世界の異変

 閑散としていたダーハルーネだったが、なにやら北の広場前ではざわざわと人が集まっているようだ。
 ゴンドラに乗っていたユリとカミュは、ちょうど広場近くで降りる。

「こっちよー!二人ともー!」

 二人に手招きするのはシルビアだ。グレイグ、ロウ、ホメロスの姿もあり、彼らは騒ぎを聞きつけやってきたらしい。
 合流したユリたちは、人盛りに近づく。

「なんなのかしら、あの生き物は……。あんな姿をした生き物がこの世にいるだなんて、ウワサでも聞いたことがないわ!」
「あの人たち……なんだか顔色が悪いし、アタマからヒレが生えてるわよっ!まるで魚みたいだわっ!」

 ……人々のざわめきに混じって、そんな声が聞こえてきた。

「魚みたいじゃと?」
「人々の様子からすると、魔物ではなさそうだが……」

 不思議そうな顔をする彼らに、興奮ぎみに話しかけてきたのは漁師の男だ。

「おい、聞いてくれよ。あの魚みてえな人たちがよ、突然、海からザバーンッとあがってきやがったんだ。てっきりウワサの化け物のしもべかと思ったが襲ってくる気配もないし、悪そうにも見えねえ。ヤツら、いったい何者なんだろうな……?」

 海から……魚みたいな人……。もしや、と心当たりがあるユリに、吟遊詩人が話しかけた。

「町長ラハディオさんが、あの魚みたいな人たちと会話を試みようとしているんだ。さすがはラハディオさん、勇気あるなあ……」
「ラハディオちゃんが……行ってみましょう、ユリちゃん!」

 シルビアの言葉に、ユリはこくりと頷き、人をかき分けて進む。その先には見知った少年たちの姿があった。

「あ!いつかの旅のお姉ちゃん、無事だったか!」
「よかったー僕たち心配していんだよ!」
「ヤヒムくんとラッドくん!」
「ヤヒムちゃん、外で遊べるようになったのね!」

 二人はユリとシルビアを見て、ニコニコと笑顔を見せた。

「……そうだ、お姉ちゃんたち、聞いてよ!あの魚みたいな人たちが、ザブンと海からあがってきて大騒ぎなんだよ!ラッドがあの人たちと話してみるって言うけど、魔物かもしれないし、危険だよ〜。お父さんにまかせておけばいいのに……」
「海からあがってきたあいつらのことだけど、町のみんなは悪いヤツらだって疑ってるんだ。けど、オレには悪いようには見えねえ。むしろ、こまってるように思えるんだ。だから、助けてやりたいんだよ」

 勢いよく二人は話し「ほら……」ヤヒムが指差す。どうやら、ユリの予想は当たったようだ。

 そこには、三人の海の民の姿があった。

 そして、なんとか彼らと話し合いたいと試みている、ラハディオの姿も。

「おや、あなたたちはっ!よくぞご無事でおられました!町のみんなで心配していたのですよ」

 ユリたちに気づいたラハディオは、こちらに歩きながら話す。

「皆さんとの再会をよろこびたいのですが……今、じつはあの魚のような人たちと会話を試みようとしているところです。奇妙な姿をしていますが、悪さをするでもない。話せばわかりあえる相手かもしれません。ここは町長の私が話さねば……」
「彼らは大丈夫ですよ。私の知り合いです」

