「英語なら凛ちゃんに教えてもらえば楽勝だね!」
「凛、ペラペラだったもんな」
「あの発音はオシャだったぞ、凛」
「よ、よろしく凛くん!」
「勝手に頼ってくんな」
勉強に取りかかる前に!
廻は蟻生についさっき切ってもらったばかりの前髪を、ちょんまげのように結ぶ。
本人は気合いを入れるためだが(結局結ぶんかい!)と、潔は得意気な顔をしている廻に心の中で突っ込んだ。
そして、勉強開始して数秒も起たないうちに、廻はさっそく凛に尋ねる。
「ねえ、凛ちゃん。教科書開いてみたけど、全然わかんない」
「凛くん、なにから始めればいいかな?」
「凛、俺の発音を聞いてくれ!」
「俺は聖徳太子かよ……」
廻の他にも時光と蟻生がほぼ同時に話しかけた。三人は凛の心情などお構い無しに、わからないことがあればガンガン聞いてくる。ある意味、自己中心的なエゴイストたちだ。
(俺は耳から鍛えるか……)
いつブチギレてもおかしくない凛の様子を眺めながら、大人しく潔はイヤホンを耳にはめた。
投げやりながら「わかんねえならレベルを落とせ」という凛のアドバイスに従い、廻は高校生用の教科書から中学生用の教科書を開く。
あ、これならなんとなくわかるかも!
(猫は"にゃんこ"じゃなくてキャット♪)
初期で習うような簡単な英単語だ。廻はノートにペンをすらすらと走らせていく。……できた!
「見て潔!」
「……ん?」
「キャット♪」
「おー蜂楽、絵うまいな」
「おい、そこ。ちゃんとやれよ……」
そんな風に(廻は)脱線しながらも、語学学習は進み、数日経過――……
(えーと、日曜日はサニーデイじゃなくて)
「サンデイ……モンデイ……チュエスデイ……」
数日経っても廻の進捗具合が中一レベルから進んでいないのを、突っ込む者は誰もいない。(しかも間違っている)
凛以外、他人の勉強を見る余裕はないからだ。
「ウェド……ウェ……」
日曜、月曜、火曜ときて水曜日。廻の順調に動いていたペンがそこで止まる。
「ウェ……」
ウェ?
「ウェドネスデイ?」
「ウェンズデイだタコ。てか、日曜以外合ってねぇし」
頬杖をついていた凛が見かねて言った。中学出てねーのかよ。わからないならレベルを下げろ、と凛は廻に言ったが、これでは中学レベルも怪しい。
「ウェンズデイダタコ……」
「…………」
言われたまま覚える廻に、凛はもう何も言うまい。その代わり頭を抱えた。
「ねぇねぇ凛くん!自己紹介は「マイネームイズ」じゃなくて「アイム」でいいって本当?」
「おい、凛。舌を甘噛みしてデュス。「TH」の発音はこれでいいのか?」
「…………」
時光と蟻生による左右からの質問に、凛のイライラはさらに募る。
(木曜は……あ、火曜とちょっと似てる。サ……)
「サウルスデイ……?」
なんか恐竜みたいだ。そう思う廻の頭に、大きな厳つい恐竜の姿が浮かび……いつ切れてもおかしくない廻の集中力の雲行きが怪しくなっていく。
「ねぇ、教えてよ凛くん……キミしかいないんだ!」
「……俺はお前らの……」
「テュス!トゥス!ドォス!合ってんのかコレ?」
「家庭教師じゃねェ……」
続いて金曜――廻はノートのページを破って、馴れた手つきで紙飛行機を折る。
廻の集中力は完全に切れた。
イライラしている凛とどっちが先かと思われたが、その凛もすぐに"キレる"こととなる。
それゆけ!
「アイ キャン フライデーイ♪」
廻が飛ばした紙飛行機が凛の後頭部にコツン、と当たって。
つい先日、サッカーボールを後頭部にぶつけて怒られたことなんてすっかり忘れている。
「やってられっかこんなもん!」
「ああ!ダメぇ!!」
「何日こんな生活させんだ!?」
「痛で!舌噛んだ!」
「アイムソーリー、ひげソーリー、ムダ毛処理ジョーリ」
(まーたやってる)
――騒がしい中、リスニングに集中していた潔は他人事のように彼らを見た。
潔の呆れた視線の先に、凛から教科書を投げつけられて楽しげに逃げ回る廻の姿が映る。
「!」
そんな廻の耳に、チャイムに似た音が届いた。壁に取り付けられたモニターからだ。
『只今をもちまして"二次選考"を終了し――……』
おお?
