彼女の使命

 ――ようやく、ごくらくちょうとの戦いに幕が閉じた。


「ユリ……君はいったい……」
「エルシス……。私、記憶を取り戻したの」


 ユリは彼らに振り返った。

 そこには以前と変わらないのに、初めて知るような――不思議な雰囲気を纏わせる彼女がいる。

 "記憶を取り戻した"

 皆を代表するように唖然として聞いたエルシスは、彼女から返ってきた言葉に再び驚愕する。

「取り戻したって……、えっ本当に!?」

 ユリはエルシスに向かって歩くと、彼の前に跪いた。
「…!」
 戸惑うエルシスをよそに、ユリは右拳を左手で包み、拱手礼をする。

「勇者、エルシスさま。私の本当の名はユリスフィール。天使と呼ばれる者です」
「天使……!?」

 全員、驚きを通り越して動揺した。ユリの本当の姿が天使だったなんて、誰が予想をついただろうか。

 そもそも……

「天使って本当に存在してたのね……。それが、まさかユリだったなんて……」

 ベロニカが言う通りだ。人魚と同じように天使も空想上の存在だというのが、一般の認識だ。
 むしろ神の存在に近く、伝承やお伽噺があっても、誰も見たことがなかったのだから。

「どうして、君は記憶を失って……」

 エルシスの問いに、ユリは僅かに表情を歪ませた。
 記憶を思い出したということは、自分の身に何が起こったかも、全部思い出したということだ。

(天使界は……たぶんもう。……イザヤールさまは……)

「……私たち天使が住む天使界は、魔物の軍勢の襲撃にあいました。私もその手から逃れられず、襲われ、その際に記憶を失ったのです」
「そんな……」

 だから、ユリはあんな大怪我をして倒れていたんだ――。闇の傷というのも、納得がいく。

「私は……本来ならエルシスさまをお守りする立場なのに、命を助けて頂き、感謝してもしきれません」

 そう次に頭を下げられ、エルシスはぎょっとする。

「あ、頭を上げてくれ、ユリ!それに、そんなかしこまって話さないでほしいし、さまもつけてほしくない……」

 ユリは一緒に旅立って、ずっと味方にいてくれた存在。
 いきなりこの距離感は寂しい。
 ユリが天使かどうかの前に、自分への変わり果てた態度にエルシスはショックを受けていた。
 
 エルシスが悲しそうに言うので、今度はユリが戸惑う。

「今までの私は記憶を失っていたけど……本来ならこうする立場で……」
「エルシスの言う通りだ。記憶がなくてもあってもユリはユリだろ。お前がそんなんだとこっちの気が狂うんだ」

 カミュの言葉に「本当よ!」そう一番に同意したのは、ベロニカだった。何故か彼女はプリプリ怒っている。

「ユリ!勝手に助けて落っこちて!こっちがどんな思いしたかわかる!?二人はもう助からないって……そしたら、翼生やしてカミュと戻ってきて、じつは天使でしたなんて……。本当にあんた、突拍子がなさすぎよ!そーんなかしこまった態度しちゃっても今さらなんだからねっ!」

 一気に捲し立てたあと、ベロニカはプイッとユリに背中を向けた。
 小さな肩が震え、拭う仕草に、彼女が泣いているのがわかった。
 ユリは立ち上がり、その背中に声をかける。

「ベロニカ……」
「……っもう、"師匠"でしょ!あんたは……ユリは、あたしの一番弟子なんだから」
「……師匠。心配かけて、ごめん」
「そこはごめんなさい!」
「……ごめんなさい」

 二人の変わらないやりとりに、場の空気がふっと緩む。

「ユリさま。ユリさまに聖なる力を感じていたのは、天使さまだったからですのね。けれど、ユリさまがユリさまなのはやはり変わりません。今後とも、私たち姉妹をよろしくお願いしますわ」
「セーニャ……」

