合宿はもう始まっている

 ――よし。荷造りはこれでばっちりだ。
 合宿は一週間なので、旅行鞄は小型のカートを選んだ。

「理世、荷造りは終わったんですか?」
「うん、あとは明日出発するだけ」
「楽しみですね。きっと良い経験ができますよ」


 翌日は天気予報通りの快晴だった。
 まずは学校に集合し、そこからバスで向かうらしい。

「合宿日和の晴天だぜ!」
「合宿日和の気候だー!」
「おっ合宿日和のバスだぜ!?」
「合宿日和のバスだー!」

 ――まず、上鳴くんと三奈ちゃんのテンションがおかしい。

「あいつらの頭は常夏か」

 珍しく爆豪くんがつっこんだ。

「なんにでも合宿絡めてるね〜」

 よっぽど行きたかったんだなぁ。

「君たち!言葉の使い方が間違っているぞ!日和と言うのは本来ウンタラカンタラ……」

 天哉くんは今日も通常運転、と。駐車場にはB組の面々も揃っていて……あ、やば。

「やあ、結月さん!」

 生き生きとした物間くんが、こっちに迫ってくる!

「人違いです、人違いです」
「逃がさないよ!」

 後ろから、がしっと腕を捕まれた。

「期末テストの結果はどうだった?優秀なA組だからまさか補習組はいないよね?」
「……物間くん、ずいぶん白々しいね〜」

 絶対、物間くん事前に知ってるでしょ。

「白々しいって何のことだい?え?まさかA組、補習いるの?つまり赤点取った人がいるってこと!?」
「………………」
「ええ!?おかしくない!?おかしくない!?」
「おかしくないよ〜おかしいのは君だよ〜物間くん」
「「(確かに……)」」
「おかしいよ!!A組はB組よりずっと優秀なハズなのにぃ!?あれれれれぇ!?」

 物間くんがカオス化したその時、トッと一佳の手刀が彼の首に入った。

「ごめんな、理世。行く前から物間が絡んできて」
「物間怖」
「あはは……私は大丈夫」
「物間のやつ、一周回って結月のこと好きだろ」

 いや、泡瀬くん。一周回られて好きになられても困るよ、私。

「体育祭じゃなんやかんやあったけど、まァよろしくね、A組」
「ん」

 取陰ちゃんと唯ちゃんを始めてし、B組の女の子たちはにこやかに挨拶してくれる。

「よりどりみどりかよ……!!」
「おまえダメだぞ、そろそろ」

 それを見て、ハアハアと息を荒らげながらよだれを垂らす峰田くん……。(その顔がもうアウト!!)切島くんが真顔で忠告した。

「ああ〜、あの男子か……」
「理世が言ってた……」
「ん」

 B組女子たちの視線が集まるのは……

「(なんだ……!?B組女子の視線がオイラに……!これって……まさか……!)」

 ついにオイラにもモテ期到来――……

「理世が言ってたセクハラ男子だっけ?」
「マスコットみたいな見た目でなかなかえげつないらしいねー」
「峰田怖」
「頭ブドウみたいなのにねー!」
「私、スルーしマース」
「せっかく理世さんが忠告してくれたので、皆さん自衛しましょう」
「ん」
「…………ちくしょォォォ!!」

 何を勘違いしたのか、峰田くんは地面に両手をついて絶叫している。

「さすが、理世さんですわ……!」
「先手を打ったのね、理世ちゃん」
「峰田くんの毒牙が他のクラスの女子まで及ばないようにね」
「峰田くん……この機会に日頃の行い改めよう?」

 そう言って、峰田くんの肩にぽんと優しく手を置くでっくん。
「でっくん、優しくしなくていいよぉ」
 どうせ懲りてないから。

「なんだよ、結月!いつかぜってーひんむいてやるからなぁ……!」

 ……なんだって?

「そ、それはダメだよっ峰田くん……!犯罪だから……!」
「……いたっいてててて!?緑谷、分かった、分かったから!」目怖え!?
「……!?」

 峰田くんの肩に置いていたでっくんの手がぎゅうと力が入ってる……!(む、無意識……?)

「じゃあまたな、理世!合宿でゆっくり話せたら良いな」
「んっ」
「うん、一佳も唯ちゃんもまたあとで!」
「結月くん!君が最後だぞ。早く乗りたまえ!」

 天哉くんに急かされ、急いでバスに乗り込む……ん?