『"三次選考"の先へ進出するメンバーが出揃いました』
そう女性の声――帝襟アンリなのだが、アナウンスが響き、皆の意識がそちらに向く。ぐしゃぐしゃにした紙飛行機を投げつけようとした凛の手も止まった。
「終わった……?」
「やっと次か」
「ちょーど勉強は飽きてたところよ♪」
やっと退屈な勉強から解放されると、廻の心は浮き立つ。
『速やかにビブス・ユニフォームを着用し中央ジョイントルームに集合してください。なお、突破者は全7チーム35名となり、クリア順に入場していただくことになります』
「7チームかぁ。結構脱落したね!」
両腕をうーんと伸ばしながら、廻は前を歩く潔に言った。ずっとテーブルに向かっていたからか、身体が固くなった気がする。
「……ああ」
かつての仲間たちが気がかりなのか、潔から返ってきた声は上の空のような返事だった。対して廻は「他のチームも英語の勉強してたのかな?」と、軽い口調で話す。
かつての仲間が生き残っているか……廻も気にならないわけではないが、ここは"青い監獄"。
結果と実力こそがすべてであり、脱落はそこまでの人間だったということだ。
自分含めて。
『それではまず――1stクリアチーム入場してください』
その声の後に、ドアが下から上へと開いていく。
「なんかちょっと……ドキドキするね……どんなメンバーが上がって来るんだろ?」
「とりあえず、弱者は来ないコトだけは確かだ」
時光と蟻生の言葉に廻も同意だ。次のチームの入場を期待して待つ。
『それでは続いて――2ndクリアチームも入場してください』
……来た!
「ちーっす」
「来たぜヘタクソ」
「100万年振り」
その言葉と共に入って来たのは、見知った三人だった。
「おいーっすー!」
廻は元気よく彼らに手を振る。凪、馬狼、千切。納得の面子であり、敗北から這い上がってきたリベンジャーたちだ。
「あ!斬鉄もいる!」――それに知らない顔も!
潔はかつてのチームだった三人との再会を喜び、廻は斬鉄と言葉を交わす。
「俺4人目、コイツ5人目」
「よろ!」
斬鉄に紹介された廻は、人懐っこく5人目の少年に挨拶した。
清羅刃は物静かな性格なのか、無言でこくりと頷く。
「清羅は見ての通りブレイクダンスが得意な奴なんだ」
「すげー!かっけー!今度見せて♪」
「……あい。今度な」
斬鉄の言うなにが見ての通りかはわからないが、純粋に興味津々という廻に、清羅は悪い気はしなかった。
『それでは次のクリアチーム、入場してください』
再びドアが下から開く。現れた3thクリアチームの五人は廻の知らない人たちだった。
「お!知らない人たちだらけだ」
「……まぁ。戦っているのは俺たちだけじゃないからな」
……いや、一人会ったことがある奴がいた。氷織に紹介された烏旅人だ。一緒のバンビ大阪ユースチームだったらしいが、ここでは別チームらしい。
なんとなく、廻は氷織は生き残っている気がしていた。完璧に勘だけど。
次に入場した4thクリアチームもまったく知らない人たちだったが、5thクリアチームが入場すると、廻と潔の声が同時に重なった。
「氷織ん!」
「二子!」
氷織ん?廻の出た名前を不思議そうに聞き返した潔に「バスで寝てたところを起こしてくれた人」と、廻はにっこり教えた。
「あれ……あのチーム、1人足りなくない?」
気づいた千切の言葉に改めて見ると、確かに二子と氷織の他に(オシャさんよりでかいかも?)という石狩幸雄と(プレデターっぽいなー)という血斑海琉の二人しかいない。
その疑問に答えるようにアナウンスが流れた。
『5thクリアチーム、西岡初は三次選考"世界選抜戦"で打撲負傷のため治療中です』
「青森のメッシ西岡……!」
「てか、やっぱみんな世界選抜と戦ってここに来たんだな」
周囲の反応を見ると「青森のメッシ」は有名人らしい。
俺も"千葉のかいぶつ"って呼ばれてみたいなーと、廻が呟くと「いいんじゃね?蜂楽っぽくて」「確かに」そう千切も潔も笑って同意した。
無邪気に笑うその姿に思い浮かばないが、あの試合の蜂楽は、まさに"かいぶつ"そのものだった――と潔も千切も思うからだ。
「じゃあ、千切んは"鹿児島の赤豹"だね!」
「地元の新聞が勝手につけただけだったんだけどな」
「新聞に載ったってことだよな?すげー千切」
……そんな会話をしていると。
「だから押すなって!」
「俺が真ん中でカッコよく登場したい」
「いや、どけ俺だ!」
――と、俺が言っている!
