


 見すぎ――!見すぎだから天喰先輩――!――!――!!(私穴開くコレ!)


「……おい。あいつ、今度は結月のことすげえ見てねえか」
「き、気のせいじゃないかなぁ……?」
「いや、気のせいじゃねえ!絶対お前見てる!何した?」

 何もしていないよ〜焦凍くん!

 天喰先輩のじっと見てくる眼力に堪えられず、頭を抱えて机に伏せた。

「あ、聞いて天喰くん!そういうのノミの心臓って言うんだって!ね!人間なのにね!不思議!」

 不思議ちゃんの先輩こと波動先輩の、空気を読まない明るい声が響く。

「彼はノミの天喰環。それで私が波動ねじれ。今日は"校外活動インターン"について、皆にお話して欲しいと頼まれて来ました」
(ノミの……)

 意外にちゃんとした自己紹介するんだ――と、思ったら違った。

「けどしかし、ねえねえところで君は何でマスクを?風邪?オシャレ?」
「!」
「これは昔に……」

 障子くんに絡んだと思ったら、すぐさまその視線が焦凍くんの方へ。

「あら、あとあなた轟くんだよね!?ね!?何でそんなところを火傷したの!?」
「……!?それは――……」
「波動先輩、グイグイいき過ぎです〜」

 悪気はないんだろうけど……悪気がない分タチが悪いという言葉もあるわけで。

「あ、結月さん!そうそう、私聞きたかったの!ヴィランに攫われて大丈夫だった!?怖かった?泣いちゃった?」

 ……。可愛い顔していても、許されないことも時にはある!

「私、泣いてません!(泣いたけど)」
「結月、落ち着け。たぶん向こうは悪気はねえ」
「きっと心配されたんですわ。先輩なりに……」

 思わず椅子なら立ち上がろうとしたら、前から百ちん、斜めから焦凍くんに宥められた。
 大人しく座り直す。頬を膨らませた。

(やっぱり苦手だぁ、不思議ちゃん先輩)

 そんな波動先輩は「芦戸さんはその角折れちゃったら生えてくる?動くの!?ね?」と、三奈ちゃんに興味が移っている。

「峰田くんのボールみたいなのは髪の毛?散髪はどうやるの!?蛙吹さんはアマガエル?ヒキガエルじゃないよね?どの子も見んな気になるところばかり!不思議」

 どうやら、目に映るものすべてが波動先輩の好奇心の対象らしい……。

「天然っぽーい。かわいー」
(いや、上鳴くんは可愛いかったら誰でもいいんでしょ)
「幼稚園児みたいだ」
(三奈ちゃん、それだ!)

「オイラの玉が気になるってちょっとちょっと――!!?セクハラですって先パハァイ!!」
「違うよ」
(引くよ、峰田くん……)
「ねえねえ、尾白くんは尻尾で体を支えられる?ねえねえ答えて気になるの」
「合理性に欠くね?」

 ついに相澤先生がしびれを切らした。背中から、ひしひし怒りのオーラを感じる……。

「イレイザーヘッド、安心して下さい!!大トリは俺なんだよね!」

 そう言ったのは、あのゴミ捨て場の先輩だ。ぐっと親指を立てているけど、あの出会いから私は不安でならない。

「前途――!!?」
「!?」

 ズイっとこちらに体を傾け、聞き耳を立ている先輩。前途……?

 シー……ン

「多難ー!っつってね!よォしツカミは大失敗だ」
「相澤先生ー!授業が合理的に進んでませーん!」

 真面目にこっちはインターンの話をずっと待っているんですが!

「手厳しい反応サンキュー!」
「さ、さすが結月さんだ……ミリオにさらなる追い討ちをかけるとは……」

 天喰先輩、それ褒めてないですよね?

「……3人とも変だよな。ビッグ3という割には……なんかさ……」
「風格が感じられん……」

 皆にもじわじわ不信感が伝わっているらしい。どうするのこの空気。

「まァ何が何やらって顔してるよね。必修てわけでもない校外活動インターンの説明に、突如現れた3年生だ。そりゃわけもないよね」

 それ以前の問題だと思うけど……ゴミ捨て場の先輩は、急に真剣な顔付きになった。

「1年から仮免取得……だよね、フム。今年の1年生ってすごく……元気があるよね……」

 何か思案するように先輩は呟く。……?