 ユリは海の民について説明した。ラハディオは彼らのことを悪い者たちではないと考えていたが、話を聞いてほっとしたようだ。

「住む場所が違えど、彼らも大変だったのですね……。わかりました。彼らのチカラになれるよう、私も町長として助力します」

 頼もしい言葉に「さっすがラハディオちゃ〜ん」と、シルビアが両手を組んで言った。

「それはそうと……あなた方の後ろにいる方々は……」

 笑顔を浮かべていたラハディオの顔が、徐々に不可解なものに変わっていく。
 同時にラッドとヤヒムも、二人の存在に気づいた。

「!お前たちはデルカダールの兵士!しかも、金髪のお前はヤヒムに呪いをかけたヤツじゃないか!」

 怯えるヤヒムを庇うようにラッドは立って、ホメロスに牙を向くように言った。

「……シルビアさん。私たちはあなた方を信頼しております。よろしかったら、なにがあったのかお話ししてもらえないでしょうか」

 ラハディオは落ち着いた声だ。冷静に事情を聞こうという姿勢は、まさに一代でこの町を築きあげた器量を感じさせる。

「ええ、もちろんよ。ラハディオちゃん」

 シルビアはユリ、グレイグ、ホメロスを見回して「アタシから説明するわね」そう言った。

 大樹が落ちてすぐ、シルビアはアリスとこの町にやって来て、二人の活躍で荒れていたダーハルーネは平穏を取り戻したという。
 この経緯からも、とくに信頼を寄せるシルビアの口からラハディオは説明を求めたのだろう。
 
 シルビアはグレイグとホメロスのことや、自分たちの旅について話す。今の二人は頼れる、自分たちの立派な仲間だ、と。

「……ご事情はわかりました。まさか、16年前から魔王の魔の手は伸びていたとは……」
「ラハディオ殿……。かつて、私があなたのご子息にした狼藉や、町に圧力をかけたことは許されることではない。……心から謝罪を致します」
「疑うことをせず、盲信していた私も同罪です。デルカダールの兵士として、共にお詫びを申し上げます」

 深く頭を下げるホメロスの隣で、グレイグも同様にラハディオたちに頭を下げた。

「……あなた方は魔王討伐の旅をしながら、そうして自分たちの過ちと向き合っているのですね」

 ラハディオは自分に頭を下げる二人を見ながら、口を開く。

「息子に対しての行いは、親として決して許すことはできません」
「……」
「……ですが、あなたたちの思いは伝わりました。どうぞ、頭を上げてください。そんな真摯な姿を見せられては、私はあなたたちを応援したくなってしまいましたよ」
「……ラハディオ殿」

 グレイグは頭を上げた。やがてホメロスもゆっくり顔を上げて、ラハディオを見る。

「どうか、世界を救ってください。私の願いは……子供たちのためにも、また以前の日常に戻れること……ただひとつです。それまで、私は私なりにこの町を守ろうと思います」
「ラハディオ殿……その願い、必ずや我らが果たします」

 ホメロスはラハディオの目を見て、芯のある声で答えた。次に彼はその場に膝をつき、ラッドとヤヒムに目線を合わせる。

「な、なんだよ……っどんなに謝ったって、オレはぜってーお前のこと許さねーからな!」
「ああ……私は君の友人に許されないことをした」

 続いてホメロスは、ラッドの後ろにいるヤヒムに──これ以上、恐がらせないように、穏やかな口調を心がけて話しかける。

「ヤヒム少年。怖い思いを……辛い思いをさせて、本当にすまなかった」
「…………」
「私が言うべきではないが……君はいい友を持ったな」

 最後に二人に頭を下げ、ホメロスは立ち上がった。

「ユリさま。あの海の民の者たちにも話を聞いてみましょう」

 ヤヒムは思うことがありそうな目で、ホメロスの背中を眺めたが……結局、口を開くことはなかった。
 息子の様子を見て、ラハディオは大丈夫というように彼らに目配せする。

 二人はラハディオにまかせ、ユリたちは海の民の元へ向かう。
 
「ユリさまではありませんか!よくぞご無事でいらっしゃいました。すっかり人間のお姿に戻られたのですね」
「あなたたちも無事でよかった!」

 海の民と無事を喜び合うのも束の間で、彼らはすぐに暗い顔をし、これまでのことをユリに話した。

「私たち、海底王国の民は魔王の配下であるジャコラに襲われて、命からがら海底王国から逃げだしました。海中のあらゆる生命はかりとられ、海はジャコラの支配下となったのです。もはや、私たちの居場所などありません……。ユリさま……どうかお願いです!にっくきジャコラを倒し、海を救ってください!そして、以前の海を取り戻してください!」

