勝つ!!

 控え室のドアをノックしようとしたら、ちょうどドアが開いた。

「結月さん?」
「八百万さん」

 そこに立っていたのは、八百万さんだった。

「あれ、お茶子ちゃんはいないみたいだね」

 それほど大きくない室内を見渡す。

「もしかしたら、2の方の控え室じゃありませんか?」
「あっそっか。控え室二つあるんだっけ。ありがとう、八百万さん。そっちに行ってみる」
「ええ」

 いつもと変わらない微笑みを浮かべる八百万さん。今の試合が終わったら、次の試合は八百万さん対常闇くんだ。

「八百万さんの試合の相手は常闇くんだね。実質二人みたいなものだし、攻防どちらにも優れているから、やりづらいだろうけど……。八百万さん、応援してる」
「ありがとうございます、結月さん。私も全身全霊、勝ちに行きますわ……!」

 八百万さんらしい、力強い言葉と凛とした表情だった。チアの時は元気がなさそうだったけど、今はもう大丈夫そう。

 八百万さんと別れて、もう一つの控え室に向かった。

「お茶っ子ちゃーんいるーー?眉間!!」

 うららかじゃない!!

 こちらに顔を向けたお茶子ちゃんの眉間には、幾重にもシワが刻まれていた。

「緊張が眉間にっ……て、それ今さっき飯田くんにも言われたよ」

 苦笑いを浮かべるお茶子ちゃんに、そこには飯田くんの姿もあった。

「あ、飯田くん。お疲れさま。見事に発目さんに振り回されてたねぇ」
「くぅ……!一生の不覚だ……!!」

 飯田くんはどこかで聞いた事ある台詞を言って、全身でくやしさを表している。
 お茶子ちゃんはその様子を見て笑うけど、……空元気の笑顔だ。

「理世ちゃんは皆の試合見なくていいの?」
「録画してるから後で観れるしね」

 八百万さんはさっき会って声をかけられたし。

「麗日さん!!」

 ――次に、でっくんが勢いよく入って来た。

「デクくんも!?デクくんこそ試合見なくて……」

 驚くお茶子ちゃんとは別に「緑谷くん、あのサポート科なんなんだ!?」と、でっくんに詰め寄っている飯田くん。

「だいたい短期決戦ですぐ終わって……もうすぐ、切島くんとB組の人やるとこだよ」

 もう二試合終わったんだ……。勝敗はどうだったんだろうと思っていると、でっくんは詳しく話してくれる。

「芦戸さんが青山くんのベルトを故障させて、慌てた隙にアゴを一発失神K.O!」

 青山くん……。三奈ちゃんにまたベルトの恨みが増えちゃったね……。

「常闇くんは先手必勝。八百万さんが準備したものを使わせなかった」
「一体一なら彼は最強に近いな……」

 八百万さん……ついさっき見せた凛々しい表情を思い出す。使わせなかったとなると、くやしかっただろうな。

「じゃあ……もう次……すぐ……」

 お茶子ちゃんの顔が一層強ばる。

「しかしまァ、さすがに爆豪くんも女性相手に全力で爆発は……」
「するね」
「「…………」」

 飯田くんの言葉に、間髪入れずにでっくんは答えた。まあ、だろうねというか……。

「皆、夢の為にここで一番になろうとしてる。かっちゃんでなくとも手加減なんて考えないよ……」

 説得力ある言葉だ。でっくんが言うとなおさら。

「僕は麗日さんにたくさん助けられた。だから、少しでも助けになればと思って……」

 そう言って、取り出したのは愛用のノート。

「麗日さんの"個性"で、かっちゃんに対抗する策。付け焼き刃だけど……考えてきた!」
「さすがでっくん!」
「おお!麗日くんやったじゃないか!!」
「ありがとう、デクくん……」