「そうだねェ……何やらスベリ倒してしまったようだし……」
「ミリオ!?」
「君たち、まとめて俺と戦ってみようよ!!」

 !?

「「え……ええ〜〜!?」」
「俺たちの"経験"をその身で経験した方が合理的でしょう!?どうでしょうね、イレイザーヘッド!」
「…………」

 その理屈は分からなくはないけど、相澤先生は少し考えた後……

「好きにしな」

 やがてそう口に出した。


 ……――やって来たのは、体育館γ。
 全員、体操服に着替えた。


「天喰先輩、さっきは見すぎですよ。穴が開くかと思いましたよ」

 先輩、眼力すごいから。

「す、すまない……。結月さんしかあの場に知り合いがいなかったからつい……」

 壁に額をつける天喰先輩は、控えめにこちらに顔を向けた。私も壁へ背中を預け、先輩の隣に立つ。

「でも、天喰先輩ってビック3だったんですね。体操服に着替えたってことは、先輩も相手してくれるんですか?」
「いや……俺の出番はないだろう」
「……ふぅん?」
「俺はこのやり方は賛成じゃない……」

 初めて、先輩が自分の意見を口にしたのを聞いた気がする。
 それは単純にやり方が気に入らないんじゃなくて、生徒たち私たちの身を案じているみたいだ。

 それほど、通形先輩は実力者だと。

「私、天喰先輩とも手合わせしたかったですよ」

 最後にそう笑顔で言って、皆の元へ戻った。

「結月。お前、三年とも交友関係あるのかよ」
「天喰先輩はたまたまインターン中に、ヒーローと一緒に地元に来て知り合ったの」

 驚いている砂藤くんの質問に返す。その前に爆豪くんのせいで顔だけは合わせてたけど。

「天喰先輩のインターン先、ファットガムの所なんだよ」
「へぇ、ファットガム……」

 切島くんが天喰先輩に視線を向けながら呟いた。……先輩がこちらに顔を向ける事はなさそう。

「あれは何やってんの……?」
「天喰先輩、人見知りだから」
「人見知りってレベルじゃねーぞ」

 峰田くんがつっこんだ。先輩は重度がつく人見知りだから……。

「あの……マジすか」
「マジだよね!」

 準備運動している通形先輩に、再確認するように瀬呂くんが声をかけた。
 
「ミリオ……やめた方がいい」

 壁に向かったまま、天喰先輩が口を開く。

「形式的に『こういう具合でとても有意義です』と、語るだけで充分だ」
「遠」
「皆が皆、上昇志向に満ちているわけじゃない。立ち直れなくなる子が出てはいけない」

 そんなに通形先輩との実力差があるなら、逆に興味が湧いてくるな。
 たった二年の差が大きいのか、インターンの経験が大きいのか、先輩の素の実力か……その全部か。

「あ、聞いて、知ってる。昔、挫折しちゃってヒーロー諦めちゃって問題起こしちゃった子がいたんだよ、知ってた!?大変だよねえ、通形。ちゃんと考えないと辛いよ。これは辛いよー」

 なかなか重い話を明るく話す波動先輩だ。

「おやめください」

 三奈ちゃんは先輩に角をいじられ、堪えていた。三奈ちゃんの角は動くんだと、私も初めて知った。(堪えてる三奈ちゃん、可愛い)

「待って下さい……我々はハンデありとはいえ、プロとも戦っている」
「そして、ヴィランとの戦いも経験しています!」

 常闇くんの言葉に切島くんも続き、他の皆も同意だというように頷く。

「そんな心配される程、俺らザコに見えますか……?」
「うん、いつどっから来てもいいよね。一番手は誰だ!?」

 通形先輩は気にも止めず、自信満々にそう言った。

「おれ……」
「僕……行きます!」

 切島くんの言葉を遮って言ったのは、

「意外な緑谷!!」

 やる気に満ち溢れているでっくんだ。

「問題児!!いいね、君やっぱり元気があるなあ!」
(すっかりでっくんが問題児扱いに……)
「デクくん……差を取り戻そうとしとるんやね……!」
「俺たちも緑谷くんに遅れを取らぬよういくぞ!」

 天哉くんの言葉に「おお!」と、元気に声が揃う。でっくんを中心に気合いを入れるA組……そうでなくっちゃ!