 にこりとユリに笑いかけるセーニャ。

「うふふ、ユリちゃんが天使だったなんて、とっても素敵ね。もともとユリちゃんは天使みたいな子だったから、アタシはユリちゃんの印象はあまり変わってないケド♪」
「シルビアさん……」

 シルビアの言葉にユリもくすりと笑った。「アタシのことはシルビアでもいいわよ?」という言葉に「……じゃあ、シルビア」と、ユリは答える。

「最初はユリに翼が生えていて驚いたけど……。そうよね。人魚だって本当に存在してたんだもの。天使だっていたっておかしくないわ。ねえ、ユリ。あなたのこと、もっと知りたくなっちゃった」

 最後は茶目っ気たっぷりに言うマルティナに、ユリは笑顔で頷いて。

「私も、マルティナとおしゃべりするの楽しいよ」
「ふふ……じゃあ今晩は皆でガールズトークでもしましょうか」

 涙を拭いたベロニカとセーニャも明るく同意した。

「ユリ、わしはお主に礼を言わねばならん。ありがとう」

 次のロウの言葉に、ユリはえ?と首を傾げる。

「わしは人魚だけでなく、天使もこの目にすることができた。しかもとっびきり可愛いお嬢さんの天使さまじゃ。あとは妖精をこの目にすることができれば、わしの人生に悔いなしじゃ!」

 最後はおちゃらけて、だが力強く言うロウに「ロウおじいちゃん……」「ロウさま……」呆れるエルシスとマルティナ。

 ユリは再びくすくすと笑った。ロウの考えている妖精ではないかも知れないが、ユリには知ってる妖精がいるのを思い出す。

 不思議な運命だと――ユリは思う。
 本来、人間には天使の姿は見えない。

 片翼になって、頭に光輪もないユリは、ほとんど天使の力が失われているのだろう。
 だからこそ、彼らと出会うことができ、仲間になれた――。
 
「エルシス……」

 ユリは再びエルシスに向き合う。

「私にはもう、天使としての力はほとんど残されてないけど『この世界を守る』という使命を果たしたい。でも、使命としてだけじゃなくて……。友達として、仲間として、これからも一緒に旅を続けてもいい…かな…?」
「当たり前じゃないか!!」

 間髪入れず大きな声でエルシスが答えたので、ユリはびっくりした。

「ユリがいないと始まらないよ。だって君は、初めての僕の仲間だよ!」

 手を差し出すエルシスに「……ありがとう」とユリは心から嬉しいという笑顔を浮かべて、その手を握り締めた。

「エルシス。これからも、よろしくね」
「うん、よろしくユリ」
「あ、カミュもよろしく」
「オレはついでかよ」

 ユリは反対の手を差し出して、カミュは口ではそう言いつつ、笑ってその手を握る。
 
『エルシス、カミュ。二人とも、これからもよろしくね』

 あれは、三人の心が一つになって、デルカダール神殿に向かう前だ。

 あの時も、三人はこんな風に手を握りあっていた。


「――そうそう。忘れずにシルバーオーブを回収しないとね」

 ユリはごくらくちょうが集めたキラキラ光るものたちの中から、シルバーオーブを探して取り出す。


「シルバーオーブ!ついに手に入れたわね!まさかこんな所にオーブがあるなんて、思ってもみなかったわ」
「もともと、このシルバーオーブは天使界で保管してたものだったの」

 手の中に輝くシルバーオーブを見つめながらユリは言った。

「人間たちが命の大樹の元へ行く方法の一つだから……。私は、これをエルシスに届ける途中で襲われた――」

 そして、本来の持ち主に渡すようにユリはエルシスに渡す。


 ユリに聞きたいことはたくさんあるが、まずはメダ女に戻って、ゆっくり休んでから話をしようということに彼らはなった。


「なんだか、お腹すいちゃった」

 その際、そうマイペースに言ったユリに「あ、やっぱりユリはユリだな」と、全員思ったとか。

 カミュも「こいつ、こんなにしっかりしていたのか」と最初こそ驚いたが。
 たぶん、彼女本来の性格がああで、天使としての記憶を失ったことによって前面に出てきたのだろうと考えた。