「……私の席がな〜い!」
「「(あー…………)」」

 見事に二列の席は埋まっていて、奇数の人数に私が余った……。

「結月〜オイラの隣なら座らせてやってもいいぜ〜?」

 一番後ろの席で、イラっとする顔でニヤニヤ笑う峰田くん。顎を上げて渾身に見下してから、私は回れ右をする。

「相澤先生。お隣よろしいでしょうか」
「どうぞ」

 やった〜と、一番前の席の相澤先生の隣に座った。
 程なくしてエンジンがかかり、バスは合宿に向かって出発する。

「一時間後に一回止まる。その後はしばらく……」

 そう説明する相澤先生の声は――……

「音楽流そうぜ!夏っぽいの!チューブだチューブ!」
「ポッキーちょうだい」
「バッカ夏といや、キャロルの夏の終わりだぜ!」「終わるのかよ」
「しりとりのり!りそな銀行!う!」
「ウン十万円!」
「(すでにやかましい……)」
「(うるっせぇ……!!)」
「ねえ、ポッキーをちょうだいよ」
「席は立つべからず!べからずなんだ、皆!!」
「いや、飯田くんも立ってるような……」
「青山も飯田も危ねえぞ」

 すぐに皆のワクワク声にかき消された。

「みんな、合宿楽しみでしたから」
「みてえだな……」

 フォローするように言うと「まァいいか……」と、珍しく相澤先生は折れた。

「何度注意しても不死鳥のように騒ぎが蘇って来るのが目に見える」
(不死鳥……!?)
「……わいわいできるのも……今のうちだけだ――……」

 ……!?

 最後にぽつりと呟いた言葉を、私は聞き逃さなかった。


 ――そして、一時間後。


「休憩だ――……」

 相澤先生の言う通り、大体一時間経過してバスは止まる。
 てっきりパーキングエリアにでも止まるのかと思っていたけど、バスから降りると……そこはなんにもない、山々を一望できる見晴らしの良い高台だった。(おやおやおや〜?)

 バスから全員降ろされた。

「おしっこおしっこ……」
「つか、何ここパーキングじゃなくね?」
「ねぇアレ?B組は?」
「お…おしっこ……」
「何もねえな……?」

 皆も不思議そうにしている。とりあえず……。広大な山々を見渡しながら、うーんと伸びをして体をほぐした。

 空気が澄んでいて、気持ちいい。

「焦凍くんも、体凝ったんじゃない?」

 近くにいた焦凍くんに声をかける。彼は途中から車酔いの青山くんを横にさせるのに、席を譲って小さな補助席に座っていたから。

「つっても、一時間ぐらいだからな」

 そう言いつつ、片手で首を押さえる焦凍くん。(あ、寝違い系男子のポーズ。様になってる!)

「あ、じゃあ、背筋伸ばししようよ」
「背筋伸ばし?」
「こうやって……お互い背中合わせになって、腕組んで……背中を伸ばすと……気持ちいいんだよ〜」
「お……確かに」
「……。お前ら何してんだ?」
「「背筋伸ばし」」
「いや、見りゃあ分かるよ、それは」

 瀬呂くんも誰かとやってみてほしい。ほぐれて気持ちいいから。

「理世は相澤先生の隣だから、余計肩凝ったんじゃない?」

 背筋がスッキリしたところで、笑って話しかけてきたのは耳郎ちゃんだ。

「そんなこともないよ。相澤先生、アイマスクして耳栓して寝てたし」
「用意周到……。それにしても、なんで何もないこんな場所に止まったんだろ?」
「まあ、何かあるよねぇ」
「結月、相澤先生の隣でなんか聞いてねえの?」

 瀬呂くんの問いに、死んだような目を心がけながら……

「『わいわいできるのも……今のうちだけだ……』って、言ってた」
「「………………」」

 相澤先生の顔真似と声真似。二人とも、どれに対してなのか何とも言えない顔をした。


「何の目的もなく、では意味が薄いからな」
「トトトトイレは……」

 頃合いを見計らうように、相澤先生は全員に向けて意味深に言った。――その直後。
 
「よーーーう、イレイザー!!」

 そんな軽快な声がどこからか聞こえた。近くに止めてあった車の両ドアが、同時に開く。

「ご無沙汰してます」

 相澤先生がぺこりと頭を下げた。
 車から降りてきたのは――

「煌めく眼でロックオン!」
「「!」」
「キュートにキャットにスティンガー!」
「「……!?」」
「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!」」
「「……………………」」