 飯田くんと一緒になって喜んだけど、当のお茶子ちゃんの表情は晴れない。

 静かに椅子から立ち上がる。

「でも、いい」
「え……」

 予想外のお茶子ちゃんの言葉に、でっくんはきょとんとした。

「デクくんは凄い!どんどん凄いとこ見えてくる。騎馬戦の時……仲良い人と組んだ方がやりやすいって思ったけど。今思えば、デクくんに頼ろうとしてたんかもしれない」

 そう素直に、自分の思いの丈をお茶子ちゃんは話す。
 でっくんのすごい所が見えてくるのは同感だ。
 でも、でっくんにはでっくんの、お茶子ちゃんにはお茶子ちゃんのすごい所がある。

「理世ちゃんだってそうだよ」

 お茶子ちゃんの口から今度は私の名前が飛び出して、視線が合う。

「理世ちゃんは可愛くて、ギャップあるキャラやけど、性格も良い子だし。実力もちゃんとあって……入試の時に助けてもらった時、私嬉しくって、友達になれてもっと嬉しかったんだ」

 お茶子ちゃんの話を、黙って聞く。

(友達になれて嬉しかったのは、私も同じだよ。お茶子ちゃん――)

「でも、飯田くんが『素晴らしい友人だからこそ挑戦する!』って言ってて、本当はちょっと恥ずかしくなった」

 だから、飯田くんは轟くんのチームにいたんだ……。飯田くんらしいな。
 そんな彼は「俺の発言で麗日くんが引け目を感じることは……!」と、あたふたしている。

「だから、いい。皆、将来に向けて頑張ってる!そんなら皆、ライバルなんだよね……」
「麗日くん……」

 確かにライバルだけど、それと同時に友達でもあるから。

「……お茶子ちゃんが言いたいことは分かった。安心して。例え、お茶子ちゃんが爆豪くんに爆破されても――、私がその屍を越えて行くから……!」
「結月くん!?」
「理世ちゃん、ここでまさかの伏線回収するん!?」
「伏線……??」

 そう慌てるお茶子ちゃんにくすりと笑う。
「結構真面目に話したんに……」
 頬を膨らますお茶子ちゃん。ほっぺがお餅みたいで可愛い。

「大丈夫。お茶子ちゃんは自分が思っているより、すごい人だよ」

 ヴィラン襲撃の時だって――。

 お茶子ちゃんが黒霧を浮かせて、私と飯田くんを助けてくれた。
 あれがきっけで瀬呂くんが援護し、私は"個性"を使えて、結果、飯田くんは応援を呼びに行く事が出来たんだ。

「そんなことがあったんだ……。すごいよ、麗日さん!」
「ああ!あの時の麗日くんは勇ましかったぞ!」
「あれは、たまたまというか……」

 飯田くんの言葉が続き、お茶子ちゃんは照れくさそうに返す。

「お茶子ちゃんが勝ち上がったら、私と当たる」
「……う。理世ちゃん勝ち進む気満々やん」
「出場するからにはね。お茶子ちゃんと対戦するの、私楽しみに待ってるよ」
「っ〜〜!!」

 にっと笑うと、お茶子ちゃんは頬を両手でぱちんっと挟んだ。

「理世ちゃんっ!!」

 お、おぅ。いきなり力強く名前を呼ばれた。なんかデジャヴ感。

「私、頑張る!!理世ちゃん所まで勝ち進む!!んで……理世ちゃんにも勝つ!!」

 ――私も、挑戦するんだ!

 お茶子ちゃんは力強いサムズアップを私たちに向ける。
 
「デクくん、飯田くん。……決勝で会おうぜ!」

 微かにその手が震えてるのにも気づいた。
 叩いて赤くなった丸いほっぺ。
 だけど、その表情だけは怯えを見せない。


 ――……間に合うかな。

 思ったより二試合は早く終わってしまい、切島くんと鉄哲くんの試合が始まってしまう。
 切島くんに入場前「かっこいい活躍楽しみにしてるね」って言ったのは私だし、ちゃんと試合を見届けたい。

「――切島くん!!」

 入場口に一番近い観客席にテレポートして、叫ぶ。

「……結月!?」

 今まさに入場して、ステージに向かう切島くんは、こちらに気づいてくれたようで顔を上げる。
 私は無言でぐっとサムズアップした。

「……っ!」

 切島くんも同じようにサムズアップを返してくれた。


 ―頑張って、切島くん!
 ―男に二言はねえ!