 ちなみに、彼女の本名はユリスフィールという名だが、愛称で皆から"ユリ"と呼ばれているらしく、今後も彼らは彼女をユリと呼ぶことにする。


「じゃあ、ウルノーガが天使界を襲ったのは、シルバーオーブを奪おうとしてってこと?」

 メダ女の学食で、食事のあとのお茶を飲みながら。
 エルシスたちはユリから詳しく話を聞いていた。
 お茶はここで育てられたバラから作られたローズティーで、香りがよくおいしい。

 ユリはマルティナの言葉に頷く。

「もともと、天使という存在が邪魔だったのもあると思う。魔族からしたら、対なる聖なる存在だから。……突然、天使界の結界が消えて――」

 魔物の大群が襲撃したのだ。初めてのことで、天界は混乱に陥った。

 そんな中……

「私の師匠……あ、ベロニカじゃなくて、天使界のイザヤールさまという方なんだけど……。師匠が偽物のオーブを持って囮になり、私が本物を持ってエルシスの元に届ける算段だったの」

 だが、その魔の手はユリにまで伸びた。
 策が見抜かれていたのか、両方を襲ったのかはユリには分からない。
 イザヤールや天使界がその後どうなったのか、今のユリに把握するすべがない。
 天使という存在なのかも危うい自分には、きっと天界に戻ることはできないだろう。

「ユリ……?大丈夫?」
「あ、うん。大丈夫」

 陰った表情に気づき、心配そうに顔を覗き込むエルシスに、ユリは笑顔を作って答えた。

「……ユリが記憶を失った経緯はわかったが、なんでお前が持っていたシルバーオーブを大富豪とやらが持ってたんだ?」

 ウルノーガに盗まれたならともかく。大富豪からごくらくちょうが盗み出したと本には書いてあった。

「それは私も不思議に思っていて。あの時、私は必死に逃げながら、咄嗟に……そう、サンディにオーブを託したはず」
「サンディ?」
「私につきまっとっていた妖精で……」

 つきまっとっていた妖精?全員首を傾げた。

 怪訝な皆をよそに、ユリは「あの妖精を信用した私が間違いだったかも知れない……」と、何やら苦い顔をしている。

 どうやら、天使の彼女は色々あったらしい。

「ねえ、ユリなら残り二つのオーブがどこにあるかわかるんじゃない?」

 期待を込めた目でベロニカがユリに聞くと、肯定するように彼女は口を開く。

「一つはパープルオーブ。デルカダール王国が秘宝としてたように、今は亡きバンデルフォン王国の秘宝だったみたい。もう一つはブルーオーブで、これは今もクレイモラン王家が所持してると思う」

 ユリの情報によって、彼らは一気に残り二つのオーブの手がかりを手に入れた。

「さすがユリさま。ユリさまの天使としての知識、頼りになりますわ」
「うん!ありがとう、ユリ」
「これで二つのオーブを手に入れたも当然ね!」

 盛り上がる三人に、カミュは「気が早すぎるだろ」と苦笑いを浮かべる。

「でも、ユリちゃん。バンデルフォン王国は今は廃墟で、アタシたちが行ったときも何もなかったわよね?」

 シルビアは、神父のお願いに立ち寄ったバンデルフォン城跡地を思い出しながら言った。

「いや、開かずの扉があった」

 答えたのはカミュだ。

「特殊な鍵でしか開かない扉と、魔法で封じられた扉の二つ」

 カミュの言葉を聞いて、ロウが心当たりがあるように頷く。

「わしもバンデルフォン王国の宝物庫の話は聞いたことがある。確か、その扉を開けるのは『まほうのカギ』が必要じゃと……」
「なるほどね。きっとオーブはその宝物庫にある予感がするわ」
「そうね。けど、まずはその鍵を探さないと……」