 猫をイメージしたコスチュームを着た、二人組の女性ヒーローが決め台詞と共にポーズを決める。
 後ろには角が二つ付いたキャップを被るムスッとした男の子がいて、一体……。

「あのポーズ決め続けるの大変そう」
「……うん、グラグラしてんな。だが、俺はつっこむのはそこじゃねえと思う」
「もっと他にあるよね」

 素直な感想を口にしたら、瀬呂くんと耳郎ちゃんに淡々と返された。

「今回、お世話になるプロヒーロー《プッシーキャッツ》の皆さんだ。お前ら、挨拶しろ」
「「よろしくお願いします!!」」

 プッシーキャッツ……知らないヒーローだ。自然とでっくんを見る。

「ワイプシだよ!結月さんっ!!」

 私が何か言う前に、目が合った瞬間、嬉しそうに教えてくれた。(……ワイプシ?)
 興奮で紅潮した笑顔に、目を輝かせながら、でっくんはさらに詳しく説明してくれる。

「連名事務所を構える4名一チームのヒーロー集団!山岳救助等を得意とするベテランチームだよ!」

 お茶子ちゃんがすごい目ででっくんを見てる……。

「キャリアは今年でもう12年にもなる……」
「心は18!!」
「へぶ」

 キャリアと口にした瞬間、でっくんの顔をボフッと肉球グローブが掴んだ。……どうやら、年齢はタブーらしい。

「心は?」「じゅ、18!!」
「ここら一帯は私らの所有地なんだけどね」

 言わされているでっくんをよそに。もう一人の女性ヒーローが、背後の山々を見ながら話す。

「あんたらの宿泊施設はあの山のふもとね」

 ピッと、猫爪で遠くを指した。

「「遠っ!!」」

 皆の声が綺麗にハモる。うん、遠いねぇ……テレポートでも途中で行き倒れになりそうな距離だ。
 
「え……?じゃあ何でこんな半端なとこに…………」
「これってもしかして……」
「いやいや……」

 漂う不穏な予感に、その場がざわめく。

「ハハ……バス…戻ろうか……な?早く……」
「そ、そうだな……そーすっか」

 瀬呂くんの乾いた笑いに、上鳴くんは引きつった笑顔で、近くにいた口田くんの肩に手を置いた。さりげなく、皆の足はバスの方へ。

 その提案には――満場一致だ。

「今はAM9:30。早ければぁ……12時前後かしらん」

 ゆらゆらと楽しげに揺れる尻尾に、同様の声が届く。

「ダメだ……おい……」
「戻ろう!」
「バスに戻れ!早く!!」
「12時半までに辿り着けなかったキティは、お昼抜きね」

 12時半というと、3時間で……!?

 切島くんたちの声に弾かれ、全員でバスに向かって走り出すも、

「……っ!?」

 ニッと猫の敏捷さで、行く手を阻むヒーロー。
 バスの前に膝を曲げて着地した彼女は、両手を地面に付けた。青い光と共に地面が蠢く。

「わるいね、諸君」

 相澤先生の淡々とした声。土がまるで津波のように迫って、悲鳴さえも呑み込む。


「合宿はもう――始まってる」


 ――まるで、土流だ。押し流され、数メートルあるだろう崖でもお構い無く、生徒たちは下に落とされた。(さすが雄英……!やることが無茶苦茶!)

「私有地につき"個性"の使用は自由だよ!」
「今から三時間!自分の足で施設までおいでませ!」
「この……"魔獣の森"を抜けて!!」

 魔獣の森……?なにその、ファンタジー小説に出てきそうな名称!


 ***


「"魔獣の森"……!?」
「なんだ、そのドラクエめいた名称は……」
「雄英こういうの多すぎだろ……」
「文句言ってもしゃあねえよ、行くっきゃねえ」
「耐えた……オイラ耐えたぞ」
「みんな!無事か!?全員そろってるか点呼するぞーー」
「いや、点呼はいらねえだろ……。全員落とされた」
「クソテレポがいねえ!」
「あ、結月さん……」
「まあ、あいつの"個性"なら……」


 ***


「――相澤先生。土流から逃れることができたら、バス移動ってことでよろしいでしょうか」
「「!」」

 バスの上に立って、笑みと共に見下ろす。
 相手が何か仕掛けて来ると分かっていれば、私の"個性"で避難することぐらい造作もない。

「そりゃよろしくねえな」
「テレポートキティね。やるじゃない!」

 舌舐めずりして、私を見上げるヒーロー。再び"個性"を使おうとした彼女を、相澤先生が手で制した。

「まったく……。お前の"個性"はつくづく厄介だよ」
「っ!?」

 その首に巻かれた操縛布が掴み、何故かゴーグルを装着する相澤先生。(いやいやいやいや……)

 抹消!逃げる暇なく、"個性"を消された。その一瞬で、投げられた操縛布が体に絡まり、焦る……!

