『いくぞ、才能の原石共。時代を変えるのは"青い監獄"だ――』
"青い監獄"の存続を賭けた戦いに向けて、まずはU-20日本代表戦レギュラーを賭けた適性試験が行われる。
FWはもちろんのこと、MF、DF、GKなどのポジションもこの適性試験で決まるという。
絵心の話を聞きながら、廻はGKだけは嫌だなぁと考える。さすがにそこからゴールを狙うのは、廻でも至難の技だ。(でも絶対に無理とは考えない)
「でも、俺はたぶんGKの適性はないからGKだけは選ばれないな、うん」
「すでに自分はレギュラーに選ばれるの前提かよ。相変わらず底抜けに楽観的なヤツ」
廻の独り言に雷市がつっこんだ。だが、一概に楽観的だけとは言えないかも知れない。
「蜂楽廻。お前がその役割を担え」
「!」
チーム形成の中心候補となるTOP6の、次点評価であるNo.7に廻が選ばれたからだ。
「あいあいさー」
役割とは、特例で2試合やることになる一人。TOP6を3チームに分けて残った選手を加えた5VS.5の1試合だが、人数の問題で1組だけ一人足りなくなるからだ。つまり、チャンスは2回。
これをものにできなきゃカッコ悪いじゃん?
◆◆◆
「おい、イガグリ。お前それ全種類じゃねーか!?」
「今夜に限り食べ放題なんだから食わなきゃ損じゃ!俺の煩悩ナメるな!」
「煩悩、1個もらうよ」
「あぁ!!自分で持ってこいよ!」
「タルタルソースがかかった煩悩うまし」
「にゃはは♪煩悩定食じゃ!」
「我牙丸、お箸あげるからこれ使いなよ!」
「黙って喰えよてめぇら!」
静かに食べているのは千切だけ。他の選手たちも好きなメニューを食べられて嬉しいそうだが、賑やかなのは元チームZの席だけだ。
「しっかし、あの時の元チームZメンバー全員集合……ってワケにはいかなかったな」
「うん。成早がいないのは寂しい……」
うっ――我牙丸の言葉に、潔は食べていた麺が喉に詰まりそうになった。なにを隠そう馬狼と成早のチームを破り、馬狼を引き抜いたのは潔と凪のチームだ。
「潔、どうかした?」
「あっ、いや、その……」
「あと裏切り久遠と女好き今村とGK伊右衛門……」
「チームZ、全員集合とはいかなかったね」
話が変わったので潔はほっとしつつも、次に神妙な顔になり、皆の会話につけ加えるように言った。
「それと、國神……」
その名前に一瞬、場がしん……となる。
「……まぁ、正直。國神が落ちるとは思ってなかったなぁ、俺……アイツ強いし」
最初に沈黙を破ったのは廻だ。
「……」
静かに食べていた千切も、思うところがありそうな顔をして口を開く。
「でも……これが"青い監獄"なんだよな……」
「……千切」
「つーか、それよりも。U-20代表に負けたらここ自体消滅する。他人の心配してる余裕ないっしょ、俺らも」
「だな!投票期日は明日まで。どのチームに入るかもう決めたのか、お前ら?」
千切の言葉に同意したあと、雷市が取り出したのはハガキサイズの投票紙だ。
まずはABCの3チームのうち、どのチームに入りたいか希望を出す。定員割れもあるので、第1希望と第2希望の両方だ。
Aチーム、凛と士道。
Bチーム、烏と乙夜。
Cチーム、雪宮と凪。
どのチームでならTOP6の実力に埋もれずに自分をアピールすることができるか。よく考えて決めなくはならない。
「俺は「A」ランクチームだな」
ずっと組んでた士道がいるし、といつの間にかすべて料理を平らげ、腹がパンパンのイガグリが言った。煩悩腹だ、と廻は笑う。
「俺は「B」か「C」かな。なんとなく直感で」
次に言ったのは、左右の手にそれぞれ箸を持っている我牙丸だ。
「まぁ、モニタールームでここまでの試合の映像観れるらしいから、俺はそれ観て相性良さげな奴のところに入るつもりだけど……蜂楽は?」
「俺はあみだくじで決める!どーせ俺だけ2試合って言われたし」
もう1試合は強制参加っぽいし、と廻はつけ加えて言った。
