わたしがかんがえたさいきょうのサッカー選手

 なまえには最近ハマっているアプリゲームがある。

 サッカー選手育成ゲームだ。

 見た目から能力、プレースタイルなど、こと細かく作り込むことが出来る。

「見て!私の考えた最強のサッカー選手。廻をイメージしてドリブラーだよ」
「すごっ。かっけー!」

 キャラの見た目は、廻には似ても似つかないクリス・プリンス風のイケメンだ。前に試合をテレビで観て、かっこいいと言っていたからだろう。

「見た目も俺っぽくしてくれ」そう廻が言ったら「髪型にぱっつん前髪がなかった」と、なまえから不可抗力な答えが返ってきた。

「神業テクニックもお手のものだよ!」

 何故かなまえは誇らしげにスマホのゲーム画面を見せる。
 華麗なテクニックを繰り広げるキャラを、廻はじっと見つめる。

「ねえ、なまえ。ちょっとディフェンスしてよ」

 ポンっとボールを蹴って言った廻の言葉に、なまえは頭に「?」を浮かべた。
 廻の自主練に付き合ってると言っても見てるだけの、いわば観客に近い。

「フリだけでいいから♪」

 サッカーが出来ないなまえに、廻も本気で練習相手に考えてないだろう。フリなら……と、なまえは公園のベンチから立ち上がる。

「さっきのテクニックってこんな感じっしょ!」

 え――と思った時には、廻はなまえを抜けてドリブル。

「もう一回……!もう一回見せて!」
「いいよんっ」

 くるりと回って戻ってくると、廻は同じように、魅せた。
 廻の脚さばきによって文字通り、ボールは跳ねて、踊る。

「す、すごい……!神業再現!」
「へへ♪」

 見ただけでいとも簡単に。そもそも廻のサッカーテクニックはゲームで言うところSSSだ。おまけに+つけてもいい。

(やっぱり廻すごい……!)

 楽しそうに自由なテクニックでサッカーをする廻の姿に、なまえは目も心もずっと奪われている。

「じゃあじゃあ、これはできる?」
「んーどれ?」

 …………

「さすがにこれは廻にも無理でしょ〜」
「しゅんっとして、ぽんっ、だね」

 …………

「じゃあこのスーパーテクニックは!」
「よっ、――ほいっと」


 なまえが練ったテクニックをことごとくやってみせる廻。負けた。完敗である。
 気がつくと子供たちも「あの兄ちゃんすげー!」とギャラリーが出来ている。

「廻に私の想像力を凌駕される〜」
「我、最強の天才ナリ」

 二次元の最強を越えた一次元がここに存在。

「プレースタイルを変える!」
「ふぅん?」
「どこからでもシュートを撃てる最強の選手」
「どこからでもシュート撃てても、ゴールに入らないと意味ないんじゃない?」
「……。どこからでも正確無比のシュートを撃てる選手」
「うはっすっげー後出し!」

 ケラケラと笑う廻に、なまえは頬を膨らませながら「じゃあ、どんなボールもトラップする選手」や「ゴールへのルートが見える選手」と、自分が思い付く限りの最強を口にする。

「まぁどんなヤツでも、俺のドリブルで抜くけど♪」

 頭の後ろで両手を組ながら、脚ではボールを自在にリフティングする。
 自信満々にそう言う廻はかっこよくて。
 やっぱり完敗だとなまえは心の中で白旗を上げた。


 後に、そんな選手たちが実際に存在すると知り、なまえは再び自分の想像力を凌駕されることとなる。





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あでぃしょなる⚽たいむ!
#廻くんと男子小学生


「ねえ、兄ちゃん!オレたちにサッカー教えてくれよ!」
「教えて教えて!」
「サッカー少年たち、やる気満々じゃん。いいよ」

(廻が男の子にサッカー教えるって、なんか微笑ましくていいなぁ)

「ここはパッといって、ギュギュギュンって感じで、最後にシュン!だよ♪」

(……。あ、廻の説明の語彙力が6歳から変わってない)

「なんだよ、その説明全然わかんねーよ!」
「指導力0ですね。もっとボールに対しての脚の位置や角度など、的確かつ合理的に教えてほしいものです」
「これならYouTube観てた方がよっぽど練習になるよ!」
「やっぱオカッパ頭は信用ならねーな。みんな行こーぜ」

(廻、小学生にコテンパンに言われた……!!)

「ねえ、なまえ。最近の小学生っておっかないね」
「うん……容赦なかったね……」


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