ゴンドラは二人が乗った場所とは、反対に位置する船着き場に到着した。
カミュが先に降りると、再びユリに手を差し出す。
「さて、情報収集の再開だな」
カミュの言葉にユリは笑顔で頷いた。
ダーハルーネは大きい町なので、場所を変えればまた違った話を聞けるかも知れない。
再び二人が情報収集をしてると、見慣れたサラサラ髪が視界に入る。
「エルシス!」
「ユリ、カミュ!」
ユリが名前を呼ぶと、彼はすぐに振り返り、笑顔で二人に駆け寄った。
「なんだ、エルシス。あの女3人組と一緒じゃねえのか?」
カミュが聞くと、エルシスは三人とは別れた理由を詳しく話した。
「……ふぅん。その町長にドックを開けてもらうよう直接掛け合いと、預かった手紙を渡しに行くのか」
「二人の方はどうだった?」
「虹色の枝を持った商人はもうこの町にはいないみたい。どこへ行ったか分からなくて、それを聞き込みするところだったの」
「そうか……虹色の枝に届きそうで届かないな」
エルシスはもどかしそうに呟いた。
「二人ともそこまで調べてくれてありがとう。この町広いから大変だったよな。僕も一緒に手伝うよ」
「じゃあ、先にそっちの用事を済ませちまおうぜ」
彼らは三人で行動することにし、町の北東にあるラハディオの屋敷を目指す。
屋敷前では、掃き掃除をするメイドの姿があった。
あの人がもしかしたらディアナさんじゃない?と言うユリに、エルシスはそうかもとその女性に声をかける。
「え?ディアナは私ですが……何かご用でしょうか?」
やはり、彼女がディアナだったらしい。
「お兄さんのアポロさんから、あなたに渡してほしいと手紙を預かっているんです」
エルシスは兄からの手紙をディアナに手渡した。
「まあ、アポロ兄さんからの手紙!ありがとうございます、郵便屋さん!さっそく読んでみますね!ええと……」
『……よう、ディアナ、元気かい?
パティシエの修行はりきりすぎてないか?
お前はがんばり屋だから心配だよ。
思えばお前には小さい頃から苦労ばかりかけてきたな。
兄妹ふたり、ようやく、あいつから解放されて自由になれた……。
今のオレの夢はパティシエになったお前の姿を見ることだ。
手紙に仕送り金を入れておいたから、生活の足しにしてくれ。
いつか、兄ちゃんにお前の作ったケーキを食わせてくれよな!』
「……兄さんたら。こんな大金用意するなんて、大変だったでしょうに……」
手紙の中にはたくさんの仕送り金が入っていたようだ。
「私も兄さんに手紙を書きます。ちょっと待っててもらってもいいですか?」
エルシスは「はい」と頷くと、彼女は急いでその場を離れる。
「なんだ、お前。返事も届けるつもりか?」
「うん、ルーラの魔法があるからすぐ届けられるし」
エルシスの言葉にカミュはそういえばそうだったな、と納得した。
なんだかんだ今まで使う機会がなかった移動魔法だ。
「ディアナさんのお兄さんのアポロさんは素敵なお兄さんだね」
「妹思いのお兄さんなんだろうな。兄妹でなんだか苦労したみたいだし。それにしても……、ディアナさんはどうしてパティシエを辞めてしまったんだろう」
ユリの言葉にエルシスは同意してから、疑問を口にする。
「……兄妹か……」
カミュは小さく呟いてから、人知れず自虐気味た笑みを浮かべた。
「本当に良い兄ちゃんだな、アポロってやつは」
彼が二人に向き合ってそう言ったときには、いつもの顔だった。
「郵便屋さん……お待たせしました。申し訳ありませんが、この手紙をアポロ兄さんに渡してください」