 シルビアに続いてマルティナが思案するように言った。

「"まほうのカギ"か……そんなものが世界にはあるのね」
「その反応だとさすがのユリも知らないか」
「カミュ、何か知らない?」
「どこかにそんなカギの伝承があるってことぐらいしか……」

 どうやら『まほうのカギ』の手がかりは地道に探さなくてはならないらしく、一同沈黙が訪れる。
 
「あ、じゃあムウレア王国に行ってセレンさまに聞いてみない?」

 私、話したいこともあるし――というユリの言葉に一同賛成した。

 次の行き先が決まり、今度はユリや天使についての話になる。

 まず、天使とは何か。ユリは自分が分かる範囲で答えた。

 天使は神の使いではないが、人間が考える存在で大方間違いではない。
 人間を助けたり、魔物から守ったりもするし、地域によっては『守護天使』として信仰してる所もある。

 人間、人魚というように天使という種族だ。差異は翼や光輪、膨大な魔力や不思議な力があることだろう。そして、天使は大事な使命を持っている。

 天使とは『魂の守護者』だ。
 
 迷える魂を命の大樹へ送り届け、次なる生まれ代わりを助けること。

 恨みや悲しみを持った魂は命の大樹に還れず、魔物になってしまう。

 そして、その魔物は人間を襲う。

 命の大樹と共に生き、その悲しみの連鎖を止めるのが、天使たちの使命だ。

 近年、魔物たちの姿が増えたのは、天使界が襲撃されたことと、大きく関係があるだろう。

 ――ユリはこっそりとエルシスを見る。

 もし、彼が今、死を迎えたならその魂はどうなるだろうか。
 守る者がいなくなった魂。きっと、自分はその役割はもうできない。
 命の大樹に還れないと、魂は生まれ代われずにこの世をさ迷うことになる。

 勇者の魂――つまり、勇者は未来永劫、生まれなくなるということ。

(ウルノーガはそれを目論んで……)

 最初にエルシスを処刑しようとしたのもそのためだろう。

(そんなこと、絶対にさせない)

 エルシスを守ればいいだけの話だ。

 元天使という立場だけでなく、友達として、仲間として。

「?ユリ、どうかした?」
「あ、ううん、なんでもない」

 目が合って不思議そうにするエルシスに、ユリは笑顔で繕った。

「だからユリは死者の声が聞こえたのね」
「本来の力があれば、生前の姿がはっきり見えたんだけど……」

 今の私では微かな声が聞こえるので精一杯みたいと、ユリは苦笑いを浮かべて答える。


 今日はメダ女でゆっくりしようというエルシスの言葉に、反対意見はない。

 さすがに強敵との戦いに満身創痍だ。

 エルシスは歩きながら、ユリの今は翼がない背中が目に入った。

「背中の翼は出したり消したりできるんだね?」
「うん、寝るときに邪魔だから」

 ユリはさも当然のように返してきたが、質問の答えになっていない。
 いや、寝るときに邪魔なのは分かるけど。
 どういう仕組みなのかエルシスは気になってしまっていると、ここの女生徒らしきリップスに声をかけられた。

 ――声をかける前から彼女はエルシスに熱い視線を送っており、カミュはもしやと感づく。

「わたくしはブリジット。お友達の誰にも相談できない深い悩みがありますの……。旅の方、あなたはおクチはかたくって?もしよろしければ、わたくしの悩みを聞いてくださらない?」

 エルシスが「はい」と頷くと「ありがとうございます、旅の方。じゃああなただけ一緒に来てください」と、エルシスはブリジットに連行された。

「カミュ……もしかして」
「ああ……きっとそうだろうな」

 ユリも感づいてカミュにこっそりと聞く。ちなみにあのメダ女新聞はユリのポーチの中に入っている。念のため、捨てずに持っていたのだ。

「これって……エルシス、愛の告白されるのかな。どうしようカミュ。私たちの旅がここまでになったら」
「……。お前、天然ボケから真面目ボケにジョブチェンジしたのか」
「?」