 そこで、私は挙手をした。さらに場を盛り上げようかなって思って。

「通形先輩、一つよろしいでしょうか?」
「一つでも二つでもいいぜ、結月さん!」
「私が勝ったら、ビック3の名をもらっていいですか?」
「「……!?」」

 皆の驚愕の視線が集まる。だって、勝負するって事はそういうことじゃない?

「自信満々にもほどがあるだろ!?」
「言動がもうビック……!」
「やるからには勝つ気でいくよ、私」

 プロヒーローだったらさすがに身の程わきまえるけど、同じ高校生でそんなに実力差があるなんて、認めるのは癪だ。

「それにその方がやる気出るでしょ?峰田くん、ビック3になったら超モテるよ」

 峰田くんは「超モテる……」脳内でありありと想像しているらしい。

「ビック3の座はオイラがもらったあぁぁーーー!!!」
「結月に騙されんな峰田!」
「でも、結月さんの言ってること……僕もわかる」

 口を開くでっくんのその表情は、

「僕だって負ける気持ちで挑まない!」

 体育祭の焦凍くんの宣戦布告に答えた時のように勇ましい。

「そうだよな……!よく言ったぜ緑谷!近接隊は一斉に囲んだろぜ!!」
「アタシもビッグ3になりたーい!」
「よっしゃ先輩、そいじゃあご指導ぉー」


 全員、攻撃体勢を取って――


「「よろしくお願いしまーっす!!」」


 さあ、先輩は避ける?迎え撃つ?どっち……

「あ――!!」

 ななっ、服がぁ……!?

「今、服が落ちたぞ!」
「ああ失礼。調整が難しくてね!」

 何故落ちた!?先輩は何て事ないようにいそいそと下を穿くけど、大問題だよ!!
 こっちの動揺を誘う作戦……ではなさそう。結果的に皆の足は止まったけど。(いや……)

 一人、でっくんが飛び出している。

「顔面かよ」

 でっくんの足が、先輩をすり抜けた……!?

 通形先輩の"個性"はすり抜け……?それより、あの服が脱げた一瞬で「すり抜ける」と、見抜いたでっくんがすごい……!

 そう判断しなければ、でっくんの性格からして大胆に顔面なんかに蹴りを入れなかったはずだ。
 すぐさまそこに、遠距離系の"個性"による、怒濤の攻撃が撃ち込まれた。

「いないぞ!!」
「地面の中に沈んだんだよ!」

 天哉くんの言葉に叫ぶ。上空にテレポートして、観察していたけど、当たる前に先輩は地面に沈んだ。
 この場合は地面にすり抜けたが正しいかもだけど……

「まずは遠距離持ちだよね!!」

 ……!?いつの間に後ろに移動!?

「ワープした!!」
「すり抜けるだけじゃねえのか!?どんな強個性だよ!」

 たぶんワープじゃない。空間を越えるようなら、黒霧の時のような違和感を感じるはずだから。っていうか、速っ!

「おまえらいい機会だ。しっかりもんでもらえ、その人……」

 相澤先生がこちらに向かって声を張り上げる。

「遠形ミリオは俺の知る限り。最もNo.1に近い男だぞ――プロも含めてな」

 …………それ、本当ですか!?