エルシスはディアナから『妹からの手紙』を受け取る。
「それと……私がパティシエをやめたことは、アポロ兄さんには黙っていてほしいんです。時が来たら私の方から話します。それではお願いしますね。キレイな目をした郵便屋さんっ!」
そう言って、ディアナは再び仕事に戻って行った。
「キレイな目をした郵便屋さんだって」
「すっかり郵便屋になっちまたな」
「ははは、ルーラが使えるし、このまま郵便屋を始めようかな」
笑って話すユリとカミュに、エルシスも同じく笑って言った。
「じゃあ、行きは僕がルーラを唱えて、帰りはユリが唱えてみようか」
行きたい場所を頭に描き「ルーラ!」とエルシスは呪文を唱える。
三人の身体を風で包まれるような感覚が起こり、浮遊感と共にすぐに目的地に立っていた。
確かに便利な移動魔法だと――三人は喜んだ。
「おお、旅の方よ、戻ってきたか。それで、妹の様子はどうだった?あいつは元気でやってただろうか?」
「はい、ディアナさんはお元気でしたよ」
約束通り、ディアナがパティシエを辞めたことはエルシスは黙って話した。
そして、アポロにディアナからの手紙を渡す。
「おお、これはディアナからの手紙!わざわざ届けに来てくれたのか、ありがとう!さっそく読ませてもらうよ。どれどれ……」
『……兄さん、お手紙受け取ったわ。
私は毎日元気に働いてます。
仕送り大変だったでしょ……ありがとうね。
兄さんがいつも応援してくれるおかげで、私もパティシエの修行に専念できるわ。
昨日も親方にスジが良いって褒められたの。
一人前のパティシエになるために、私、これからも夢を追い続けるわ。
だから、兄さんも安心してね……
ディアナより』
「……ふふ、あいつ頑張ってるな。元気そうで良かった」
手紙を読んで、優しげにアポロは目を細める。
「じつはな、私たち兄妹にはろくでもない父親がいるんだ。今はもう一緒に暮らしていないが……ある時、足をケガしてから荒れてしまってな。子供にまで八つ当たりをするような、それは最低な父親だったんだ」
彼は自分たちの身の上話を話す。
「そんな幼少時代を兄妹ふたりでずっと耐えて来たから……ディアナには好きなことをやらせてやりたいんだ。とにかく、元気だと分かって安心したよ。さあ、これはお礼だ。受け取ってくれ」
エルシスはお礼に新しい『レシピブック』を受け取った。
「……あの二人は色々と苦労して来たんだな」
その場から離れて、そう口にしたのはエルシスだ。
「その分、アポロさんとディアナさんは、ベロニカとセーニャみたいな絆があるんだろうね」
続けてユリが話す。
「手紙を届けたことだし、ダーハルーネに戻ろうぜ」
今度はユリがルーラを唱え、すぐさま三人の身体はダーハルーネに移動した。
そして再び、三人はラハディオの屋敷の前にやって来る。
「ここが町長の家で間違いなさそうだな。よし、行くぜ」
カミュがドアをノックすると……。
「はい、いらっしゃいませ。どちらさまでしょうか」
「すみません、僕たち旅の者なんですが……」
ドアの向こうから男性の声が聞こえ、エルシスが答えた。すぐにドアが開き、上等な衣服をまとった中年の男が顔を出す。
「あんたがラハディオさん?すこし頼みたいことがあるんだ」
「ええ。私が町長のラハディオです。いったいどういうご用……」
カミュの問いにラハディオは答える途中、エルシスたちの顔をまじまじと見ていった。
サラサラ髪の青年……?それに、銀髪の娘……青髪の青年の三人組……。何やらぶつぶつとラハディオは呟く。
「……あんたたちと話すことは何もない。さっさと消えてくれ」