何やら騒がしい声に、三人は「?」そちらに視線を向ける。
「てめコラ!」
「ゔぁ!」
「あ〜痛ででで!」
最後は仲良く三人で転けて、なだれ込むように入って来たのは6thクリアチームの――
「雷市!我牙丸!」
「だぁ!だから言っただろ、バカ!」
「カッチョ悪い登場」
潔が元チームメイトの名を明るい声で呼んだ。
そこには鰐間兄弟のお兄こと淳壱もいる。
一番上で倒れ込んだ我牙丸は、雷市と淳壱の頭に手をついて起き上がり……
「あー!!うぃっす!!おひさの人がいっぱいいるぞ!」
「我牙丸、てめェ……」
「どけと言っている……」
「はは♪相変わらずだな、アイツら」
そんなドタバタに登場した三人に、笑う廻は嬉しそうな笑顔でもあった。
『それでは、ラスト7thクリアチーム。入場してください』
そのアナウンスに、神妙な顔つきで千切が口を開く。
「あと……1チームだよな」
「うん……まだ来てないね」
その後に続いて凪が言った「あの二人」は、國神と玲王のことだと廻は気づく。潔から、凪と二人になったあと、馬狼を引き抜き、千切と國神と玲王のチームと対戦したと聞いた。
緊張感が漂う中、扉の向こうを見つめていると、最後の五人が徐々に姿を見せる――……
「南無三!」
「イガグリ!?」
その名前は驚きの声で廻の口から出た。堂々と勝ち誇った表情で現れたイガグリだったが、正直ここまで残っているのは誰もが意外に思う。
その隣にいる二人は知らない二人だ。その後ろを続くように歩いてきたのは……
「玲王……」
そう零れるように名前を呼んだ凪の声は、廻だけでなく、きっと凪をよく知る玲王もなまえも聞いたことのない声色だ。
ここまで四人。最後の一人は……
ゆっくりとこちらに歩いてくる姿は影になってよく見えない。周囲に緊張感が走るのがわかった。
だが、廻はひっそりと熱が冷めるように表情を無に返す。
その姿をはっきり目にするまで信じようとする潔と千切の二人とは違い、その佇まい、歩き方、背格好で確信する。
(國神じゃない――)
「おしまい。」
現れたのは、姿も雰囲気も國神とは似ても似つかない、むしろ真逆の風貌だ。
「……國……神……」
聞こえるか聞こえないかの声で、潔は途切れ途切れに言葉を紡いだ。
「國神は……?」
今度ははっきりとその名前を口にした。
『三次選考進出者は以上です』
アナウンスが終わると同時、潔は食ってかかるように玲王に問う。
「おい、玲王……。なんで一緒じゃないんだ……?なぁ……」
「……」
玲王は潔から目線を逸らすだけで、なにも答えない。
「國神はこんなところで……終わるハズないだろ……!!」
「終わったよ。俺が綺麗に地獄へ送ってあげました」
「!?」
いつの間にか、最後の一人――士道龍聖が潔の目の前に来て話した。
「まぁ、たしかにいい体格してたし。心も真っすぐで清く正しく美しかった。ただ」
そして、足を進めて潔を通りすぎる。
「戦場上じゃいいヤツかどーかなんかどーだっていいんだよ。一瞬の爆発のために生きられない人間はゴミだ。俺の物語にはなんの価値もない」
視線を落とした廻はその言葉に同意はしないが、否定もない。
「あの無垢で真面目な糞ヒーローは、俺の人生にとっちゃレベル上げにもならないスライムだったよ」
でも、コイツのその物言いはムカついた。
「……フザけんな!!お前が國神の何を……!」
「だから、どーでもいいんだって……」
士道が横目に潔を捉えた時だった。
「お前の物語とかさ!」
「!?」
前触れなく士道は飛び上がり、潔に蹴りを入れる。
廻が驚いて動くより先に、猫が駆けるように赤髪が靡く。その先の伸ばされた手が潔の身体を後ろに倒し、士道の脚は二人の頭上を掠めた。
「千切!?」
「なんだコイツ……ムカツク……」
「マジそれな。やるなら全然やるけど」
千切の言葉に続いて、廻は準備運動をするように両腕を伸ばして言った。
國神を侮辱しただけでなく、潔にも攻撃しようとして、廻は黙っていられない。
「俺にとっちゃお前がスライムだぞ。日サロ触覚」
「日サロじゃねぇ、太陽光だ」