『その体は鋼鉄の矛!!ヒーロー科B組、鉄哲徹鐵!!』
 VS
『その体は硬化の盾!!ヒーロー科A組、切島鋭児郎!!』

 マイク先生が選手紹介する中、ステージに立つ、切島くんと鉄哲くん。

『個性ダダ被り対決だ〜〜!!矛と盾!!勝つのはどっちだ!?』

「おう!勝つのは俺だ!!」
「そりゃあこっちのセリフだ!!」

 同じような"個性"だからこそ、互いの実力差ではっきり勝敗がつく。

「あれ、結月、どこ行ってたのー?」
「ちょっとお茶子ちゃんの所に」

 でっくんと飯田くんは先に席に戻っていたようだ。

「なあ結月、さっき切島にエールを送ってたよな!?俺の時は送ってくれなかったのに!」

 あ、上鳴くん、ウェイモードから元に戻ったんだ。

「だって、私、全面的に塩崎さん応援してたから……」
「ガーン」

『START!!』

 スタートの合図。試合に注目する。

「鉄哲ーー!塩崎に続けーー!!」

 一佳の力強い声援が聞こえた。

「同じような"個性"対決か……この試合、長引くかも知れんな」
「うん……」

 呟く飯田くんの言葉に私も頷く。"個性"で全身を強化した、切島くんと鉄哲くんが同時に拳を向ける。

 ――HIT!!

 鈍い音を立て、二つの拳が互いの顔に命中した。

 正々堂々、真っ向勝負の殴り合い。

 鉄哲くんの拳が、切島くんのガードの隙を抜けて左頬に入れば……切島くんも負けずと、鉄哲くんの頭に拳を振り落とす。

 熱血漢同士らしい熱い戦い……!

「痛そう〜!」

 うひゃあと声を上げたのは透ちゃんだ。
 確かにいくら体を強化しているとはいえ、それ以上の攻撃を喰らったら痛いだろうな……。

「二人の攻撃力はほぼ互角みたいだ……」
「持久戦、忍耐力の勝負だね」

 でっくんの言葉に続けて言う。

 火花が散りそうな激しくなる殴り合い。
 先に倒れた方が負けだ。
 お互いの拳が再びぶつかり合って……

『個性ダダ被り組!!鉄哲VS切島!真っ向勝負の殴り合い!!制したのは――』

 二人は、同時に後ろに倒れた。

(切島くん……!!鉄哲くん……!!勝ったのは――)

 審判のミッドナイト先生がじっと観察し、判断を下す。

「両者ダウン!!引き分け!!」
「引き分け!?ってことは、どーなんの!?」

 驚きの声を上げたのは三奈ちゃんだけでなく、会場全体がざわめく。

「引き分けの場合は回復後、簡単な勝負……腕相撲等で勝敗を決めてもらいます!」

 二人は救急ロボによって、リカバリーガールの所へ運ばれて行った。

「互角の勝負だったな……!」
「熱い戦いだった……!くぅー俺もトーナメント戦出たかったぜ!!」

 尾白くんと砂藤くんがたぎっている。
 二人とも武道派だから、心を打つものがあったのだろう。
 興奮を抑えきれない声に、私も同じ気持ちだ。

 二人の決着は一先ずお預けという形になり、次の試合に移る。

 いよいよ……

『一回戦、最後の組だな……』

「次、ある意味最も不穏な組ね」
「ウチなんか見たくないなー」

 梅雨ちゃんと耳郎ちゃん。

「俺たちはこの試合を見届けよう」
「そうだね!」
「うん……!(頑張れ、麗日さん……)」

 私も二人と一緒に、じっとステージを眺める。

『中学からちょっとした有名人!!堅気の顔じゃねえ。ヒーロー科、爆豪勝己!!』
 VS
『俺こっち応援したい!!ヒーロー科、麗日お茶子!』

 相変わらずマイク先生の私情を挟んだ選手紹介。
 いや、今回は私もお茶子ちゃんを全面的に応援するから分かるけど……。(こんな自由で良いのか)

「先程言ってた爆豪くん対策とは何だったんだい?」
「あ、私もそれ気になってた」
「ん!本当、大したことじゃないけど……」

 でっくんはその対策を教えてくれる。

「かっちゃんは強い……!本気の近接戦闘はほとんど隙無しで、動く程強力になっていく"個性"だ。空中移動があるけど……とにかく浮かしちゃえば主導権を握れる。だから……」

『START!』

 ――速攻!!