「待って待って、先生それないですーー!!」

 期末試験だけで十分なのにぃ!!

「お前も一緒に頑張って来い――」
「ああああーーー!!」


 遠心力をかけられ、無慈悲に崖から放り投げられるうぅ……!


「――?ねえ、悲鳴聞こえない?」
「……っあれ!理世ちゃんっ!?」
「「はっ……!!?」」

 見上げる皆と、視線が合った。

「助けてーー!!ヒーローーー!!」
「結月くんッ!君はテレポートできるのでは!?」 
「相澤先生に抹消使われてる!!」 
「「あ……」」
「パンツ見えろ――!――!――!!」
「「クズかよッッ!!」」

 さっきから使おうとしているのに、"個性"が発動しない。まさか相澤先生、使わせないつもりじゃ……!?(ちなみに峰田くん。私がこの"個性"でスカートの中を対策してないわけがないでしょう、バカめ!)

 こうなったら、地面に当たるギリギリで、もう一度"個性"を試すしかない!(受け身は練習したけど、この高さじゃ無理っ)

「っ……(フルカウル……!)」

 ――その時、宙で体を受け止められた。

「……っ!?」

 ……――でっくん!

 驚いていると、至近距離で目が合った。
 ふっと微笑まれた瞬間、跳ねた心臓。
 横抱きされたまま、でっくんは地面に着地した。

「大丈夫?結月さん」
「あ……、うん、ありがとう」

 ゆっくり地面に降ろしてくれる。

「すげえなっ、緑谷!」
「デクくん、王子様みたいやー!」
「ケッ」

 でっくんは切島くんやお茶子ちゃんにそんな風に言われ、えへへと照れ臭そうに笑っている。
(なんだろう……)
 自分から助けてって言っておいて……助けてもらって、すごくドキドキしてる。

「…………(ああ、そっか……)」

 その横顔を見つめて、気づく。
 最初に出会った頃に比べて、でっくんは目まぐるしく成長した。

 その、姿が――……

「「マジュウだ――!――!――!――!!?」」

 え、魔獣?唐突に響いた悲鳴に慌てて後ろを振り返る……と。

「…………!?」

 ななな、なにあれぇ!?魔獣めっちゃ怖いな!!!

 森の奥から現れた巨大な四足の魔獣。
 牙をむき出しに、いかにも凶暴そうな見た目だ。
 その目と鼻の先で、襲ってくださいとばかりに峰田くんがぽつんと立っている。

「峰田ぁ!?」
「お前何してる!?早くこっち逃げろ!」
「静まりなさい獣よ、下がるのです」
「口田!!」

 勇敢にも前に出て、口田くんが魔獣に話しかける。(動物を従える口田くんの"個性"!)

「!?」

 魔獣は大きな爪を振り上げ――

「ッ峰田、口田!!」

 素早くでっくんが飛び出し、峰田くんを抱えて救出し、私は口田くんを連れてテレポートした。
 
「動物を従える口田くんの"個性"が通じてない!?」
「ってことは……」

 よく見ると、魔獣の体の表面が僅かに崩れ落ちている。

「土くれ……!!そうか!結月さん、ピクシーボブの"個性"だっ」
「単純に土を操るだけでなく、こんな"個性"の使い方も出来るんだ……」

 ――結月!焦凍くんに名前を呼ばれ、すぐに察する。峰田くんと口田くんと共にテレポートして、離れた場所に飛んだ。
 直後、焦凍くんの右足から氷結が地面を伝い、魔獣の下半身を凍りつかせた。

「レシプロバースト!!」
「死ねやあぁ!!」

 焦凍くんを追い越し、同時に天哉くんの蹴りと爆豪くんの爆破が、魔獣の左右の腕を奪う。
 その上には――拳を構えたでっくんの姿。

「スマーーーーシュ!!!」

 魔獣の頭から突き抜ける緑色の閃光。
 木っ端微塵に、魔獣はただの土塊に戻った。

 焦凍くん、天哉くん、爆豪くん、でっくん……。

 4人の偶発的な連携によって、まずは魔獣を一体撃破。(問題は……)
 