「あ、そっか。つーか結局元チームZの出世頭はお前かよ!なんか気に喰わねぇ!!」
「アイアムエゴイストなりぃ。千切りんは?」
「まだ決めてない……潔は?」
「うーん……俺は……」
廻から千切へ、千切から振られた潔だったが、言い淀んでいると……
「「A」か「C」っしょ?凛ちゃんのとこか凪のとこ」
今まさに考えていたことを当てられたらしく、潔は驚いた顔をした。
「え……うん。よく理解ったな、お前……」
廻はさらに潔の思考を言語化するがごとく話す。
「自分の武器と化学反応を起こすなら、コンビネーションが使える凪のいる「C」チーム。まだ越えられてない未知の可能性に賭けるなら、凛ちゃんのいる「A」チーム……ってとこっしょ?」
「ああ」
潔は素直に頷いた。味方にも敵にもなった潔のことなら、廻はよくわかる。なにより"相棒"だし。
皆と駄弁っている間も潔は決まらず迷っているようだったが、廻は最終的に潔は「A」を選ぶんじゃないかと思っていた。
――投票期限は明日の朝までだが、すでにどのチームに入るか決めた者もいれば、潔や玲王のように悩んでいる者もまだまだいる。
「あっみだくじ♪あっみだくじ♪」
だが、廻のようにあみだくじで決めようとする者は、きっと他にいない。
「――キミ。No.7の蜂楽廻くんだよね?」
「そうだけど……」
お風呂上がり、即席の歌を歌いながら体を拭く廻に声をかけたのは……
「あ、ボクは柊零次。よろしくね」
「よろしく♪」
両目の下の黒子が特徴の、柊零次だった。
「どのチームに入るかあみだくじで決めるの?蜂楽くんって占い好き?」
「占いはまあまあ好きかな!いいことは信じて、悪いことは信じないよ」
「ふぅん。ちょっとボクのタロットカードで、キミがどのチームに入るのがベストか占ってみない?」
タロットカード。名前だけは知っている。中学時代に女の子たちの間で流行って、なまえも占ってもらっていたなーと廻は思い出す。
「へぇ、面白そう!やってみたい!どうやんの?」
「えっと……まずは服着よっか」
廻は全裸でやる気満々だった。
「じゃあ、この画面から三枚、カードを選んでー」
差し出されたスマホ画面にはタロットカードが並べられている。
テキトーでいいよーという軽い声に、廻はひょいひょいと三枚のカードを選んで画面をタップした。
「まずは「A」ランクチーム。出たカードは「剣5」だね」
画面を覗き込むと、言葉の通り剣を持った人物が描かれている。
「意味は「争い」「競争」。Aチームで活躍するのは困難ってコトだね。君の実力がものを言う」
Aチームにいるのは凛と士道だ。No.1とNo.2だし当たってそうな気がする。
「次は「B」チーム。「力」のカードの意味は「内なる強さ」や「勇気」。Bチームは個々の能力を発揮できるチームだと現している。このチームに入ったら君は自分の力を存分に発揮できるかも」
Bチームにいるのは烏と乙夜。どちらのプレーも見たことながないので、二人がどんなサッカーをするか興味はある。
「最後の「C」チームのカードは「聖杯ナイト」。意味は「情熱」「理想」。このチームならクリエイティブなプレーができるんじゃないかな?」
Cチームにいるのは雪宮と凪。雪宮はわからないが、確かに凪とならクリエイティブなプレーができそうだ。
結論。
「へぇ!なんか当たってそうな気がする」
そういえば、なまえはあの時なにを占ってもらったんだろう。当たっているかよくわかんないって笑ってたけど。
「それに、どのチームでも面白そうなサッカーができそうだね♪」
「そう?僕はAチーム以外がいいと思うけどね」
「でも、Aチームなら成長できそうじゃん?」
前向きに廻は言った。実際のところ一緒にサッカーをしてみないとわからないというのが本音だ。そして、選んだ選択肢を正解にできるかは結局自分次第。
「やっぱあみだくじだよね♪」
廻は置いてあったメモとペンを手にし、線を書いていく。柊は頬杖をつきながら、そんな廻を眺めていた。