「えっ?おい、ちょっと!」
カミュがとりつく島もなく、ラハディオはいきなり冷たい口調になったかと思えば、ドアをバタン!と音を立てて閉めてしまう。
「……なんだよ、全然取り合ってくれねえな。アレのどこが優しい人なんだ?」
カミュは顔をしかめ、ユリとエルシスは唖然としていた。
「僕にもさっぱり……なんか、まじまじと見られていたよーな……」
もうとっくにサマディー聖騎士の鎧は脱いだけど――と、エルシスは自身の姿を確認するように見る。
「というか、あの町長。オレ"たち"を見て妙な顔をしてたぜ。まさか、おたずね者なのがバレたか……?」
「情報収集してた時はそんな噂はまだなかったのに……」
「だが、これだけ大きな港町だ。いつ情報が入って来てもおかしくねえな」
とりあえず屋敷前から離れようとカミュに促され、三人は歩き始める。
「ああ、待ってください!キレイな目をした郵便屋さん!」
そう屋敷から出てきたディアナが、慌てて三人を引き留めた。
「すみません、ラハディオさまが……。いつもはお優しい方なんですが、あなたたちをデルカダール城から脱走した犯罪者たちと勘違いされたみたいで……」
ディアナの説明に、三人はやはりと顔を見合わせる。
「私は違うと言ったんですけど、どうもあなた方と特徴が似ているようで……。数日前からお坊ちゃんの具合が悪くなったのも、悪魔の子の仕業ではないかって言い出す始末なんです……」
ディアナは困った表情を浮かべた。エルシスは話を聞いて苦笑いを浮かべる。まったくの濡れ衣である。
「あ、お兄さんのアポロさんにお手紙を渡しましたよ。ディアナさんがお元気そうだと安心してました」
話題を変えるようにエルシスが話すと、ディアナは「もう届けてくれたの!?ありがとう!」と、笑顔で喜んだ。
ディアナと別れて、三人はまずシルビアたちと合流することにした。
ラハディオに頼るのはどうやら無理そうだ。そして、三人の噂もこの町に流れているため、コンテストが終わったらすぐに船を出した方が良さそうだ。
歩きながら三人で相談していると、エルシスの目に一つの露店が映った。
「いらっしゃい、いらっしゃい!ダーハルーネ名物のケーキはいかが!世の美しい女性からも大好評だよ!」
どうやら露店でもケーキを売っているらしい。
「ユリはまだケーキを食べてないだろ?あれ、買おうよ!」
「えっ」
ユリがなにか答える前に、エルシスは露店に走って行く。
「あ、おい!……たく、あいつは本当にマイペースだな」
カミュも苦笑いを浮かべながら「行こうぜ」と、戸惑うユリを誘ってその後ろを追いかけた。
「おや、美しいお嬢さん!生地はフワフワ、クリームたっぷりでとろーり甘くておいしいよ!ぜひ、一度はご賞味あれ〜っ!」
「うわぁ……」
ユリは並んでいるケーキを見て、素敵!と瞳を輝かせる。これでこそいつもの彼女だ。
「僕たちはお店でケーキを食べたけど、すっごくおいしかったよ」
エルシスの言葉に「良いのかな?どれにしようかな?」と、彼女は悩む。
「カミュは甘い物だから食べない?」
「そうだな……」
エルシスの問いに、カミュはちらりと悩んでいるユリを盗み見して。
「私、イチゴがいいな」
「ユリはショートケーキで……」
「じゃあ、オレはアップルパイで」
「カミュはアップルパイ」
エルシスは店員にその二つを頼む。
「ありがとう!エルシス」
「むしろ二人だけが食べてなかったからさ」
その場にある簡易的なテーブルに三人は座った。すぐに紅茶と共にケーキが用意される。
「いただきます!」