 悲願する彼の言葉に、ユリはしかと頷く。
 これ以上、ジャコラに海を荒らされてはならない。
 やがて、本当にこの美しいロトゼタシアの海は、死の海になってしまうだろう。

「パクパク……ジャコラこわいよう。すっごく大きくてボクたちをパクンと食べちゃおうとするんだ。人間さんはボクたちを食べたりしないよね……?」
「人間はあなたたちのことを食べたりしないから、安心して」
「よかったあ……。じゃあ、ここは海の中よりはアンゼンだね。海はジャコラがいてもう住めないんだ……」

 安堵するも悲しげに彼は言って、ユリも表情を陰らせた。
 続いて、三人目の海の民にも話を聞いてみる。

「イテテ……ちくしょー。東の海でジャコラってヤツに襲われて、命からがら逃げてきたんだ……。逃げる最中に仲間たちとはぐれちまったし、もうふんだりけったりだぜ。アンタも東の海に行くなら、気をつけろよ」

 どうやらジャコラは東の海にいるようだ。これから向かうバンデルフォン地方への航海中に、出会すかもしれない。
 しっかり戦いの準備をしておいた方がいいだろう。全員、表情を引き締めた。


 ──北の広場には、海の民の騒ぎを聞きつけ人々が集まっていたが、海に面した西側でも人々が集まっているのに気づく。

「なあ、あの赤い星を見てみろよ。命の大樹がなくなってから、ほどなくしてサマディーに向かって落下を始めたんだ」

 その男の言葉に「赤い星?」と、ユリが仲間たちと不思議そうに顔を見合わせた直後。

「皆さん……。あの空を見てください……」

 愕然としたカミュの声が届き、ユリたちはカミュの側へ寄った。
 ダーハルーネのシンボルのような灯台に重なって見えなかった、その異様な光景が彼らの前に現す。

「ちょっとちょっと、どうなってんの!いったいサマディー地方に何が起こってるって言うのよ!?」

 シルビアが珍しく声を荒らげるほどだった。

(あれは一体……)

 ユリはよく見ようと、海に面する手すりまで来て、見上げる。

 満月のように空に浮かんでいるが、決して満月ではない。

 赤く爛々と光る球体は、サマディー地方の上空に忽然と存在していた。そこを中心に空は真っ赤に染まり、暗雲が立ち込めているようにも見える。

「間違いない。あれは勇者の星だ……。伝説に語られるあの星が落ちてくるなんて、やはり、世界は滅びるしかないのか……」

 同じように見上げている学者の口から、諦めの声がこぼれ落ちた。勇者の星……どこかで聞いたことあるとユリは思い出す。
(……そうだ、セーニャが教えてくれたんだ)
 サマディー王国が向かう途中の、砂漠の星空の下で。

 勇者の星とは、かつて伝説の勇者が邪神を討伐したあと、星となって世界を見守る存在になったと云われている──そうセーニャは言っていた。

 思い出してみると、そんな伝承は天使である自分の記憶にはないと……ユリは不思議に思う。

 地上の人々にだけ伝わる伝承だろうか?

「おお、なんということじゃ……。あれがこのまま地上に落下すれば、サマディー王国はただでは済まんぞ……」
「魔王が誕生してから、考えられないことばかり起きます……。本当に、世界はこのまま滅亡するのかもしれません……」

 ロウとカミュもユリの隣に立って、深刻な顔に、嘆くように言った。

「……勇者の星がサマディーに迫っているというウワサは、本当だったのか」
「グレイグ、知っていたのか?」
「いや、俺もこの目で見るまで、とても信じられなかったぞ……」

 自分の目を疑いたくも疑う余地はない。続けてグレイグは皆に向けて話す。

「大樹が地に落ち、世界が闇に包まれた後、突如として落下を始めたそうだ。いったい、世界で何が起こっているのか……」

 ──命の大樹が落ちた前後で、世界はこんなにも一変してしまった。

(海も……空も……)