「退くなんて選択肢ないから!」

 お茶子ちゃんは爆豪くんに向かって走り出した。でっくんは続ける。

「事故でも触れられたなら浮かされる!間合いは詰められたくないハズ!だから、かっちゃん的には……」

 回避じゃなくて迎撃!!

 爆豪くんの爆破に、お茶子ちゃんは飲み込まれた。分かってはいたけど……

「うわあモロ……!!女の子相手にマジか……」

 会場がどよめく。でっくんの読み通り、爆豪くんは躊躇ない攻撃をした。
 あまりの迷いのなさにいっそ潔い。

(煙幕でお茶子ちゃんの姿が見えない!)

 逆に爆豪くんからの目隠しになれば……。

「じゃあ死ね」

 今度は爆豪くんが動く。煙に微かに浮かぶお茶子ちゃんの姿に攻撃する。(!いや……)
 あれはお茶子ちゃんじゃない。浮かした体操服の上着!上手い……!
 
『上着を浮かせて這わせたのかぁ。よー咄嗟に出来たな!』

 後ろから迫るお茶子ちゃん。よしっ上手く不意はついて――

「わ゙っ」

 爆豪くんは片手を振り上げ、その場一帯を吹き飛ばした。
 地面に転がりながらも、お茶子ちゃんは何とか堪える。

「見てから動いてる……!?」
「あの反応速度なら煙幕はもう関係ねぇな。コエー」

 耳に入って来た瀬呂くんと上鳴くんの会話だ。
 爆豪くんは戦闘センスがやたら高いと思ってたけど、特にその反射神経は凄まじい。(対してお茶子ちゃんは触れなきゃ発動出来ない"個性"だから……もどかしいな)

「……ねえ、でっくん。爆豪くんってプロヒーローの家庭とかじゃないんだよね?」
「うん。ごく一般的な家庭だよ。かっちゃんのお母さんは見た目がすごく若いんだ。"個性"の影響みたいで。かっちゃんにそっくりなんだけど……怒ると正直怖い。お父さんは優しくて〜〜」

 一聞いたら五ぐらいでっくんから返って来た。

 いや、今その情報いらな…………気になるな!?
 爆豪くんそっくりのお母さん……?
 どういうこと!?うあー気になるぅ……!

 …………

「プロヒーロー家の出身じゃないのに、爆豪くんって強過ぎない?」

 本題の疑問はそこだ。

 轟くんの強さは分かる。素質もあるだろうけど、良くも悪くもエンデヴァーに幼いからしごかれて来たんだろうし。

『麗日、間髪入れず再突進!!』

「……かっちゃんの強さは天性のものだ。けど、それだけじゃなくて」


 誰よりも向上心が高くて、誰よりも負けず嫌いで、誰よりもストイック――!


「おらあああああ!!!」

 爆破を何度受けても、お茶子ちゃんは何度も爆豪くんに立ち向かう。

「お茶子ちゃん……!」
「爆豪、まさかあいつそっち系の……」
「まだまだぁ!!」

 彼女は再び走り出す。その姿を会場が一丸となって見守る。

(頑張って、お茶子ちゃん。チャンスは必ずある……!)

 いくら天性のものだろうが天才だろうが努力家だろうが。爆豪くんだって人の子だ。隙は必ず出来るから。

『休むことなく突撃を続けるが……。これは……』

「……あの変わり身が通じなくて、ヤケ起こしてる」

 ……ヤケ?

