12月31日 11:59:58
――せーの!
"あけましておめでと!"
"あけましておめでとう!"
そんな二つのメッセージがほぼ同時にぽんっ、と画面に現れた。
ほぼ、というのはなまえが送ったメッセージは0:00ぴったりに対して、廻が送ったメッセージは11:59だからだ。それを見てなまえはくすくすと笑う。
"廻、惜しい!"
"時間"
文字を簡潔に打って送ると、すぐに廻から返信がくる。
"あ!"
"フライングしちゃった"
改めてか、今度はあけおめスタンプが送られてきた。
1月1日、新年の挨拶。
二人は三回はする。一回目は日付が変わった瞬間を狙ってメッセージトークで。二回目は年賀状で。三回目は直接会ってだ。
"じゃ、また明日!おやすみ"
その返事に、今度はなまえの方からおやすみスタンプを送った。明日――といってももう今日だが、一緒に初日の出を見に行く約束をしていて、早々に廻は眠ることにしたらしい。
(もうちょっと起きてようかな……)
新年だからか、なんとなくこのまま寝てしまうのがもったいない気がする。音楽番組には好きなアーティストも出るし、それを見てからなまえは眠ることにした。
「ふあぁ……」
案の定、眠い。時刻は6時。起きる時間としては特別早くはないが、寝不足だ。
「あは、珍しいね、なまえが眠そうなの。昨日、夜更かしした?」
「つい眠るのがもったいない気がして……」
眠そうなのがいつもとは逆だ。ぽやんとしているなまえも可愛いなぁと廻は思う。でも、寝ぼけていたら歩くのに危ないので、なまえを起こす方法はないかなぁと考える。
「ねーねー、なまえ。ここ、すんごい寝癖ついてるよ」
「えっ、嘘!?」
「うん、嘘♪」
「廻〜今日は元日でエープリルフールじゃないよ」
「でも、起きたっしょ」
確かになまえの目はぱっちり開いた。
「あ、廻。明けましておめでとう。今年もよろしく」
「明けましておめでとう!ことよろ♪」
直接の新年の挨拶もし、二人が向かう先は昔は山だった場所にある公園だ。
夜景スポットでも有名だが、初日の出も綺麗に見えると、地元民にとっての穴場である。
夜明け前の、薄暗い道を二人は歩いて行く。
「この空の感じとか、朝の雰囲気ってなんかいいよね」
「うん、わかる」
廻と同じようになまえは空を眺めて頷いた。空気は冷たくも、どこか澄んでいて気持ちいい。
人もいなく、車もあまり通らない。まるで二人だけの世界のようにも感じた。
公園に近づくほど人はまばらに増え、長い階段には初日の出を見に行く列を作っていた。
「……ふぅ。着いたっ」
「――お。みんな、あっちの方を見てるね」
階段を上がりきると、人が集まっている方へ二人は向かう。高台から千葉の町並みも見渡せて、それだけでもちょっとした絶景だ。
雲があるのが少し残念だが、少しづつ太陽の存在がその向こうで主張し始める。空が静かに明るみを帯び、群青から茜色へ、茜色から金色へ。やがて。
「なまえ、太陽だ!」
廻が指差す先、雲の中から太陽が顔を出した。太陽は周囲の空をその色に染め、眩しさになまえは目を細める。
「きれい……」
「うん、特別って感じ」
あたたかな太陽の光は二人の顔も照らす。眩しくも、二人は日の出を目に焼き付けた。
その場の空気だけでなく、心も清々しい。
初日の出を見届けた二人は公園を後にし、今度は神社へと向かった。次は初詣だ。
「なまえ、お願いごとなにした?」
「んー秘密!」
「俺はなまえのことお願いしたよ?」
「え、どんなこと?」
「ナイショ♪」
「え〜」
お願いごとはお互い相手のこと。二人は笑い合いながら、今度はおみくじを引きに行く。
「あ、吉だ。廻はなんだった?」
おみくじの内容を見ると、今年のなまえの運勢は可もなく不可もなくということらしい。つまりは自分次第。
「なまえ……俺、すごいの引いた」
「もしかして大吉?」
廻はなまえにおみくじを見せる。そこにはどーんと大吉……ではなく、大凶と書かれていた。
「大凶!?初めて見た……」
そもそもおみくじに大凶が入っていない神社もあるらしいが、ここの神社はしっかり入っていたらしい。
毎年、廻と引いているが、凶も引いたことがない。
「俺も!大凶引くなんてすごくない!?いいことあるかも♪」
むしろ大凶を引いてご機嫌な廻に、なまえはさすがだと感心した。占いはなまえも廻も良いことは信じて、悪いことは信じないタイプだが、それにしたって大凶を引いてこんなにポジティブなのはすごい。(たぶんなまえはちょっと凹む)新年から廻の長所が本領発揮だ。
「なまえー!あっちで餅つきやってるんだって!お餅食べれるかも!行こ♪」
廻に手を引かれて走る。その背を見て、きっと廻は大凶さえも味方にするんだろうな、と笑顔のなまえは思った。
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あでぃしょなる⚽たいむ!
#年賀状は毎年手書きのイラスト付き
「あ、廻からの年賀状届いている!今年は巳年だから……。可愛い!黄色の蛇だぁ」
(なんか金運が上がりそう……)
「なまえ、廻くんからもらった年賀状の当選番号が当たってるぞ!」
「えぇ!?」
当たったお年玉で甘いものを食べに行った。