(良いことは信じるって言ってたけど、結局一番に信じているのは自分ってワケね……)
出来上がって三本の線から一つを選び、指を線を辿る姿は気軽な遊びをしているそのもの。
「あ、Aだ!」
あみだくじの結果の通りに、廻は一寸の迷いなく第一希望にAと書く。あみだくじに命運を賭けるなど、肝が座っているというべきか、お気楽というべきか……。
「柊は決めたの?」
「僕は……」
不意に廻の問いに柊は口ごもった。迷っているというより、決めかねているというニュアンスの方が近い。
これまでの試合で、柊も今までの考え方を捨て、視野を広げたつもりだ。だからこそ、この考えで本当にいいのか、柄にもなく自分自身を見失っていた。
「僕もあみだくじで決めようかな」
「あは、あみだくじ仲間だね!」
◆◆◆
『それではまず、投票を集計し、第1第2希望を加味した結果、振り分けられるチームを発表いたします――……』
最終課題・集合エリアにNo.6の選手以外の全員が集合すると、パッと画面にチームの振り分けが写し出された。
「♪」
廻は第1希望であるAチームになった。潔とも一緒だ。
(あ、五十嵐にオシャさん、ネガさん、氷織ん、清羅もいる)
ちなみに柊はBチームを希望したらしく、廻が知っているヤツでは千切、雷市、二子、馬狼がいる。
次にCチームを見ると、凪がいるからか、そこには玲王と斬鉄の名前もあった。他には我牙丸、鰐間のお兄も。
『試合の組み合わせは全部で5試合、最終試合には蜂楽廻が「C」チームとして参加』
(最終試合Cチームだと、Aチームと試合ってことか)
画面には対戦表が表示される。凛と士道とはチームメイトにもなり、対戦相手にもなるということ。
『1試合毎に6時間のインターバルを挟みます。なお、公平を期すために他の試合を観戦することは不可とします。それでは早速、第1試合「A」vs.「B」まずはランダムに3人ずつのメンバー発表です――』
さくさくと最終課題は進行し、モニターには福引きでよく見る(廻はガラガラって呼んでる)回転式の抽選機が現れた。
自動的に回り、スポンッとボールは飛び出す。
『Aチーム1人目……七星虹郎』
「うっす」
『続いて2人目……氷織羊』
「……僕か」
『そしてAチーム、3人目は――……』
玉に記された名前が目に入った瞬間、廻の口から「お」と声がもれた。
『潔世一!!』
「は……はい!」
早速選ばれたなー潔。そして、呼ばれた瞬間ビクッとなった潔に、我牙丸とイガグリが笑いを堪えている。
『続いて対戦相手「B」チーム。抽選開始です……1人目、志熊恭平!!2人目、皿斑海流!!』
呼ばれたその二人は廻の知らないヤツだが……
「おい……なんかイカちぃ奴ばっかだな」
「ゴーレムとプレデターだ」
「男臭ぇー」
皆も似たようなようなことを思ったようだ。
『最後に3人目――……千切豹馬!!』
「おっす」
最後の一人は、元チームメイトの千切。
「勝手知ったる敵ってか♪」
どんな試合になるか気になるが、試合観戦が不可なのが残念だと廻は思う。
『それではA・Bチーム、6名。それぞれのビブスを着用し、入場ゲートへお進見ください』
ビブスを着用した6人が入場ゲートを進んで見えなくなると、第二試合「A」vs.「C」のメンバーが発表させる。
そして――
『続いて第4試合「A」vs.「C」。Aチーム1人目……蜂楽廻』
「あーい♪」
廻は第四試合で呼ばれて、残りの二人は……
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あでぃしょなる⚽たいむ!
#チーム"前髪が特徴的"
『2人目、灰地静!』
『3人目、西岡初!』
〜〜〜
「西岡って、青森のメッシって呼ばれてんでしょ?かっくいいよね♪俺、千葉のかいぶつ!よろしく♪あ、そっちの君もよろしく!なんか俺たちって、ちょっと前髪似てない?」
やけに人懐っこい人だなぁと思う二人。