廻の煽る言葉にも、士道は口角を上げぬけぬけと答えた。
――このパッツン前髪くん。どこかで見たことあると思ったら、あの写真のいい笑顔ちゃんじゃん。
士道は思い出した。キックターゲットの初パーフェクトだと写真に写っていたあの笑顔の少年だ。
一方の廻は、正月になまえとキックターゲットをしに東京に行った際、士道とすれ違っていたなんてもちろん知らない。
運命的じゃん――面白いとますます士道はにんまり笑う。
「……やめとけ、蜂楽。コイツは見た目以上にイカれてる奴だ」
物理的な喧嘩に発展しそうなそれに、制止の声をかけたのは玲王だった。
士道の攻撃性と手加減を知らないのはチームメイトになる前、コイツと出会した時から知っている。
制止したのは別に廻を心配したからではなく(お前が怪我でもしたらなまえが悲しむだろうが)そんな理由から。
「バトルすんなら助太刀するぜ、蜂楽」
対して正反対なことを言ったのは清羅だ。清羅独自の考え方である「ボーダーライン」が傾いたのは廻だったから。
「やれやれーファイ!」
「場外乱闘はアウトちゃうんか。やめとけ」
ヤジを飛ばす乙哉の隣で、口では制止しつつ烏は面白そうに笑っている。
「平和にいこうぜー」
凪はゆるく制止した。元々平和主義なので喧嘩は賛成しない。
「おい、蜂楽!俺にもコイツ殴らせろ。話を聞いてたら気に食わねえ」
まだ廻は士道を殴っていないが。雷市はギザッ歯を見せ笑いながら、やる気満々で廻の隣に立つ。元々喧嘩っ早い性格だが、國神への言い種が、自分の悪口を言われたように腹が立った。
「雷市っばかりカッコつけてずりぃ。俺も参戦するぞ」
「さっきカッコつけようとしたのはどこの誰だよ!?」
「お、おい我牙丸まで!お前らやめろって!本当にアイツはヤベーんだって!見ろよ、俺の顔の傷!」
続く元チームメイトに、慌ててイガグリが自分の頬のガーゼを指差しながら言った。士道についてきたからこそ生き延びたが、何度コイツに殺されかけたことか。
「何人でも来いよ。まとめて同じ地獄に送ってやるぜ?」
士道が応戦しようときた時――
『はいはい、そこまでにしろ。才能の原石共』
「!」
スピーカーから絵心の声が響いた。その場を収める鶴の一声だ。時光を筆頭に、ハラハラしていた者はほっとする。
『これ以上の暴力は強制退場にするぞ。それに……落ちた人間の心配するヒマは今のお前らにはない――なんせ、お前らのサッカー人生ももうすぐ"青い監獄"と共に、なんの価値もないゴミと消えるかもしれないからな』
消える……?絵心の言葉に、その場の空気がガラリと一転し、廻も絵心の話に意識を向けた。
『あーその前にとりまおつかれ。世界選抜との戦いはかけがえのない敗北立ったろ?その意味はまた今度言うとして……。このあと三次選考は語学学習を経て……えーっと』
絵心は本題を焦らすように話すので、廻はもどかしさから背中がもぞもぞして来る。
『まぁ……いろいろありまして……ラスト5人まで絞っていくつもりだったんだが……予定が変わった。どうやら日本サッカー界のお偉いさん方は、"青い監獄"を今すぐにでも潰したいらしい』
「……なんで?」
「俺が知るか。……知らねーけど、気に食わねえんじゃねえの俺らが」
思わず廻はすぐ隣にいた雷市に聞くと、意外にも雷市は真面目な答えをくれた。
『だからあえて、俺は挑戦状を叩きつけた。ということで、次の選考は3週間後、"青い監獄"の存続を懸けた戦い――……U-20日本代表VS. "青い監獄"選抜の特別壮行試合だ』
……なんだっけ?こういう時に使うことわざ。
――そうだ、青天の霹靂だ。
国語の授業で「へきれきってなに?」ってなまえに聞いたら、青空に雷が鳴ることを指していると、丁寧に教えてもらったのを廻はちゃんと覚えていた。
だが、今は青空に雷が鳴ったというより、その場を雷が走り抜けたという表現がしっくりくる。
誰もが驚愕の顔で固まっているからだ。
『この試合に勝てば、"青い監獄"はU-20日本代表を強奪できる』
それって、U-20日本代表になれるってこと……?