「あとは、近接主体ばかりだよね」

 数秒で遠距離組が壊滅……。最もNo.1に近いかはともかく。これはちょっと先輩のことを甘く見ていたかも知れない。

「何したのか、さっぱりわかんねえ!!」
「すり抜けるだけでも強ェのに……ワープとか……!それってもう……」
「無敵じゃないすか!」
「よせやい!」

 皆の驚愕の声に、先輩は勇ましく構えて答えた。

「無敵ってことはないでしょ。"個性"は身体能力。何か絶対に弱点はあるはず」
「結月くん……!」
「つーか、どこいたよ」

 "個性"は身体能力。完璧なんてものは存在しない――それはよく、太宰さんが言っている言葉だ。
 あの"無効化"という驚異の"個性"を持つ太宰さんだって、触れる事ができなければ無効化できない、という欠点がある。
 相手の"個性"が分からないうちは、私たちは数少ない情報から勝つ戦法を生み出さないといけない。それも、戦いながら。

「それに……何かからくりがあると思うよ!」

 でっくんがぶつぶつと分析したことを話す。

「「すり抜け」の応用でワープしてるのか「ワープ」の応用ですり抜けてるのか……」
「すり抜けの方だと思う。ワープじゃないのはテレポーターの私が言うから確か。地面から出る時に、弾かれているように飛び出しているから、それがワープに見えるのかも」
「……そうか。飛び出す瞬間どうにかできれば……。直接攻撃されてるわけだから、カウンター狙いでいけば、こっちも触れられる時があるハズ……!」

 こっちを見て話すでっくんの言葉に、大きく頷く。

「何してるか、わかんないならわかってる範囲から仮説を立てて、とにかく勝ち筋を探っていこう!」

 次にでっくんは皆に向かって言えば、それに答えるように力強い声が返ってきた。

「オオ!サンキュー!謹慎明け緑谷、スゲー良い!」
「いつにも増してキレキレだねっ」
「探ってみなよ!」

 話を聞いていた先輩が、いきなりこっちに走り出す。

「ひえっ!?」
「!!沈んだ」

 沈むのは良いけど、服脱げるのどうにかならないの!?(波動先輩が言ってた「すっぽんぽん」ってこれのことかぁ――)

 でっくんのは蹴りは再びすり抜ける。

「だが必殺!!!」
「うっ!!?」
「ブラインドタッチ目潰し!!」
(すり抜ける指で目潰し!?防衛本能で嫌でも目を瞑るでしょ!)

 えぐい攻撃仕掛けるなぁ!でも、その後でっくんに攻撃を仕掛ける瞬間、透過を解除するはず。

 そこを、私が狙う――!

「ほとんどがそうやってカウンターを画策するよね!」
「……っ!(一部分だけ透過できると予想はしてたけど、この人、見た目以上に器用だ!)」

 私の蹴りもすり抜け……

「ならば当然、そいつを狩る訓練!するさ!!」

 先輩と目があって、拳が迫る前にテレポートした。こっちだって、この"個性"で簡単には攻撃を受けない!

「緑谷くん!?」

 天哉くんの声が聞こえて、後に続くのは悲鳴だけ。

 ………………。

(どうしよう……一人になっちゃった)

 助けに向かう隙もなく、一気に先輩は全員を伸した。

「あとは、結月さんだけってね。虎視眈々と狙ってるって感じかな!?」
(いや、考え中……)

 まず、地上で戦うのは、地面に沈む事ができる先輩の分があるからなし。

「〜つう。……で、最後の砦の結月さんはマジでどこいったの?」
「どっか隠れたのか……」
「……っ!上だ……!」

 ――仕掛けるなら、"個性"で宙に連れ出す。
 でも、そうしたところで透過されてしまえば、こっちの攻撃は当たらない。

「……なんであいつ、天井にぶら下がってんの?」
「コウモリ?」
「どういう仕掛け?」

 先にどうやって私が天井にぶら下がっているか、皆の疑問に答えよう。
 天井に足首が埋まる感じにテレポートして、それで引っ掛かっているってだけ。

 よく中也さんがそんな風に重力で天井に立って、かっこよかったから真似してみたかった。

 ネックは重力じゃないから、ずっとこの状態だと頭に血が上るという事だ。
 血が上る前に、先輩に勝つ方法を考えないと。

「結月!時間がもったいない。はよ降りてこい」

 先に相澤先生に怒られた。(え〜考え中なのに〜)頭に血も上ってきたことだし、宙にテレポートする。

「通形先輩!先輩の"個性"は強いけど、やっぱり欠点がありましたね。先輩は宙にいる私を攻撃できない」
「真っ正面からそこ突かれると痛いとこだよね!」
「だったら私、先輩に負けないです……!」


- 128 -
*前次#