「あの魔獣を瞬殺かよ!」
「やったな!」

 砂藤くんと瀬呂くんに続いて、皆も集まって来た。

「……った……オイラやっちまった……」
「み、峰田くん……元気出して……!」

 ……?何やら酷く落ち込む峰田くんを、あの無口な口田くんが一生懸命慰めている。

「峰田くん、どうしたの……?」
「そ、そこには触れないであげてもらえると……」
「さすがだぜ、爆豪!」
「まだだ!」

 前方を鋭く睨んでいた爆豪くんが、声を張り上げる。

 土から生まれる先程より小型の魔獣。

 爆豪くんは後ろに手のひらを向け、爆破して一気に距離を詰めるも、

「飛んだ!?」
「土塊なのに飛べるん!?」

 三奈ちゃんとお茶子ちゃんが驚きの声を上げた。

「面白えじゃねえか!!」

 翼が生まれて上に飛び立つ魔獣を、爆豪くんはそのまま追尾する。すぐさま頭上から爆発音が響き、パラパラと土の欠片が降ってきた。

「空まで飛べるとなると、理世さんが頭上から偵察するのは危険ですわね」
「あ、確かに……」

 百ちんの言葉に気づいて頷く。まあ、倒せない事もないけど、体力気力ともに温存したい。

 施設に着く時間制限は三時間。

 距離もだけど、魔獣が出るこの森で三時間って可能なの……?

「むしろ、結月のテレポートで施設まで飛べない!?」

 三奈ちゃんからの質問に答えよう。

「定員2名で、途中で行き倒れる可能性があってもいいなら」
「それ、もはや行き倒れじゃなくて2名道連れだろ」

 誰が面白いことを言えと瀬呂くん!

「気を付けろ……また来るぞ……!」
「おいおい、一体何匹いるんだよ!」

 警戒する障子くんの言葉に、焦燥した声で叫ぶ上鳴くん。

「どうする?逃げる?」
「冗談。12時半までに施設に行かなきゃ昼飯抜きだぜ」

 三奈ちゃんの問いに、勇ましく答えたのは砂藤くん。

「ああ……!逃げの選択肢はねえ!!」

 大きく頷き、肘を曲げて拳を握る切島くん。

「なら、ここを突破して最短ルートで施設を目指すしかありませんわ!」
「だねぇ」
「ケロ」

 凛とした声で言う百ちんに、私と梅雨ちゃんが同時に頷いた。他の皆からも、続々と同意の声が届いて……

 再び、満場一致だ。

「みんなで力を合わせれば……」
「ああ、今回は21人もいるからな」

 でっくんと焦凍くんが、顔を見合わせて言う。

「よし!!行くぞ、A組――!!!」
「「おお!!!」」

 委員長の力強い掛け声に、皆の意思が一つになった。(さて、この場合の最適解は……)

「てめェら、俺の足は引っ張んじゃねえぞ」
「「空気読めよ!!!」」

 空中戦から戻って来たと思えば、ビシッとこちらに指差す爆豪くん。

「かっちゃん……」
「せっかく良い感じだったのにー!」
「どこまでも唯我独尊かよ!!」

 当然、皆からは顰蹙の嵐だけど、爆豪くんはどこ吹く風だ。

「さすがだね、爆豪くん。20人全員を敵に回すような発言」
「うん。ブレないな、あいつも……」

 私の言葉に尾白くんが苦笑いする。

「皆ーー!!静粛に!ここはすでに魔獣の森!敵の陣地だ!!」
「知ってるよ」
「お前が落ち着け」
「飯田ちゃんもブレないわ」
「……本当だねぇ、梅雨ちゃん」

 ブンブンと手を振り回す天哉くんが、一番静粛じゃない。

「一致団結にはほど遠いな……」

 呆れたようにため息を吐く常闇くんに、確かにと同意しつつ「まあ、いざって時はするから良いんじゃない?」と、笑顔で言った。


「前方から三匹!左右に二匹ずつ!」
「総数7!――来るよ!」


 策敵班の障子くんと耳郎ちゃんの呼びかけに、すでに先程の4人が示し合わせたように動いているからだ。


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