ユリはおいしいと幸せそうな顔でケーキを堪能した。その様子に人が集まってくる。
「ユリ、アップルパイ半分食ってくれ」
そう言ってカミュはユリに差し出した。「えーいいの?」と、驚くユリに「半分で十分だった」と、カミュは答えた。
「ありがとう、カミュ」
満面な笑みで受け取る彼女に。その様子を見て、エルシスはうふふと意味深に笑みを浮かべてカミュを見る。(最初からユリに半分あげるために、違う種類のケーキを選んだんだな、カミュ)
カミュはエルシスの視線を気づかないふりをして、紅茶をすすった。
ユリが満足してケーキを食べ終わると、三人は先ほどの出来事をシルビアたちに話すため、店が並ぶ通りへと向かう。
「待ちなさーーい!!」
そんな聞きなれた甲高い声が町中に響いた。
三人は声が聞こえた方へ顔を向ける。
「師匠…………??」
ユリはその姿を目にした途端、首を傾げた。
ベロニカが水路を挟み、向こうの道を走り抜ける姿が見える。それだけならまだしも、
「「ネコ……?」」
三人は同時に怪訝に呟いた。ベロニカは何故か猫の着ぐるみを着て、叫びながら走っている。
「……。何してんだ、あれは?」
意味不明だと、カミュの眉間にこれでもかとシワが寄った。
「お姉さま〜!」
その後を追いかけるのはセーニャだ。
「セーニャーー!」
「あっ、エルシスさま!ユリさま、カミュさまもご一緒だったんですね」
繋ぐ橋の中心で、三人はセーニャと合流した。
「何かあったの?ベロニカが走って行ったけど……それに、ネコの着ぐるみを着て」
エルシスの問いに、セーニャは答える。
「じつはちょっと困ったことが起こって、お姉さまが大変なんです……。すみませんが、助けていただけますか?」
気になる猫の着ぐるみについてはスルーされた。そこは今は重要ではないらしい。
「よく分かんねえが……まったく、あのチビちゃんは世話が焼けるな。しょうがねえ、行ってやろうぜ。エルシス、ユリ」
「ありがとうございます!」
三人はセーニャと共に急ぎベロニカを追いかける。
「道を歩いていたら、いきなりあの男の子がお姉さまの杖をひったくって……」
走りながらセーニャは状況を三人に説明した。
「ちょっと!返しなさいよ、あたしの杖!アンタみたいな子供が、このベロニカさまの杖を使おうなんて、100年早いわよっ!」
「お前だってガキじゃねーか!ちょっと借りるだけだって、言ってるだろ!?」
――確かに。ベロニカはそう叫びながら、少年を追いかけている。
「変なネコの格好しやがって!」
「う、うるさいわね!これには、深〜いワケがあるのよっ!」
だが、端から見ればただの子供のおいかけっこだ。
そして、少年が指摘した通りベロニカは猫の着ぐるみ姿。当然、周囲から微笑ましいとクスクス笑いが生まれる。
それを追いかける大人四人。
好奇な目を向けられ、カミュは恥ずかしい呪いが発動しそうだった。
「エルシス、オレは先回りする。あそこの道で挟み撃ちしようぜ」
「了解!」
そう言ってカミュは走るスピードを上げ、素早く道を反れる。
「はぁ、はぁ……近頃の子供は、すばしっこいわね……」
「ベロニカ!後は僕たちにまかせて!」
息を切らすベロニカの横を、エルシスは走り抜けながら言った。
「師匠、大丈夫?」
ユリはしゃがんで、心配そうにベロニカの顔を覗き込んだ。
「そのネコの着ぐるみ似合ってる!」
「ですよねっ、ユリさま!その着ぐるみはなんと……」
「ちょっと……!今は……、その話は……、どーでも良いでしょ……!」
もうっボケボケコンビなんだから〜!