 観客席のどこからかそんな声が聞こえて、顔をしかめる。

 その声だけじゃない――

「なァ止めなくていいのか?大分クソだぞ……」
「見てらんねぇ……!!」
「おい!!それでもヒーロー志望かよ!そんだけ実力差あるなら、早く場外にでも放り出せよ!!」
「女の子いたぶって遊んでんじゃねーよ!」
「そーだそーだ」

『一部から……ブーイングが!』

 プロヒーローが見当違いのブーイングって、嘆かわしい。
 確かに、爆豪くんは悪人面だし口も悪いけど……

『しかし、正直俺もそう思……わあ肘っ、何SOON……』
(……。んん?)

 何やら実況が乱れている。一体何が。

『今遊んでるっつたのプロか?何年目だ?』

「「!」」

 相澤先生の声がはっきりと会場に響く。
 どうやら相澤先生がマイク先生から実況マイクを奪ったらしい。

『シラフで言ってんならもう見る意味ねぇから帰れ。帰って転職サイトでも見てろ』

「相澤先生……!?」
「……かっこいいなぁ」

 強気な口調で言う相澤先生に、思わず笑った。
 本当にここの先生方は自由だ。

『ここまで上がってきた相手の力を認めてるから、警戒してんだろう』

 そして、本物のプロヒーロー。

 相澤先生は、ちゃんと見ていてくれている。
 ――二人の戦いを。

『本気で勝とうとしてるからこそ、手加減も油断も出来ねえんだろが』

 お茶子ちゃんは負ける気なんてさらさらないのに、このブーイングは彼女に対しても失礼なもの。
 相澤先生の言葉に、会場はシーンと静まり返った。

「そろそろ……か……な……」

 お茶子ちゃんはふらふらしながらも体勢を整える。そして、その見据える先は。

「ありがとう、爆豪くん……」


 ――油断してくれなくて。


「あ……?」

 お茶子ちゃんはぴとっと、両手の指の腹を合わせた。

 それは反撃の合図。

 爆豪くんの位置ならともかく、客席にいながら気付かないとか。
 人間の本当の死角は背後ではない――頭上だ。
 お茶子ちゃんの"個性"によって、空高く浮かんでいる大量の瓦礫の破片。

 まるで小さな宇宙のよう。

 悟られないように姿勢を低くし、何度も爆豪くんの攻撃を受けたのも、策のうち。
 "個性"を解除した今、一斉に重力に従いそれは落ちてくる。

「勝あアアァつ!!」

 お茶子ちゃんの渾身の反撃。爆豪くんは気づき、空を見上げた。

『流星群ーーー!!!』

 いつかの『彗星ホームラン』を彷彿させる光景だ。

「そんな捨て身の策を……麗日さん!!」

 でっくんの言う通り捨て身だ。降り注ぐ瓦礫は、自分に当たる可能性だってある。
 だけど、お茶子ちゃんは避けることもせず、臆する事もなく、

 爆豪くんに向かって再び走る!

 事故でもいい、触れてもしまえば、お茶子ちゃんに勝機が……!


 ――BOOM!!!


 空気を揺るがす程の爆発が起こった。
 観客席にも届くほどの爆風に、体が煽られる。

(……っ、お茶子ちゃんは……!?)


「デクのヤロウとつるんでっからな、てめェ。何か企みあるとは思ってたが……」
「………………一撃て……」


 爆豪くんは、一撃で全ての瓦礫を吹き飛ばした。
 お茶子ちゃんの渾身の秘策を破った。

『会心の爆撃!!麗日の秘策を堂々――正面突破!!』

 さすがに、これは……。サポートアイテムを付けてない素の状態でも、あんな威力の爆発が出せるなんて……。

 お茶子ちゃんは膝をついている。でも、その目は諦めていない。

 立ち上がって――……

「……許容重量キャパとっくに越えて……!」

 その場に、倒れた。

「お茶子ちゃん……」

 地面に這いつくばりながら、それでも立ち向かおうとする姿に、目頭が熱くなる。
 ミッドナイト先生が戦闘を中断し、お茶子ちゃんの側にやって来た。
 慎重に様子を見て、やがて下される審判。

「……麗日さん……行動不能」

 静かに告げられた言葉は、彼女の敗北を意味していた。


「二回戦進出、爆豪くん――!」


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