 世界は壊れようとしている。


「ねえ、ユリちゃん!サマディーのみんながどうしてるか心配だわ!みんなの様子を見にいきましょう!」

 シルビアの焦燥した声に、ユリははっと思考から浮上して、シルビアの顔を見た。

 その顔は、皆の無事を案ずる一色だ。

 サマディー国には、シルビアと親しいサーカス団がいる。彼らだけじゃなく、大勢の人々があの国にいて、ファーリス王子だって……。
 
 ユリは決断することになる。

 ネルセンの宿屋の夢の話も、海で暴れるジャコラも……捨て置くわけではない。

 そして、仲間たちはユリの決断を待った。

 どんな決断をしようと、その選択に従おうという思いだ。勇者の代わりを果たそうと、懸命な彼女が悩んで出した決断なら、それが正しいと皆は信じている。

「サマディー王国へ行こう──」

 勇者の星、あの赤い巨星を最優先すべきだとユリは考えた。

「ありがとうっ、ユリちゃん!サマディー王国へはダーハラ湿原を抜ければ行けるわ。アタシはアリスちゃんに伝えてくるわね!」

 それに、仲間のシルビアの思いを尊重したいという気持ちもあった。

「シルビアとサマディー王国にはなにかあるのか?」
「シルビアが一時期一緒にショーをしていたサーカス団の方たちがいるの」

 シルビアが立ち去ったあとに、尋ねたグレイグの問いに答えると、彼は納得したように頷く。

「それは気が気でないだろうな」
「わしもサマディー国が心配じゃ。サマディー王はパニックになっとらんといいが……」
「あの国には、聡明なファーリス王子がいるから大丈夫でしょう」
「ホメロスさんが言うんですから、よっぽど優秀な王子さまなんでしょうね」


 ちなみに、このホメロスの発言につっこむメンバーは、残念ながら今のユリのパーティーにはいない。


 シルビアと待ち合わせである、ダーハルーネの入り口に向かう途中、ユリはもう一つクエストを引き受けた。
 それはサマディー地方の砂漠に関するもので、ちょうど今から向かうからだ。
 なにより、独りで涙を流す彼女を放ってはおけなかった。

「……命の大樹が地に落ちたあの日、私の恋人は死んでしまったわ。それまでずっと、元気でいたのに……。……そう。大樹の葉の1枚1枚には、この世界に暮らす人々の命が宿っている。私の恋人も大樹と共に命を落としたの……」

 彼女は大切な人を亡くして、涙に暮れる日々を送っているという。この世界はユリが見ていないところでも、たくさんの命が失われている。

「彼ったら、私にプロポーズの贈り物だよって、サマディーの砂漠に咲く幻の花を見せようとしていたのに……ううっ……。もう、こんな世界で生きていたくない……。ああ……でも、ひとつだけ心残りが……砂漠に咲く幻の花を……ひと目見てみたい」

 そして、彼女はユリにその願いを託した。

「旅の方……もしも、サマディー地方で砂漠に咲く幻の花を見つけることがあったら、あわれな私に見せてはくれないかしら?」
「私たち、これからサマディー地方に行くの。見つけたら必ずあなたに見せるわ」
「ありがとう……優しいのね、あなたは。それじゃ、砂漠に咲く幻の花について、私が知っていることを教えるわね」

 少しだけ笑みを見せた彼女に、ユリはほっと安堵した。

「彼はその花をさばくのバラと呼んでいたわ。砂漠にバラの花が咲くなんて信じられないけど、彼は正直者でウソをつかなかった人よ。彼が言ったのなら、さばくのバラは絶対にある。だから……」