ベロニカは息を切らしながら二人につっこんだ。
「ここまで逃げれば、そこの裏道を抜けて……」
「――っと、鬼ごっこはお仕舞いだぜ」
「わぁ!?」
少年の行く手を塞ぐように、カミュが建物の上から降り立った。少年は後ろを振り返り、逃げようとするが……
「っ!」
「盗みはだめだよ」
そこには、片手を腰に当てたエルシスが立ち塞がっている。
「あっ」
戸惑う少年から、カミュはいとも簡単にベロニカの杖を取り返した。
「ほらよ。もう盗まれたりすんじゃねーぞ」
後から、ユリたちと共に追ってきたベロニカにカミュは渡す。ありがとうと杖を受け取ると、ベロニカは少年に尋ねる。
「……ねえ、アンタ。あたしの杖を盗んでどうするつもりだったの?売っても大した値にはならないわよ?」
「…………」
俯き黙る少年。――そこに、彼と同い年ぐらいの茶髪の少年が走って来た。
「……なんだ、お前?」
彼は杖を盗んだ少年を庇うように前に立ち、両手を広げる。
「……っ!…………!……!!」
何かを必死に訴えているようだ。
「どうしたんだ……?」
「もしかして……声が出ないとか」
不思議そうに首を傾げるエルシスに、膝を曲げて、心配そうにその少年を見ながらユリが言った。
「あーもう……しょうがねえな。ヤヒム。オレが説明するからムリすんな」
そう黒髪を立てた少年は、ヤヒムと呼んだ茶髪の少年の肩に手を置いて、口を開く。
「オレはラッドで、こいつはダチのヤヒム。こいつは町の町長、ラハディオさんのひとり息子なんだ」
ラッドはヤヒムを親指で差しながら言った。
「こいつとはよく一緒に遊んでたんだけど、数日前に声が出なくなっちまって……何があったのか聞いても分からなくてさ」
そういえば、ディアナもそんなことを言ってたと、エルシスは思い出す。
「それで魔法使いの杖でも使えば、魔法のチカラでこいつのノドを治してやれるかもしれないと思ったんだよ……」
ベロニカの杖を指差して、ラッドは言った。
「……そういう事情ならしょうがないか」
ベロニカは表情を和らげてラッドを見る。
「それより、声が出なくなったていうヤヒムって子の方が放っておけないわね」
次に、ヤヒムへと心配そうな視線を移して言った。セーニャはヤヒムの前に膝をつき「失礼しますね」と、その首に手を当てる。
「どうやら、ノドにとても強力な呪いがかかってるようですわ。いったい誰がこんなひどいことを……」
「呪いだなんて……」
「セーニャ、どうにかならないの?」
ユリが困惑に呟き、エルシスがセーニャに聞く。
「さえずりのみつという魔法の蜜があれば呪いは解けると思いますが、それを作るには清き泉に湧く神聖な水が必要ですわ」
神聖な水……残念ながら彼らは持ち合わせていない。
セーニャは両手を合わせ、考える。
それさえあれば、調合ができるのだ。(ここまでの旅路で、清き泉が湧いてそうな所は……)
「清き泉の水……そいつが手に入ればヤヒムを助けられるのか?」
心当たりがあると言うようにラッドが口を開く。
「それなら、オレ聞いたことあるよ。この町から西の方に川をさかのぼっていくと霊水の洞くつって所があってさ。奥にすっごくキレイな泉があるらしいぜ」
霊水の洞くつ――カミュとユリは同時に顔を見合わせた。
ダーハルーネに向かう途中の、別れ道にあった看板にそう案内があったはずだ。
「なあ、お兄ちゃん、お姉ちゃん。オレとヤヒムは小さい時からずっと兄弟みたいな仲良くしてきたんだ。ドロボーをしておいて、なんだけどさ……しゃべれないコイツからの頼みだと思って、ヤヒムの声を取り戻してやってくれないか?」
懇願するラッドに「もちろん、まかせて」とエルシスは二つ返事をし、他の四人も同じように頷いた。
「ありがとう、お兄ちゃん、お姉ちゃん!さえずりのみつを頼んだぜ!」
ラッドたちとはまた明日、この場所で待ち合わせをすることにし、彼らは霊水の洞くつへと向かう。
「エルシスちゃん、話は聞かせてもらったわ!男の子を助けるためにダーハルーネの町の西の洞窟へ向かうのね!フフンッ、アタシの耳は助けを求める声ならどこまでも聞き付ける地獄耳なの。それじゃ、出発するわよ!」
そうどこからか現れたシルビアも加わり、一行が町の入口に着くと、なにやらその場が騒がしい。
「いや〜ひどい目にあいました!純度の高い清らかな水を求めて西の洞窟に行ってみたのですが……魔物だらけで、私のような非力なボンクラでは水を探すどころかこうして命からがら逃げ帰ってくるのがやっとでしたよ……」
どうやら一足先にこの商人は霊水の洞くつへ赴き、すぐに逃げ帰って来たという。
「気を引き締めて参りましょう」
真剣な表情で言ったセーニャの言葉に、エルシスたちは深く頷いた。