「U-20日本代表を強奪……?」
廻が思ったことを我牙丸が疑問として口に出した。
「マジ……?」
淳壱は驚き過ぎてか「と俺が言っている」といういつもの決まり文句を忘れている。
「そんな条件……よく通ったな」
『まぁ向こうは負けるワケないと思ってるからね。寄せ集めの35人の高校生相手だし、しかも全員FWのチームときたら、アイツら鼻で笑って試合成立に快諾してくれたよ』
その絵心の答えに皆も納得した。あの青森のメッシのように(廻は知らなかったが)有名人もいるが、ほとんどまだ無名の選手たちだ。
集められたストライカーの中で、一番の有名人だったであろう吉良涼介は廻と潔によって入寮テストでロックオフされてる。
『向こうの狙いは"青い監獄"計画を消滅させること。国内代表試合の話題性での集客による金儲けだ。結果、"青い監獄"は負けて笑い物にされて――……』
そこからは誰も疑問を口にせず、絵心の話を黙って聞いていた。
『育成失敗例として、日本サッカーの歴史に刻まれるだろう。とまあ、ここまで聞いて、率直にどう感じる?舐められて悔しいか?一泡吹かせてやりたいと滾ったか?』
問いかけるような絵心の言葉に、廻は考えるが、さっきから驚きに感情はふわふわしている。
『俺は至って冷静に、現実的に断言してやる――今のお前なら日本サッカーをひっくり返せる』
あの絵心が言い切るだけで、今度はゾクッと高揚感を感じた。
『でもまあとはいえ、敵も100%勝ちにくる算段だ。お前ら戦う現U-20日本代表はメンバーにプラス1……』
糸師冴を初招集することが決定した。
画面には、その糸師冴の姿が映し出された。天才MFであり、凛の兄ちゃんだ。
『さぁ、全てを懸ける時は来た。ここでの生活でエゴを学び、武器と化学反応を身につけ、世界トップを体感した今のお前ら35名にとってU-20日本代表の座は夢物語なんかじゃなく、手を伸ばせば掴める現実だ――』
現実。夢が夢でなくなる。すぐ、目の前にあるんだ――。
それを映し出そうとする廻の眼は、純粋な輝きを放っていた。
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あでぃしょなる⚽たいむ!
#理不尽な凛くん
if〜もしも夢主が"青い監獄"に来ていたら〜
「ねえ、なまえ!語学学習で俺、英語ちょっと覚えたよ♪凛ちゃんに教えてもらったんだ」
「凛くんに?よかったね、廻。ちょっと心配してたけど、ちゃんと勉強しててえらいね!」
「いくよ♪サンデイ、モンデイ、チュエスデイ……」
「!?待って廻、サンデイ以外間違ってるよ!」
「?ウェンズデイダタコ?」
「……!?タコ……?」
〜〜〜
「凛くん!廻の家庭教師だって聞いたけど、英語間違って覚えてたよ。冗談でも適当なことを教えたらだめだよ?信じちゃう人(廻)がいるんだから……」
「あいつが勝手に間違って覚えてただけじゃねえか。つーか俺は家庭教師じゃねェ!」