 サマディー地方のすみずみまであきらめずに探してほしいの──彼女のすがるような言葉に、ユリは深く頷く。

「もしも、さばくのバラを見つけることができたのなら、私に見せて……お願いね、旅人さん」

 ユリたちが戻ってくるまで、彼女は微かな希望を抱いて待っていてくれるだろう。
 正直、このまま愛する人のあとを追ってしまいそうな雰囲気があったので心配だった。

「ホメロスはさばくのバラについてなにか知ってる?」
「私も幻の花と聞いたことがあるとしか……。お役に立てずに申し訳ありません」
「ううん、ありがとう」
「勇者の星について解決したら、探してみましょう」

 アリスに行き先を変更すると伝えたシルビアと合流し、一行はダーハラ湿原へと足を踏み入れる。

 生憎の雨の中、サマディー地方方面へと一行は進んだ。

 木造の階段を上がったり降りたりし、ダーハラ湿原を抜けると、海に挟まれたサマディー地方への道に出る。
 以前、訪れた際はこの海辺の道は馬で駆け抜けていったが……

「ちょうど、この時刻は満潮のようですね」

 そこには砂浜などなかったかのように、海に沈んでいた。
 海水に足を踏み入れると、ユリの膝下ぐらいまで浸水し、ジャブジャブと水辺を走るように渡る。

 ごつごつとした赤みを帯びた岩の洞くつを進むと、やがて足は砂を踏みしめた。
 
「なんだか暑くなってきましたね……」
「これでもまだ涼しいほうだよ」

 記憶喪失になっても体質は変わらず、カミュは暑がりらしい。以前よりずっと涼しいのは、太陽があの暗雲に隠れているからだろう。

 そして、ダーハラ湿原とサマディー地方を隔てる関所が見えてくる。

 意外なことに、関所には人が混雑していて対応に追われているようだ。
 関所を警備していたサマディー兵士は、ダーハラ湿原の方からやってきた一行を目にして驚く。

「おい、お前たち!まさか、サマディー王国に行くつもりか!?あの落ちてくる星が見えないのか!?わざわざ危険な場所に行くなんてどうかしてるぞ!?」

 兵士の指差す方を見ると、ダーハルーネで見た時よりもさらに勇者の星は巨大に見え、皆、息を呑んだ。

「…………」

 ユリにはあの星に凄まじい魔力を感じる。そして、なにか結界のようなものも──……

「……あなた、シルビアさんじゃないですか!」
「あら、アナタたち!」

 シルビアに声をかけてきたのは、サーカス団員たちだ。酒場のバニーの姿もあり、彼らは一緒にサマディーから逃げて来たと話す。

「団長と一部の団員たちは残ってます。こんな時こそ、人々を楽しませることがサーカスの役目だって……」
「団長……本当に立派ね」
「シルビアさん、サマディーに行かれるなら気をつけてください!」

 逃げて来たのは彼らだけではなく、ここにいる全員のようだ。

「あの星が落ちたら、ここはおしまいだ……。私も一家全員で逃げてきたところだが、キミもすぐに避難したほうがいいよ」
「ダーハルーネに避難するために、家族全員でサマディーから逃げてきました。サマディーはもうおしまいですわ……」

 身なりがよく、貴族だと思われる夫婦は同じように不安げな顔をして話した。その子供たちは歩き疲れたのか、ぐったり地べたに座っている。

「あれでは仕方あるまいな……。上空にあるというのに、あの大きさ……。落ちたらこの一帯は無事ではすまされん」
「ああ、俺が最後に見たときはあれほどまでに星は迫ってはいなかった。いつ落ちてもおかしくないぞ」

 ホメロスが勇者の星を見ながら言うと、隣に並ぶグレイグが続いた。

「サマディー王国に行って、情報を集めよう。なにか、私たちにできる手立てが見つかるかもしれない……」

 希望的観測を込めてユリは言った。ユリ自身、勇者の星が一体なにかまったくわからないので、情報が欲しい。

 五人は真剣な面持ちでユリに頷いた。

 以前はいなかった魔物、デュラハンナイトの馬を乗り物とし、不気味な空の下、六人はサマディー王国を目指して砂漠を駆け抜ける。


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