 ユリとカミュはエルシスの帰りを待った。


「あなたはメダ女新聞をごぞんじかしら?生徒に大人気のカベ新聞ですわ」

 ブリジットの部屋に来たエルシスは、その問いに首を横に振る。

「わたくしはその新聞の超人気コーナー、ルージュ先生の恋のお悩み相談室に誰にも言えない恋心を相談いたしました」
「はあ」
「……けれど、今になって答えを知るのがこわくなってしまって、新聞を読みにいけずにいるのですわ。代わりの誰かに見にいってもらおうにも、恋の相談をしたのが、わたくしだとお友達に知られてしまうのはイヤですの」

 繊細なブリジットの言葉に、恋する女の子はそうなのかぁとエルシスはぼんやり考える。

「……そこで、旅の方にお願いなのです。わたくしの代わりにメダ女新聞を読んで、ルージュ先生の答えを見てきてくださいませ」
「それぐらいお安いご用ですよ」

 エルシスは笑顔で答えて、ブリジットの部屋を後にした。すると、そわさわして待っているユリとカミュの姿が目に入る。

「二人ともどうしたの?」
「えっと……何があったのかなぁって」
「大丈夫だったか、お前」
「?うん」

 エルシスはブリジットからお願いされたことを、詳しくは伏せて話したが、二人にはわかった。

「外堀から埋めていったか」
「外堀?」
「エルシス……ちょうど私、そのメダ女新聞を持ってて……」

 怪鳥の幽谷で風に飛ばされてきたと、ユリはエルシスに渡した。

 ………………。

「……ユリ、カミュ。一緒について来て」

 エルシスの言葉に、二人は残念そうに首を横にゆるゆる振った。


「旅の方、メダ女新聞を読んでくださったのね。……それで、わたくしの相談にルージュ先生はなんて答えていらしたの?」

 エルシスは、ブリジットにメダ女新聞に書かれたルージュ先生の回答を伝えた。

「……恋をかなえるには好きな人と誰にも言えないヒミツを共有する。うふふ……わたくしの思ったとおりだわ」

 外堀を埋めていく――先ほどはカミュの言葉の意味が分からなかったが、きっとこういうことなのだろう。

「……旅の方、新聞を読んだのならもうおわかりですわよね?わたくしのき・も・ち」

 はい
 →いいえ

「……もう、いじわるな人!わたくしの気持ちがわかっているクセにそうやってじらすのですね!」
「いやぁ、ちょっと僕にはなんのことか……」
「なんだか、ムードが壊れてしまいましたわ。一度、仕切りなおしましょう。さあ旅人さん、もう一度最初から」

 ……。最初から……?

「……旅の方、新聞を読んだのならもうおわかりですわよね?わたくしのき・も・ち」

 再びエルシスの前に現れた「はい・いいえ」の選択肢に、エルシスは迷いながら今度は「はい」を選択した。

 これは、何度か経験している無限ループ的なあれだ。

「……故郷デルカダールに里帰りした時のこと、さっそうと野を駆けるあなたはわたくしを見つめてほほえみました」

 え!?とエルシスは驚く。懸命に思い出そうとするが、記憶にございませんだ。

「あの日、あの時、あの瞬間からわたくしはあなたのトリコ。いつでもおヨメに行く準備はできていますわ。……とはいえ、あなたはまだ冒険の途中。今すぐ結婚しなくてもよいですわ。ゆっくりと愛を深めましょうね」

 うっふんと熱い視線を送られて、エルシスは苦笑いを浮かべるしかない。

「それでは、旅の方。これはわたくしからの愛のプレゼント。冒険、がんばってくださいませ」

 何故かエルシスはお礼に『メダ女の制服』を受け取った。

(自分にこれをどうしろと……)

 再びブリジットの部屋を後にすると、今度はユリとカミュはそわそわではなく、わくわくして待っていた。

 エルシスは拗ねた。


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